『心象スケッチ 春と修羅』
□真空溶媒
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蠕蟲アンネリダ舞手タンツエーリン
(えヽ、水ゾルですよ
おぼろな寒天アガアの液ですよ)
日は黄金きんの薔薇
赤いちいさな蠕蟲ぜんちゆうが
水とひかりをからだにまとひ
ひとりでをどりをやつてゐる
(えヽ、8エイト γガムマア eイー 6スイツクス αアルフア
ことにもアラベスクの飾り文字)
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羽むしの死骸
いちゐのかれ葉
眞珠の泡に
ちぎれたこけの花軸など
(ナチラナトラのひいさまは
いまみづ底のみかげのうへに
黄いろなかげとおふたりで
せつかくおどつてゐられます
いヽえ、けれども、すぐでせう
まもなく浮いておいででせう)
赤い蠕蟲アンネリダ舞手タンツエーリンは
とがつた二つの耳をもち