『心象スケッチ 春と修羅』
□春と修羅
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修羅のなみだはつちにふる)
あたらしくそらに息つけば
ほの白く肺はちぢまり
(このからだそらのみぢんにちらばれ)
いてふのこずえまたひかり
ZYPRESSEN いよいよ黒く
雲の火ばなは降りそそぐ
春光呪咀
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いつたいそいつはなんのざまだ
どういふことかわかつてゐるか
髮がくろくてながく
しんとくちをつぐむ
ただそれつきりのことだ
春は草穂に呆ぼうけ
うつくしさは消えるぞ
(ここは蒼ぐろくてがらんとしたもんだ)
頬がうすあかく瞳の茶いろ
ただそれつきりのことだ
(おおこのにがさ青さつめたさ)