『心象スケッチ 春と修羅』

□春と修羅
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春と修羅.
(mental sketch modified)


心象のはいいろはがねから
あけびのつるはくもにからまり
のばらのやぶや腐植の湿地
いちめんのいちめんの諂曲
てんごく模様
(正午の管楽よりもしげく
 琥珀のかけらがそそぐとき)
いかりのにがさまた青さ
四月の氣層のひかりの底を
つばきし はぎしりゆききする


────────


おれはひとりの修羅なのだ
(風景はなみだにゆすれ)
砕ける雲の眼路
めぢをかぎり
 れいらうの天の海には
  聖玻璃
せいはりの風が行き交ひ
   ZYPRESSEN 春のいちれつ
    くろぐろと光素
エーテルを吸ひ
     その暗い脚並からは
      天山の雪の稜さへさへひかるのに
      (かげらふの波と白い偏光)
      まことのことばはうしなはれ
     雲はちぎれてそらをとぶ


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