『心象スケッチ 春と修羅』

□春と修羅
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おきなぐさ


風はそらを吹き
そのなごりは草をふく
おきなぐさ冠毛
くわんもうの質直しつぢき
松とくるみは宙に立ち
  (どこのくるみの木にも
   いまみな金の
きんあかごがぶらさがる)
ああ黒のしやつぽのかなしさ
おきなぐさのはなをのせれば
幾きれうかぶ光酸
くわうさんの雲


────────


かはばた




かはばたで鳥もゐないし
(われわれのしよふ燕麦
オートの種子たねは)
風の中からせきばらひ
おきなぐさは伴奏をつゞけ
光のなかの二人の子




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