『心象スケッチ 春と修羅』

□春と修羅
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有 明


起伏の雪は
あかるい桃の漿
しるをそそがれ
青ぞらにとけのこる月は
やさしく天に咽喉
のどを鳴らし
もいちど散乱のひかりを呑む
  (波羅僧羯諦
ハラサムギヤテイ 菩提ボージコ 薩婆訶ソハカ


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ひかりの澱
三角ばたけのうしろ
かれ草層の上で
わたくしの見ましたのは
顔いつぱいに赤い點うち
硝子様
やう鋼青のことばをつかつて
しきりに歪み合ひながら
何か相談をやつてゐた
三人の妖女たちです


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