『心象スケッチ 春と修羅』
□東岩手火山
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縦に三つならんだ星が見えませう
下には斜めに房が下つたやうになり
右と左とには
赤と青と大きな星がありませう
あれはオリオンです、オライオンです
あの房の下のあたりに
星雲があるといふのです
いま見えません
その下のは大犬のアルフア
冬の晩いちばん光つて目立つやつです
夏の蝎とうら表です
さあみなさん、ご勝手におあるきなさい
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向ふの白いのですか
雪ぢやありません
けれども行つてごらんなさい
まだ一時間もありますから
私もスケツチをとります》
はてな、わたくしの帳面の
書いた分がたつた三枚になつてゐる
殊によると月光のいたづらだ
藤原が提灯を見せてゐる
ああ頁が折れ込んだのだ
さあでは私はひとり行かう
外輪山の自然な美しい歩道の上を