霊魔童子

□序夜
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「タスケテ…」


『何?どうしたの?』


「成仏…デキナイノ」


『ふーん…何か現世に思い残してる事はある?』


「弟…弟ガ心配ナノ」


『弟?…ハハハ、大丈夫だよ!
成仏したとしても…天界から見守れるよ』


「本当ニ?」


『うん、さぁ早く成仏しないと悪霊になっちゃうからね
悪霊になったら僕は貴女を始末しなきゃいけないから』


「そうなの…わかったわ、ありがとう坊や」


『また元気で生まれ変われるといいね』



僕の名前は霊鵺、妖怪名は霊魔童子って言うんだ

あ、僕は妖怪だよ?ビックリした?

今で言う平安時代ぐらいから居るんだ


時代と共に進化していく言葉も

覚えるのが大変だよ



守「今日は何人成仏させたんだ?」


『今ので5人目だな』


守「…ま、少ない方だな」


『多い時には100人超えるからな…素直に成仏しろっての』


守「でも、悪霊になるよりはマシじゃないか?」


『悪霊の方が可哀想だろ
悪霊の大半は殺害された恨みや死を受け入れられないからだよ』


守「……ワシも戦乱の中死んだからな」


『それを僕が助けたんだよ、ありがたいと思えよ』


守「思ってる…それに、思ってなかったらお主の守護霊はやっていない」


『それもそうだな』



僕は人に怪しまれない様に

出歩くときは現代の服を着ているんだ


いつも着ている古めかしいのじゃ

変な目で見られるからね



『…洋服って着づらい、苦しい
着物の時代が僕達には似合ってたのに』


「…ワシはいいのか?」


『いや、そもそも守は見えないだろ』


「だが中には見える者も居る」


『極稀にね、霊感があって幽霊は見えても
守護霊まで見える人は滅多にいないから大丈夫!』


「そうか…人間とは面白いのぅ」


『さ、次は桜原町って所に行くよ』



僕は地図を見ながら次の場所へ向かった

成仏させる仕事係の妖怪も楽じゃないよ…まったく



「桜原とな…あそこは確か古い伝説があった筈だな」


『良く知ってるね、そうだよ…
昔は血桜村(ちざくらむら)と呼ばれていたんだ』



元々その村の名前は千桜村

普通の木が生えてないぐらい桜の木ばかりで

甘味処やかんざし屋、その他色々な店がある

賑やかな村だったんだ


でもその村には仕来りがあって

一年に一度、その村で一番大きな桜

千桜へ村繁盛の為に、少年を生贄として捧げてた


それがある年に少年を捧げて数ヶ月った頃

突然全ての桜が枯れて、大勢の人が謎の死を遂げた


そして唯一残った千桜は血の様に真っ赤になりながら満開に咲いていた



『こんな話があって、だから千桜が村の者達を殺した化け物だ!
って恐れられて、村の名前や桜の名前が血桜になったんだ』


「成程、だが今はそれを信じない現代の者によって新しく街が出来た…と」


『うん、でも未だに血桜だけは残ってるんだ…何故だと思う?』


「名物になるからじゃないのか?」


『うぅん、何回か切ろうとはしたんだけど
チェーンソーが突然故障したり事故が起きたりが頻繁に起こったからなんだ』


「もしや…それは」


『妖怪の仕業、だろうね』




ヒューという風の音

タッタッという人々の足音

ポタポタという血の滴る音

グチャグチャという肉を貪る音

サワサワと静かに揺れる血桜



「…近いな」





序夜 完
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