暗闇の物語
□消えぬ偽りの心
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「テメェ…トビ!」
「うるせぇ!うん」
「待てコラァ!!トビィ!」
いつも先輩はそう怒ってくれましたよね
僕がまだ暁に属してない時も
出会った時から先輩として後輩の僕を見てくれた
ちゃんと名前を呼んでくれた
僕の偽りの心に、僕の偽りの名前を
『デイダラ先輩…』
「……何だ、トビ」
『悲しい…ですか?』
「馬鹿……そんな訳…あるかよ、うん」
どうして…そんなに悲しい目をしているの?
サソリさんが死んでしまったから?
そんな先輩を放っておけなくて
僕はサソリさんの後釜となった
「………」
『先輩…』
「ダメだ…アートが……思い浮かばねぇ…うん」
貴方は芸術しか興味が無いですもんね
僕にはわからないけど
何でもいい
何でもいいから
そんな悲しい目をしないで
『痛いですか先輩?』
「痛ぇよ馬鹿!うん」
『そうっスよねー』
「痛ッ…もう少し優しくしろトビ!」
『て、てへぺろ☆』
「テメェェェ…トビィィィ……」
『ひぃぃぃぃ!!!』
こんな馬鹿な事ばっかりやってた
励ましたくて
でも先輩には何一つ響いてないんでしょう?
「ッ!ト…ビ……?」
『先輩…デイダラ先輩』
今の僕には、貴方を抱きしめる事しかできないけれど
いつか貴方を、救える日が来ますか?
「すまねぇな、トビ」
先輩は芸術になった
一瞬の美にふさわしい死に方だった
偽りの心の筈なのに
チクチクと痛んでしょうがない
貴方を救える日は…いつ来るのかな……
デイダラ
トビとして
お礼ぐらい、言いたかった
もう…俺には無理だ
無限月読を発動させたら
トビとして
もう一度、貴方に会いに行こう
待っていてくださいね、先輩
消えぬ偽りの心