1年生

□03
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昨日ゆっくり体を休めたおかげで、ナマエの体調はよく、テキパキと支度を済ませ、下におりて三人で朝食を取った。

食後に出てきた紅茶を飲んでいるとき
に、「ナマエ、例の薬は持ってきた?」と父が尋ねるのでうんと、頷き自分のポシェットから、入学許可証と共に送られてきた青い小瓶を取り出す。

「それを飲んでおくといい。もし迷子になっても言葉が通じればなんとかなるからね。一口飲んで残りはとっておくんだよ」

わかったと言ってみたものの、少し飲むのに抵抗があった。最初に臭いを嗅いだときは物凄い臭いがしたので味も期待できそうにない。
だが1ヶ月そこらで習った英語達はお世辞でも役に立つとは言えないので、よし、と意気込むとナマエは一口飲み込んだ。

口に入れた瞬間、甘いような苦いような酸っぱいようななんとも言えない味が口にひろがり、それと同時に耳の中にドロリと冷たい感覚が襲う。

しかし、ほんの数秒で味も耳の中の感覚も消え、「あんまり美味しくないね」と放った一言はいつもの日本語ではなく、完璧な英語だった。

「ナマエ、お前今英語ペラペラだぞ」

父が英語で話しかけるがその言葉も理解できた。
日本語に聞こえるのではなく、英語は英語として捉えられるというなんとも不思議な感覚だ。

「すごいね!喋ると唇が勝手に動く感じがする!」

母にも小瓶を渡して飲むように進めた。
顔を歪ませて薬を飲む母に笑ってしまい、母に怒られるが、もちろんそれもすっかり英語で、驚いた母は何が可笑しいのか笑いだし、それ以上お説教をうけずにすんだ。

家族三人英語が達者になったところで
、さっそく買い物へと出掛ようと、父は言うと、何故か店の裏庭に案内される。
どこを見てもドアらしき物は見当たらず、完全な行き止まりだが、父が杖を取りだし、壁のブロックを数回叩くと、なんと壁がひとりでに横に動き、あっという間に入り口ができた。

「ここがダイアゴン横丁だ」
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