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□好意の方向
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〜高野政宗の場合〜



『相手を後ろから呼んだ時、右から振り返ればその人は、あなたに好意を持っています。』


「ふ――ん」


俺はたまたま付けたテレビに映る『恋愛心理学特集』を見て相づちをうった。


こういうものはあまり信じないんだが、
少女マンガの編集長という職業柄どうしても耳に入ってくる。


普通利き手とかそういう方から向くだろ・・・


俺は、よくこんな人間が少女マンガ作れるな、と自分でも思うくらい冷めた考えをしている。


まあ、仕事と私生活は別だからな…


そんな事を考えながら、まだ恋愛について熱く語るそのテレビを消し、身支度を整え家のドアをあけた。


すると、横からも同じドアを開ける音がして、次の瞬間隣人と目が合う。


「・・・・おはようございます」
「おはよ」


思いっきり嫌そうな顔をしてこちらを見ている
小野寺律。



俺の想い人―。





「お前なんでこんなに早いの?」

「今日提出の書類を早めに出しておこうと思いまして…」

「あっそ」


本当にまじめだよな。
・・・ま、そんなとこがスキなんだけどな。


俺は素っ気無い返事をしながらも、思わず口角が上がりそうになる。


そんな時
ふと、さっきの恋愛心理学が頭に浮かんだ。



こいつは俺が呼んだらどっちから振り向くんだろうか。





右から振り向くと『好意』




別にこういうのを信じてるわけじゃない。
でも、あんなの聞いた後すぐ、好きなやつ目の前にしたら誰だってやってみたくなるだろ?



俺は心の中でそんないい訳をしながら、
自分の少し前を歩く想い人の背中に声をかけた。


「小野寺!!」



すると、律はきょとんとした顔で振り返り、
それを見た俺は次の言葉が出なくなる。



「はい?」




そう言って

律が振り返った方向



それは


まぎれもなく




『好意の方向』だった。







あ―・・・・


前言撤回・・・・

信じるわ・・・コレ。

てか、この心理学は当ってもらわないと困る。





律は相変わらず何も言おうとしない俺に
「もー!なんですか!?」と不満そうだ。


俺はそんな律に近づき、わざとニヤッと笑みを作って
「ふーん。お前俺の事好きなんだ?」と言ってやった。



すると律は
「は、はぁ!?朝っぱらから何アホなこと言ってるんですか!!!」
と頬を真っ赤に染めながら怒り出し、またスタスタと先を行ってしまった。



まぁ、こいつの場合そんな小細工しなくても顔に出るからな。



それでも、『好意』の証明が欲しくて、俺はまたお前を呼ぶ。



「律!!!」


すると、お前は一瞬歩みを止め、
更に真っ赤に染め上げた顔を『好意を表すその方向』からこちらに向ける。


それを見るとまた嬉しくて、
俺は誰にも気づかれないように小さく呟く。





「オレスキ」










....高野政宗の場合END☆



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