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□キラキラ。
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「ただいま―」


誰もいない部屋の中、俺の声が寂しくこだまする。

今日は夜遅くまで、会議に参加している高野さんに邪魔される事なく
すんなりと自分の家に入ることが出来た。



はぁ・・・なんか味気ないな。



フッと沸いたそんな感情に自分でも驚いた。


何考えてるんだ…良かったじゃないか!

今日はあの人の家に連れ込まれる事も、
俺の家に押し入られる事も、
抱きしめられて押し倒されることも無いのだから。

それは俺にとってとても幸せな事だったはず・・・。


そのはずだった・・・。



でも、俺は薄々気づき始めている。



仕事中も目があの人を追ってしまうのは、
編集として一応尊敬しているからで

帰り道、目で追ってしまうのは
あの人が俺をウザイくらいにかまってくるから



今までそんな風に逃げてきたけど・・・



じゃあ・・・・


”独り、部屋であの人の事を考えてしまうのは何のせい―?”



そんな疑問が俺の中に浮かんでくる・・・



それは、多分…


俺が


あの人を


高野さんを


「スキ」


だから…




「スキ」…わかってる。

俺は高野さんが好き。

きっと、高野さんに「もう一度俺をスキって言わせてやる」と言われたあの日から、ずっと。


でも、認めたくない自分もいて…

多分それは、高野さんが昔別れた初恋の人だからとか、そんなんじゃなくて。



俺はただ、怖いんだ…

この気持ちを認めてしまうと、高野さんへの好きが溢れてしまって
もう高野さんがいないと生きていけなくなってしまいそうで。

そしてまた、恋が実ったあと高野さんが俺の前から姿を消してしまいそうで…

それが怖くてたまらないんだ。


だから俺は蓋をした…
この気持ちがあふれ出さないように
誰も気づかないように・・・。

なのに…

なのになんであんたは、その蓋を無理やり蹴飛ばして・・・
こじ開けようとするんだ。


・・・・最悪だろ。
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