駄文U

□鳥は、鎖から解放された。
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俺、如月伸太郎には最近気になるやつがいる。
それは、妹のモモが加入しているらしいメカクシ団という、目的等々意味のわからない集まりのリーダーをやっているらしい、キドと言うやつだ。
カッコつけのくせに怖がりだったり、といわゆるギャップが強い女の子でギャップ萌えしてしまった、という経緯で好きになった。
俺も俺で単純なやつだ。
だが、そいつには既に彼氏がいるらしい。
聞いたはなしだが、カノという俺ばかりか、キドよりも背が低くて、いつもヘラヘラ笑ってるやつ。
…気にくわない。
そうだ、奪ってしまおう。
キドは俺のものだ。



ーガチャッ。

「お、シンタロー。久しぶりだな、どうかしたか?」

107と書かれたドアを開ける。
キドが茶碗を洗いながら振り返った。
フードを外してエプロンをしたキドは単純に、普通にかわいい。
その姿を眺めながら、なにごともないようにソファーに腰かけた。

「…いや。今日はカノはいないのか?」

キドは俺の口からカノという単語が出たのに驚いたのか、肩をピクリと動かした。
そして不自然に間をつくると、ああ、と頷いた。

「…そうか」

沈黙。
そもそも、騒がしい事はあまり好まない
から、この状況は非常に都合がよかった。
ソファーから静かに立ち上がって、皿を洗うキドに背後から抱きつく。
まるで恋人同士のように。

「なぁ、キド。もし、俺がお前のことを好きだっていったらどうする?」

耳元で流し込むように問えば、手元でガシャンッと皿をシンクに落とす音。
かなり緊張してしまっているらしい。

「っ…。なにがいいたい…?」

必死で俺を見まいとするキドが愛しい。
カノなんかに似合わないだろ?

「別に?ただ、キドが俺のことをどう思ってるかを聞きたいだけ…」

「俺はっ…お前をれんっ、あいたいしょう…と、して…見たことはないっ…」



心臓が跳ねる。
いつぶりだろうか、こんなに激しく打つのは。
痛いほど激しく打つ心臓に昔を思い出した。
嫌な記憶。
二度と思い出したくない、と…奥底にしまった記憶がふつふつを上がってくる。
嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
抱き締めてくるそれから逃げようにも、逃げられなくて身体から力が抜けた。

「…キド…?」

「ッ…」

いつの間にか過呼吸になってしまっていたのか、ハッと気付くと息が苦し
かった。
背中を擦られる。
カノじゃないその手になぜか安心してしまった。



…嫌だなぁ。
キドは僕がいないと壊れちゃうのに。
シンタロー君なんかが僕の代わりになれるわけはない。
せめて、代わりになれるのはセトかなぁ…。
…って。
ぁれ…。
おかしいな…。

「…ただいま」

「っ!!」

「いっ、たぁっ…!」

ふふ。
なんだか、にやけちゃうや。
まぁ、欺けばいいんだけど…。
やっぱりキドは僕が一番大切なんだよね?



「…ただいま」

「っ!!」

やばい、やばいやばいやばいっ!
カノが帰ってきた…!
こんな、ところ見られたらっ…!
焦って、シンタローを突き放した。
油断していたのか、おもっていた以上に簡単にぶっ飛んで驚いたけれど、そんなことに気を置くわけにはいかない。
あんなところ、見られたらっ…!
カノに嫌われちゃう…!
それだけはっ…。
それだけは絶対にダメなの…!
なんでか、なんてわからないけど…。
カノに嫌われたらダメ。

「…かっ、カノッ…!」

カノのもとにおぼつかない足で近寄る。
ガグンッと倒れこんだ私を支えて、耳元で囁いた。

「あとで僕の部屋にきて」
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