駄文U

□謎のクッキー〜モモキド編〜
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ある日、如月邸にて。

「いらっしゃいませ!団長さんっ!」

重々しげなインターホンを鳴らすと、バタバタバタっと音がしてすぐにガチャッとドアが開く。
そのテンションについていけずに、一歩後ずさる。

「お、おう。邪魔する」

広くも狭くもない玄関で靴を脱いであがる。
モモに二回の部屋に案内され、中に入ると、女の子らしいピンクの色のなかにぐろぐろしいなにかが…。
うん、見てない。
俺はなにも見てない。
目線を反らしながら一人頷いていると、ガチャと部屋のドアが開き、キサラギが顔を出した。

「あれ、団長さん。座ってないんですか?どうぞ、好きなところに座ってください!」

「ん、あぁ。ありがとう」

また可愛らしいピンクと白のチェックが入った布団が乗っているベッドに腰かける。

「団長さん、紅茶とコーヒーがありますが、どっちにします?おかしはクッキーを持ってきたんですが…」

…コーヒーと紅茶か。
実の話。
俺はコーヒーが飲めない。
カノとセトは飲めるのだが、あんな苦いもの、なんでみんな飲めるのだろうか。
とはいえ紅茶もそこまで好きじゃない。
…どうするか…。

「…じゃあ、紅茶にする」
悩んだあげく、紅茶にしてキサラギにティーカップを渡される。
綺麗な赤い色をした液体を揺らして遊んだあとに一口飲む。
久々に感じる、紅茶独特の味にキサラギにバレないよう口を歪めながら、クッキーに手を伸ばす。

ーさくっ…

「…あれ…」



「…あれ」

キドさんの声が聞こえてなんだろうって思って下を見たら、赤い色の液体。
これは匂いから憶測しても、紅茶しかありえない。
…なんで…。

「あっ…!すみません、団長さん!これ、カノさんが前にくれたやつでした!」

クッキーを指差して言うと、キドさん…いや、私の体から禍々しい空気が放たれる。

「…そう、か。カノか…よし…覚えとけよ…あいつ…」

ぶつぶつと呟くキドさんを少し放置して、クッキーの缶の裏に貼ってあった、シールをみる。

「……えっ、半日!?」

驚きのリアクションがキドさんにまで聞こえていたみたいで、呪文みたいのを唱えるのを止めて、キドさんが近寄ってくる。
そのシールが見えるようにしながら、その箇所を読む。

「…このクッキーは同時に食べた人達の精神を移行させます。有効期限は半日です…」
読むと、キドさんが顎に手をあてて考え始める。

「半日か…今が、3時。任務にいく予定だったが、無理そうだな。きっと能力も使えないだろうしな…っと」

キドさんが私の袖を摘まんでいる。
何をしているのかを問うと、消えたら困るからだそうだ。
だとしても、ずっと手を繋ぎっぱなし、というのは可愛すぎる…。
とりあえず、耐えることにした。



…困ったな。
いくら消えたらこまるとはいえ…。
ずっとつかんでいるわけにはいかない。

「…キサラギ。能力の訓練をするぞ」

「え?」




日がくれる頃。

「や、やっと大分できるようになりました…!」

俺の厳しい鍛練の成果もあって、キサラギはやっと能力を使いこなせるようになったらしい。
手を離しても消えない。
ふぅ、とため息をついてソファーに座る。

ーぐぅぅ…。

「ぁ」

壁掛けの時計を見ると、夜の6時。
腹が空いてもおかしくない時間だ。
キサラギが顔を赤らめながら、俺にちかよる。

「…団長さぁん、一緒に料理作ってくれませんか?」

「…あぁ、わかった。」

…キサラギが作ったら食べれるかもあやふやなものができるからな…。


今日はおかーさんはお仕事で、キドさんがいてよかった!
お兄ちゃんは全く料理なんてできるわけないし、またレトルトになるところだった!
団長さんは、パパッと冷蔵庫の中を見ると、肉じゃがと味噌汁とご飯と焼き鮭を作る、と宣言した。
そして、一応…手伝ったんだけど…あんまり上手にじゃがいもが切れなかったな…。
お兄ちゃんを呼びに行くために階段に足をかけながらため息をついた。

ーコンコン。

「お兄ちゃん、入るよー」

「あっ、妹さん!」

…どうしてかな、いつもお兄ちゃんの部屋に行くと最初にエネちゃんと目が合う。

「ん?モモ?どうしたんだよ」

普通に聞くお兄ちゃんにイライラする。
この時間に呼びに来るのは大抵夜ご飯だろ!

「団長さんがご飯作ってくれたから、行くよ、お兄ちゃん」

ーパタンッ

ドアを閉めると、エネちゃんとお兄ちゃんが楽しく話しているのが聞こえた。
リア充爆発しろっ!



「お、シンタロー。来たのか」

カチャカチャと食器を準備しているとキドさんが少し目線を高いところに向けながら言う。
お兄ちゃんの手には最近使われるようになった黒い携帯端末が握られている。
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