駄文U

□謎のクッキー〜セトキド編〜
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…なんでこんなことになったんだ…。
目線を落とせば、男らしいゴツゴツした腕。
緑色のつなぎ。
とてつもない違和感。

「入れ換わった…」



夜分遅く、といっても夜の10時30分。
マリーは久しぶりの任務で疲れてしまったのか9時には眠ってしまっていた。
そして、茶碗洗いやら、なんやらをセトとカノに丸投げして風呂に行ってきたのはいい。
そのあとに、ティータイムに入ったのもべつに特筆することはないだろう。
だが、そのティータイムの途中でカノが持ってきたクッキーについてはしっかりとかかなくてはならない。
それが、今回の事件を引き起こしたからだ。

「あ、ねぇねぇ!いい茶菓子かるんだけど食べない?」

ホットミルクを片手に笑顔でいうカノにセトは手に持っていたホットミルクをテーブルに置いてから、興味津々のような顔で身を乗り出した。

「なんすか?食べたいっす!」

その様子に笑顔を深くしたカノはホットミルクを置いて立ち上がり、部屋にもどった。
しばらくすると可愛らしいデザインが描かれた箱を持ってきて、パカリとあけ、テーブルの中央に置いた。
正直、寝る前だからとはいえホットミルクだけでは物足りないと思っていた俺は、口でグチグチとなにかを言いながらも四角形のクッキーを手に取っていた。
そして、セトも幸せそうにクッキーを手に取り、ほぼ同時にそれを食べた。

…そして、冒頭に戻る。

「ぁれ…?」

隣に、俺自身が見えた。
その俺はポカンとして、俺を見てくる。
文がおかしい。
なぜ、俺はここにいるのに目の前に俺がいるのか…。
目線を下に落とした。
大きく、ゴツゴツした手。
緑色の繋ぎ。
それは明らかにセトのもので…。

「…入れ換わった…」



…いやぁ、今日も綺麗に飛ぶっすねぇ〜
カノの血が。
笑えないっすけど、マジっすよ。
…それにしても、いつもよりその量が多いような…。
…あぁ、そうか。
今は、俺の身体で殴ったりしてるからっすね〜
困ったもんっす。

「はぁー、やっとくたばったか…」

「たす、け…せ…と……」

いつもの風景になにかの違和感(キドが俺っすから!)を感じつつ、手を伸ばすカノを放置して、キドに近寄る。

「とりあえず、これどうするっすか?このままだと問題山積みっすよ?」

「は?」
あぁ。
キドが変なとこ忘れるから気づいてないんすね。

「まぁ、風呂とか済ませてあったからまだいいとして…トイレとかどうするんすか?…いつ戻るかもわからないのに」

ハッとした表情をして、顔を真っ赤に染めたキド。
とりあえず俺も一発蹴っておこうかな。
床に横たわるカノをガッと蹴って、クッキーの箱を手に取る。
途中まで意味もなく成分表示を読んでから、ちらりとキドとカノをみた。
キドはカノの上にまたがり殴りまくっていた。
カノももうなにも反応を示さない。
…さすがに不味いかな。

「キド。これみてみるっす」

キドに箱を投げ渡す。
キドは素早く見つけるとそれを音読した。

「ぇー、このクッキーは同時に口に含んだ人達の精神がランダムに別れます…なるほど。二人だけだったから入れ換わったかのように思ったのか…」

やけに納得したように呟くが、べつにそれは言わなくてもいいだろう、と思うのは俺だけっすかね?

「ぁ。この効能は半日って書いてある…」

「そうっすね、半日ならなんとかなるっすよ」

相づちを打つとキドはホッとため息をついて寝る、といい部屋に帰ってしまった。

「…慌ただしい人っすね」
閉じたドアをみて呟き、ぶっ倒れているカノのもとに行く。

「カノ、起きるっす」

ゆさゆさと揺らして声をかけるが、どうやら軽く気絶してしまっているらしい。
困ったな…、とため息をつきカノの膝と背に手をまわし、おもいっきり持ち上げた。

「うっ…ん、ぅぅ…!」

おっ、重いっ…!
急ぎ足でカノの部屋に連れていき、ベッドに投げ捨てる。
そして、居間に出てマグカップを片付けて、部屋に戻った。



ー翌日。

「ん、うぅ…」

目を覚ました。
むくり、と起きてふと気づく。
紫の横髪がさらり、と肩から流れて…。

「戻ったっ!」


えんど

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