駄文U
□波乱の1日!?
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ータッタッタッタッ!
目まぐるしく心臓が跳ねる。
任務は成功。
だから、あとはここからいなくなればいい。
前に見える、男らしい大きな背中に安心する。
その背中を追いかけて小さな路地に入る。
ふっ、と気が抜ける。
ガクンッと膝が笑って、倒れ込む。
「キドッ、大丈夫っすか!?」
背中に手が置かれるような感触がして、顔を上げた。
セトが目を見開いたのを見てなにか恥ずかしくなって、下を向いて袖で汗を拭った。
「…大丈夫だ、」
セトの息を飲んだおとが聞こえて、立ち上がる。
辺りはやや明るくて、すぐさま能力で姿を消した。
バレてはいけない。
一先ず、アジトに帰らなくては。
そうして、キョロキョロと辺りを見渡して、首をかしげた。
「ここはどこだ?」
*
静寂。
そう、静寂がこの狭いゴンドラに包んでいた。
今まで、疲れた。
上下左右に揺らされ、やけに対象年齢が低い金属製の馬に乗らされ…。
そして。
今は、夕焼けの空を狭いゴンドラから眺めている。
「……なぁ。セト」
わぁわぁ、と綺麗だと騒ぐセトに静かに語りかけた。
「なんすかっ、キド!」
笑顔で振り返るセトを軽く蹴った。
ガクンッ!とセトがよろけて、ゴンドラが大きく揺れた。
「わ、ぁあっ…!?」
普通に立っていた俺はその場でしゃがみこみ…。
支えきれてない男らしい腕にどくんと心臓がうなった。
「大丈夫っすか、キド!…全く、暴れるからっすよ?」
にこりと笑って、椅子に座らせられる。
どうも…この女性らしく振る舞われるのは慣れない。
自分が女性らしく無いこともあるのだろうが…。
「はぁ…。すまん、大丈夫だ」
「そうっすか!よかったっす!」
向けられる笑顔に昔の面影を見る。
成長してるんだなぁ、と感心してしまう。
それに比べて…。
「キド!もうついたっすよ!」
ギギギ…と嫌なおとがして、ゴンドラが一番下まで降りた。
とんっと地に足をつけるとなぜかぐらりと揺れた。
「キド…ッ?」
ガッとセトの腕の感触を感じてくらりと平衡感覚を失った。
*
…ん。
なんかいいにおいがする…。
なんだろう…これ…。
「あっ、キド。おきたんすか?」
目線を上に向けると緑色のなにか。
それはセトだ、と脳が信号を飛ばした。
その布を掴むと、セトの大きな目と目が合う。
「キド、今日は倒れすぎっすよ?大丈夫っすか?」
にこり、と笑いかけられハッとしてガバッと跳ね起きる。
目の前のテーブルの真ん中に、不自然に丸く開けられた穴の中で切り分けられた動物の肉がジュゥジュゥと焼かれてー。
「なんで、焼肉屋!?」
セトをみて勢いよく問えば、笑顔で、肉がこんもりと入った皿を渡される。
「だって、遊園地で遊んで疲れたじゃないっすか!キドが倒れちゃったの、おなかすいたからかなってここまでつれてきたんすよ!ぁ、ちゃんと肉は中まで焼けてるっすから、食中毒にはなんないっすよ!」
思わぬ長文を突きつけられ、クラッとしつつ皿を置いた。
「いや、そういう問題じゃないだろ…。」
肉を、やたら重たい金属で出来た箸でつつきながら呟くと、セトが「なんすか?」と聞いてくる。
それを無視して、肉を食べていると、ブブッと尻ポケットの中にあるものがふるえた。
タッチ式の携帯電話をとりだし、ふと時間を確認すると…。
「10時22分!?」
びっくりして立ち上がった俺をセトは座れ、とジェスチャーする。
その通りに座ると、セトが肉を焼く手を止めた。
そして、顎の下で手を組んでなにか獲物を狙うライオンのような目で俺をみる。
ゾクッと背筋が震えた。
「キド…」
「な、なんだ…?」
「…今日は楽しかったっすか!?」
その野獣のような目が怖くて俯いているといつものような明るい声が聞こえて、顔を上げた。
「ぇ…」
「実は、キドに楽しんで貰いたくて、今日はいろいろふりまわしちゃったんすよ〜ほら、キドっていつも俺とかカノとか纏めてくれるから、疲れてるんじゃないかなって思って!だから、なにも考えずに一緒に遊べたらなって思って…ははっ、迷惑だったっすか…?」
いつもより、饒舌に喋るセト。
その顔はいつもより赤くて、目が泳いでいる。
「……や、楽しかったぞ。ありがとうな、セト」
自然と浮かび出る笑顔。
なんでこんなに振り回されるんだ、と少し憤っていた心が晴れやかになっていたのを感じた。
えんど