駄文U

□閉ざされた記憶
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…ああ。
おかしくなってしまいそうだ。
ヘッドフォンから聞こえる私の声と、脳内に響く、激しい呼吸音。
頭がぐらぐらとぐらついて今、なぜ走っているのかさえわからなくなる。
だが、それすらも忘れさせぬかのように、私の甲高く騒ぐ声が鼓膜を揺らした。

「早くっ!急いで!貴女には、会わなくちゃいけない人がいる!!今じゃなきゃ、間に合わないの!!」

酷く、緊迫感に煽られる声色だ。わからない。私には。
会わなくちゃいけない人がいるなんて。
誰のことなのだろう。

ーそうだ。

私は、昔からそうだった。

この病気のせいで、記憶力が無く、友達もできなかった。
だけど…。
あいつは、そんなことを気にもせず。
ただ…笑っていた。

……あれ?

あいつ、って…だれ、だっけ…?

ポロリと涙がこぼれて、走る空気の流れにそって真珠のように綺麗に光った。
大切、だった人のはずだ。
でも。
おばあちゃんじゃない。
優しい人だったはずだ。
でも…。
私には、わからない。
それが誰であったのか。
涙で滲む視界でふらつく足を必死に奮い立てながら走り続けた。

きっと、私の声に従えば、その「あいつ」にも会えるのだろう

私はただ、それを願って、終焉へ近付く街を駆け抜けた。



「っ…!はっ、…はぁっ…は、ぁ…!」

脳がぐらぐらと揺れる。
視界すら危ぶまれるまま、私がガクッて膝をついた。
ガクガクと震える足は疲労か、絶望か。

「…いない…」

そう。
いなかったのだ。
なにも無かったのだ。
私が想像して、願ったその絵は目の前には無かったのだ。
なにを想像して、願ったのかさえ。
今は不明瞭だ。
ただ。
「いない」というとてつもない違和感が身体を突き抜けた。
必死に酸素を取り入れながらも、震えと涙は止まらなかった。


「…×××…!」

ノイズ音が脳に響いた。



END



マンガ4巻、よかったですね!

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