駄文U

□たとえ、みんながいなくなっても。
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すみわたる、青い空。
もう、飽きちゃったよ。
こんな空は。
いつから、この携帯電話のなかにいるのかな。
持ち主はとうの昔に死んでしまった。
ただ、最後にもなにか憎まれ口を叩かれて…。
らしくなく、泣いてしまったことだけを覚えている。
でも、それほどまでに関係は深く、深く…。
身が裂かれるような痛みを、なんども、なんども味わってきた。
…でも、それが運命。
私は先生によって、不老不死にされてしまった。
かつて。
病院があったこの場所。
勝手だけれど、私はみんなの反対をおしきって、ここにお墓を立てようって言った。
今は、ここには。
病院も、大きな空が描かれた壁もない。
ただ、まっさらな地平線が見えるだけだ。
私を持つ小さな手は、私がディスプレイ上で会ったときとなにもかわらないまま。
みんなとさよならを告げた。
かくいう私も、ご主人と会ったその日のまま。
この広い電子のなかでふわりふわりと浮いている。
悲しみにくれてしゃがみこんだ、女の子は私を草の上に置いてポロポロと涙を流す。
儀式のようなそれ。
私はもう、泣けなくなってしまった。
あの日、コノハが一瞬だけ遥になって。
さようなら、といったあの日から。
私の頭上でなき続けるこの女の子も、きっと私は無表情で見送ることになるだろう。
私は、居場所を求めて生き続けなければいけないのだから。

えんど

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