短編

□そうなんだ
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必死に足を回転させる。
教室のガラスから見えた彼に、私の心臓は高鳴った。


「おはよう、アリババ!」


「おはよう。また走ってきたのか?」


「陸上部ですから」


アリババは電車通学だから、教室には私とアリババしかいない。

他の電車通学組がきたら二人きりの時間は終わる。だから私は早起きして学校に行くんだ。


「そうだ、これ食うか?」


「食べる食べるー!」


アリババがくれたトポを少しずつ、大事に食べていく。
アリババがくれた、これ重要ね。

こんなことでも心臓はうるさく鳴るから厄介だ。


「あれ、なに読んでるの?」


「そうなだ。駅で売ってたからつい」


「子供みたいだね」


可愛い。ぐっと出かけた言葉を飲み込んだ。

本当、子供みたいで可愛い。
ばくばく音をたてる心臓とともに床を転げ回りたい。


「人間って一生のうちに鳴る心臓の鼓動が決まってるんだって」


「そうなんだー」


「そうなんだってー」


爆笑しあう二人。だが私は内心焦っていた。

それが本当だったら私、早死にしちゃうじゃん。



私が早死にしたら、アリババのせいだからね。
 

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