短編
□回収係
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私の席は一番後ろ。
「今日の回収物を集めてこい」
その担任の声を合図にガタガタと後ろの列の人が立っていく。
私も立とうとしたら、朝学習のプリントに名前を書いてなかったことに気づいた。
慌ててシャーペンを手にとり、ジャーファルと名前を書く。
英語のまとめノートとプリント。その二つを私は手に持って立ち上がった。
次の席、その次の席と回収物を受け取り、とうとう私は後ろから四番目、前から三番目の……あの子の席へ着いた。
背の低いその子は両手をぴんと伸ばし私へとプリントを渡す。
その姿が可愛らしくて……ずっと見ていたい反面、顔が赤くなる前に早くこの場から去りたいという思いが強かった。
さっさとプリントを受け取ると私は次の席へと移動した。
すると制服の裾をちょんと引っ張られた。後ろを振り向くとノートを片手に少し俯き気味のあの子がいた。
「あの、英語のノート……」
「え? あ、ああ!」
忘れていた。悪い事をしたなあ。
この子は表に立つのが苦手で、男子はおろか、女子とも上手く話せないのだ。
いや、そこが守ってあげたくなるというか、控えめで可愛いなあというか……。
とにかく!
「す、すみません!」
私は手を伸ばしノートを受け取った。
──この赤い顔は、回収を忘れた恥ずかしさだと勘違いしてください。