日は揺れる心を照らす
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「志乃ー、飲み物買ってきてよ」
ヤムライハはにこやかに笑って頼んできた。どうせ無理矢理行かせるつもりだろうに頼んできているところがいやらしい。
「わかった」
財布を持って立ち上がる。だがヤムライハは目を丸くしていた。
アリババが動こうとしないからだ。
前の席にいて聞こえているはずなのに次の授業の準備をしている。
……ダメだ、助けてほしいなんて思っちゃいけない。これは私がまいた種なんだから。
「三本でいいよね」
「あ、うん……」
チラチラとアリババの様子を見ているヤムライハを放って校内の自動販売機へと駆け出した。
授業まであと十分。走れば間に合うはずだ。
廊下を走り、階段を急いでおりる。
よし、着いた。
でも息を整える暇は無い。千円札を入れてボタンを押す。好きな飲み物は把握している。
落ちてきたジュースを引ったくるように持っていき、体の向きを変えたら誰かとぶつかった。
その衝撃で落ちていく飲み物。
「ごめんなさい!」
頭をさげた私の目の前に缶ジュースが差し出される。
「落としましたよ」
ドゥニヤだった。
なんでここに。それに、なんで私に親切するの。
言いたいことはたくさんあるのに体が強張っていうことをきかない。
「これで全部ですか?」
気づくとドゥニヤは全て集め終えていた。
「ありがとう……」
お礼を言うとドゥニヤはふわっと微笑んだ。
一体なにが起こっているの?