日は揺れる心を照らす
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「ちょっといいかしら」
「えっと……」
ちらっと様子をうかがうと、アリババは困惑した顔をしていた。
私はそんなアリババの後押しをする。
「行ってきなよ、アリババ」
すると私の顔を見てゆっくりと頷き、歯切れの悪い返事をした。
アリババのことだ。どうせ私の心配でもしていたんだろう。
渋々ながらも出ていったのに一安心する。
二人の姿が見えなくなったところで、私はモルジアナの腕を引っ張って走り出した。
「どうしたんですか、志乃さん」
「尾行!」
それだけ訊いて後は黙って着いてきた。こういう所はモルジアナの良い所だと思う。
着いた場所は体育館裏。このベタな感じ、紅玉が好きそうなチョイスだ。
朝練が終わったのか、体育館からは物音一つしない。
そんな中、紅玉ははっきりと断言した。
「井原志乃とは離れたほうがいいわよ」
やっぱり私のことか。予想はしていたものの、苛立ちと悲しみが同時に押し寄せてきた。
「なんでだよ」
アリババは不機嫌そうにしながらも理由を訊いた。言葉には棘がある。
「深沢茉李。その子との一件が今のいじめの原因なの」
ビクッと体が震えた。
顔の筋肉はガチガチに固まり、目線は下にいく。
「それ、どういうことだ!?」
言わないで!
しかし、どれだけ念じても届かない。
紅玉の口からとうとうアリババへと話された。