「こういう時のための食客です」
そういうジャーファルだが、目は暗い。
なにか背景に数字が見えるような。
「船、食料、軍事費、予算……。ふふふふ……」
微笑みながらぶつぶつと呟いた言葉に同情せざるを得ない。
政務官には絶対ならないぞと固く胸に誓った瞬間だった。* * *
三日後──。
小さなリュックを背負い、船を背にしてファレノは深々と頭を下げた。
「短い間でしたけど今までありがとうございました」
そんな寂しいことを言うな、と多くの人が口々に言う。
シンドバッドは一歩前に出て、一冊の本を差し出した。
「これは……?」
「専門書みたいな物だ。ルフや精霊について載っている。本を書くなら持っていくといい」
それなりの重量があり場所をとる代物だが内容は濃い。
それに基礎から応用まで詳しく載ったそれはファレノにはとてもありがたかった。
「それと、船旅は危険だからピスティを連れていけ。こう見えてとても強いぞ」
手をあげてよろしく! という小さな少女。
140cmくらいだろうか。謝肉宴(マハラガーン)では会わなかったから分からないが、きっとアラジン同い年だろう。