日は揺れる心を照らす
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三方向から降ってくる水に、頭を抱え惨めに耐える。
ドアの向こうからは甲高い笑い声が聞こえる。
歯を噛みしめ反応をせずにいた私に飽きたのか、ドアを押さえていたヤムライハが退いて私を引きずりだした。
そして、トイレの中を歩き回った靴で私の顔を押さえつけた。
「志乃、今朝のあれはどういうこと? 紅覇になにか言ったの?」
「何も言ってないよ……」
「アリババには?」
「アリババにも、何も言ってない」
ふーん、と理解したような反応を見せ、頭から足を離す。
ほっとしたのも束の間、髪を鷲掴みにされ膝立ちの状態にされた。
「ちょっ、痛い!」
「いい気味よ。金持ちの社長令嬢だから今まで苦労してなかったんでしょ? ここで存分に苦しんどきなさい」
違う! 私だって苦労してきた!
皆から奇異の目で見られて、友達も出来なくて……。
そんな私を救ってくれたのが、茉李だったのに……。
私の髪を持つ手にぐっと力が入れられる。そのまま歩かされ、洗面所の前へと立たされた。
栓を差し、蛇口を一杯捻る。
額に強い衝撃を感じたと思ったときには既に水の中だった。
「ヤムライハ! やりすぎだよ!」
どうしよう……息ができない。
ピスティの声も、どこか遠くから聞こえてくるような錯覚がする。