いよいよ頭が虚ろになったとき、急に後頭部が軽くなった。
「っはあ!」
咳き込みながらも呼吸を繰り返す。足に力が入らずへたりこんでしまった私に、そっと何かが触れた。
「大丈夫ですか?」
優しく背中をさすってくれる手に安堵し、ふいに涙がこぼれた。
「ありがとう、モルジアナ……」
「いえ、自分がされて嬉しいことをしているだけです」
相変わらずの無表情だが、私には微笑みかけてくれているように見えた。
しかし、と言って立ち上がる。
眉はキッと上がり、目には力が込められていた。
「あなた達は自分がされて嫌なことはするなと教わらなかったのですか?」
「そんなの守るのは小学生くらいよ。だいたい、いきなり足蹴りしてくる奴に言われたくないわね」
うそ……。ヤムライハの腕が離れたのはモルジアナのお陰だったんだ。
止まりかけた涙がまた溢れだす。私には、まだ仲間がいたんだ。
モルジアナは私の味方をしてくれる。ヤムライハの言葉に顔を真っ赤にしている。
「殺人と足蹴り、どちらが悪だと思ってるんですか!」
空気がビリビリと震える。
モルジアナとは対極に、ヤムライハたちは真っ青になっている。