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□File1
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「これって…」
たどり着いたゼロたちは、タワーの周辺から内部を見て唖然とした。
このプラズマスパークタワーは光の国で最も重要なものであるため、その分警備も十分すぎるほどの配備されているはずだった。なのに、ウルトラ兄弟たちも、他の凄腕のウルトラマンたちも全員その場に倒れこみ、ひどいダメージを負っていた。
「何があったんだ、エース!」
セブンが倒れていたエースを抱きかかえて尋ねると、エースは息を切らしながら答えた。
「俺たちのことより、コアを…」
三人はコアを見上げた。祭壇のあたりも荒れていたが、祭壇の前には頼りになれそうな人影があった。
すぐその場へ飛び上がった。
「ベリアルさん!」
祭壇の前にいたのは、ウルトラマンベリアルだった。彼の顔を見て、グレイモンは顔を背けた。父を久しぶりの再会だったのだが、ゼロとは違い元々父親を嫌う傾向があったためだろう。
「…ゼロか。すまん、コアは守り抜いたが犯人に逃げられてしまったようだ」
「いえ、でもみんなが怪我程度で済んでたみたいでホッとしました」
「グレイ、お前もよく帰ってきたな」
「う、うん…」
「だがベリアル殿。何故我々をここに呼び出したのです?」
セブンはプラズマスパークコアに近づきながら、ベリアルに尋ねる。見たところ触れられたような形跡もないようだ。ゆっくりセブンのあとに続きながらベリアルはその問いに答えた。
「セブン、お前の息子ならふさわしいと思ったのだ。この光を求め合うにふさわしい相手にな」
その時、彼の手から黒い霧が発生し、黒い棍棒のようなものとなって彼の手に握られた。
次の瞬間、ベリアルはとても信じがたい行動を取り出した。
「!」
背後から迫ってきた危機に感づいたセブンは、とっさにアイスラッガーを引き抜き、背後からベリアルが振り下ろしてきた棍棒…『ギガバトルナイザー』を防いだ。
「親父!」
「と…父さん!?」
いきなりの、予想だにしない展開にゼロとグレイモンは驚く。
「ほう、なぜ気づいた?」
「もし内通者が我々の中にいたとしたら、あのロボットたちをこの星に誘導することができる。だが、それ以外で今までこの星を突破した侵略者は一人もいなかった上に、ウルトラ戦士の中でもここのセキュリティの解除法を知る者はウルトラ兄弟以上のランクに立つ者だけ。そして、あなたは他の警備隊員と比べて犯人に負わされたと思われる傷がまるでない」
セブンの言うとおり、確かに他のウルトラ戦士が戦って傷ついたにも関わらずベリアルの体に、傷跡さえ残っていなかった。
「さすがはセブンだ。だが、私を全く警戒していなかったゼロの甘さこそ貴重だとは…」
両手でアイスラッガーを握り、ベリアルの攻撃を防ぐセブン。手に空きがないことをいいことに、ベリアルはセブンの隙のできた頭を握り、そのままセブンを持ち上げた。
「思わないか?セブンよ。若い頃のお前のようにな」
「父さん、何をやってんだ!!」
グレイモンがバトルナイザーを掲げて、もう一度怪獣をモンスロートしようとしたその時だった。彼を狙ってどこからか放たれた衝撃波が彼を襲った。
「ぐああ!!」
「グレイ!」
タワーの外にまで吹っ飛ばされ、宙を待っている間に彼は今度こそバトルナイザーを掲げた。
【バトルナイザー、モンスロード!】
瞬間、バトルナイザーから飛び出した光のカードが飛び出し、『超古代竜メルバ』となって彼を背中に乗せた。
「助かったよ…メルバ」
メルバはゆっくり地上へ主人であるグレイモンを下ろした。
すると、バリン!と光の国の地面を踏みつけ、一体の、金色の亀の甲羅のようなものを背負う異星人が彼らの目の前に現れた。
「我らが皇帝に逆らう悪い子はいねえかあ〜…?」
「なんだあんた…?」
「俺様は地獄から蘇りし鋼鉄の男…『鋼鉄将軍アイアロン』!!」
一方でゼロはセブンを鷲掴み状態で捕まえた状態で、ゼロと対峙していた。光線の構えをとって、彼はベリアルに警告する。
「ベリアルさん、何をするんだ!早く親父を離してください!」
「そうだゼロ、よく狙うがいい。私を止めたければお前の父親ごと私を打ち抜く他ないぞ」
「!!!」
ゼロは息を詰まらせた。父親ごと攻撃して、彼を止めろと?
「ぐ…おお…あああ!」
セブンは自分の頭をわし掴みするベリアルの手を必死に解こうと、その手を殴るがビクともしない。
「やはりなゼロ。お前はまだ甘い。が…それが逆に私とは対極のやり方で宇宙の未来を紡ぐことができる」
彼はそう言い終えると、セブンを宙に投げ出し、ギガバトルナイザーから発射した光弾でセブンを攻撃した。
〈ベリアルショット!〉
「グアアアアア!!」
セブンは壁に叩きつけられ、ズルズルと遥か下のタワー入口付近まで落ちていった。
「親父!」
ゼロがすぐ彼を追いかけようとした瞬間、ベリアルはゼロの後頭部をギガバトルナイザーで殴り、その場に跪かせた。
「ぐ…ど、どうして…なんでこんなことを…」
「この宇宙のためだゼロ。お前は平和的な宇宙の平和のための奔走している。だが私はその逆だ。力による支配によって、この宇宙を一つにすることで絶対の平和を手に入れる」
彼はぶん!と、分厚いマントを着て一回り身を回転させると、さっきまで美しい銀色の体が一瞬にして黒く塗りつぶされてしまっていた。
「な…」
「『銀河皇帝・カイザーベリアル』としてな!!」
今までゼロが知る姿ではなかった。ザギと同じ黒と赤のカラーリングで、目は細長く伸び、胸元はより屈強な肉体となっている。口元なんか、まるで人喰いザメのような形に変わってしまっていた。
「それで…仕組んだのか…ギガバトルナイザーの盗難や、新しい命のエネルギー生成のデータをもみ消して、あのサイマもどきたちやロボットたちを、侵入させ…仲間たちを次々に襲って!傷つけて!」
地面に膝を付きながらも、ゼロはベリアルの顔を見上げる。以前タロウから聞いていた、命のエネルギーのデータが何者かに消去されたと聞いていた。おそらく裏切り者が内部にいると、タロウは予測していたが、まさかウルトラの父と共に長い間宇宙警備隊で貢献していたベリアルが…。
力による平和…だと?そんな侵略者同然のやり方をしてまで、人々が本心で彼についていくわけが…。いや、そんなの本当の平和ではない!
「サイマもどき…ああ、あれは無念を残して死んだダークロプスゼロを回収し複製した『ダークロプス』だ。私の役にとても立ってくれたよ」
「…!!」
サイマが、死んだ?あいつが…敵だったがやっと自分と理解し合えた数少ないやつだったのに…。
ベリアルはプラズマスパークコアに前に立ち、体がまだ動けずにいるゼロに言った。
「さてゼロ、覚えておくといい。誰も犠牲にならない平和など…」
言いながら、彼はプラズマスパークコアを握り締め、それを思いっきり祭壇から引き抜いた。
「ない」
「や……やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
だが、もう遅かった。
ベリアルがプラズマスパークコアを引き抜いた瞬間、光の国はあっという間に暗くなり、そして猛烈な吹雪が光の国を襲った。
「うわあああああ!!」
街の市民たち、ウルトラ戦士たち、そしてゾフィーやウルトラマン、レオ兄弟、そしてタワーの下層にいたジャックたちも、ウルトラの父母、そしてタロウも一瞬にして凍り付けにされてしまった。
「メルバ!」
氷には氷、タワーの外で冷凍波を回避しようと、グレイモンはメルバの名を呼ぶ。すると、メルバは冷凍波を吐いて氷の壁を作り出し、グレイモンを守った。
氷の壁越しから彼は目の前に現れた、アイアロンと名乗る星人を見る。
なんてやつだろう。あの極寒の冷凍波を浴びたのに、しっかり動いている。
「ほほう、さすが皇帝陛下のご子息なだけはある」
「なんだって…?」
皇帝の息子?この変な金属の塊は何を言っているんだ?
「貴殿は我が主人『カイザーベリアル』のご子息…つまりこれから全宇宙を支配する偉大なる皇帝陛下の皇子なのです…」
「カイザー…ベリアルだって?んなバカな!」
いくら嫌いとはいえ、自分の父がどれだけ世界のために貢献していたか、グレイモンはよく知っている。だから父の信じがたい行動には、あまりにもショックを受けた。
「あ…」
かろうじてブレスレッドからウルトラゼルディフェンダーを取り出し、風よけのような使い方で冷凍波を防いだゼロ。自分は助かったが、辺りはすっかり変わり果ててしまっていた。
星全体を氷が覆い尽くし、光に照らされた場所等どこにもない。同胞たちはすべて氷の彫刻と化し、全く動く素振りを見せなかった。
歴代のウルトラ兄弟たちも、そしてゼロの父、セブンもまた…。
「ゼロ、こんなものか?これで終わりではないだろう…?これから始めるのだ。お前と私、どちらのやり方が宇宙を正しい未来に導くことができるのか…」
「……さねえ」
ギギギ…。彼の左手を握る力が強まり、それに呼応するように左手の甲に刻まれたガンダールヴのルーンが青く輝きだした。
「!?」
「絶対、許さねええ!!!」
ヒュン!と瞬間移動の如く姿が見えなくなったゼロは、一瞬で間合いを詰めてベリアルを殴り飛ばした。
「ヌゥ!?」
今の攻撃を受け、ベリアルは左手に持っていたプラズマスパークコアを離してしまい、コアは床に突き刺さった。それを見てゼロは、その光に手を差し出すと、コアの穢れ無き白い光が彼の手にまとわりつく。
「聖なる光が、ゼロの手に…」
ゼロは頭のゼロスラッガーを二本共手にとり、コアの光りを浴びせると、二本のゼロスラッガーは三日月状の剣『ゼロツインソード』に合体した。
それを見て、ベリアルもギガバトルナイザーを構え、じり…と右足を一歩下げてゼロを見据える。次の攻撃で、二人は勝負を一気に決めるつもりなのだ。
「デエエエエエアアア!!」
「ホリャアアアアアアア!!」
ゼロとベリアルは、ほぼ同じタイミングで互いの方へダッシュ、自分たちも武器を振り上げて攻撃を仕掛けた。
そして…ガキン!
刹那、ゼロとベリアルは一瞬にして互いに武器を振り下ろし、背を向けあった体勢になっていた。
「ぐ…」「グヌォ…」
ゼロは剣を落として自分の右肩を掴み、ベリアルもギガバトルナイザーを杖代わりに立ち、自身の顔を押さえた。ベリアルの右目の上から、ゼロの剣撃で受けた痛々しい傷が付けられていた。
「ぐ…ふふふ…ふははは…」
よろよろと立ち上りながら、ベリアルはゼロの方を向いた。
「やはり私の見込みは間違っていなかったようだな…。ゼロ、お前にはその名の通り無限の可能性がある」
「無限の…可能性…?」
「そうだ。その可能性を限りなく発揮してこの私を止めてみるがいい。これから私は、お前の守っていた星への進行を開始する」
「な…!?」
驚愕のあまり立ち上がるが、また肩に受けたダメージが痛みだし、彼はまた膝をついて肩を押さえつけた。
「侵略目的としては特殊鉱石『エメラル』の大量奪取と部下に命じている。以前から手を組んでいたザギとの協力もあって、今の私はひとつの銀河系さえ侵略できる戦力を保持している」
「なんで…なんでわざわざそんなこと俺に伝えるんだ…?あんたは、一体なにを最終目的にしているんだ!!」
「…復讐」
「…なに?」
「ふ、冗談だ。私の目的は、この宇宙を私の元のみに統率させ、真の繁栄をもたらすためだ。もし止めたければ、もう一度戻るがいい。そしてお前の意思と力を、その時にもう一度見せつけるのだ。私の部下をすべて、仲間たちと共に倒しながらな」
彼がそう言い終えた時、アイアロンがベリアルの背後に飛来した。
「陛下、そろそろお時間です」
「分かっている」
彼に促され、ベリアルはプラズマスパークコアを再び手に取ると、アイアロンと共に宇宙へと飛び立っていった。
「…ベリアル…」
どうして…こんなことを…。
宇宙警備隊に入隊したときから彼を一介の戦士として尊敬していた。無論彼が今まで得てきた功績の数々も計り知れない。なのに…。
「ゼロ!」
メルバの背に乗ってきたグレイモンがゼロの元に駆け寄ってきた。
「父さん…なんて言ってた?」
「…話は道中で話す。一旦エメラダ星にもどるぞ!」
このままでは、エメラダ星に残してきた仲間たちが危険だ。ゼロはグレイモンと共に、光の国を飛び立った。
ただ惜しいのは、光の国の仲間を、そして父を氷の彫像にしたままであること…。
親父、みんな。
ごめんな。もう少しだけ、待っててくれ。
俺は絶対ベリアルを止めるから!
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