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□File12
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「だが、流石に数も多くて奴らは苦戦せざるを得なかった。だからブリミルは必然的に、虚無魔法『生命』を求めた」
「!ま、まさか…」
ヴィットーリオはそれを聞いてあることに気がついた。それに絶望感を抱き、その場に膝をついた。
「そう、宇宙からの危機に対抗するため貴様が他の担い手にやらせたように、当時の俺も奴に『生命』の魔法を使わせた。そして肉体をウルトラマン化させた俺は、数千年ぶりに復活を遂げることができた。
ここに、俺が存在しているようにな!」
「…!!!」
「こうして俺は、怪獣共を使ってこの世界のみならず、多くの星への侵略を開始した。無論宇宙警備隊の連中も黙っていなかったがな」
彼がそういった時、映像にはなんと初代ウルトラマンやまだ未熟で若かった頃のタロウがヴィンダールヴのルーンを持つコスモスと共に怪獣たちに苦戦を強いられている光景が映った。
(ハヤタさん、タロウ…あなたたちもここに来ていたのか…)
ゼロはジッと映像上のウルトラマンとタロウを見た。
「ブリミルは、こうして必然的に世界を滅亡に追いやった『シャイターン』と呼ばれることになったわけだ」
「じゃあ、蛮人と我々エルフの対立も、6000年前の大災厄も全て、貴様が仕組んだことだったのか!!『冥王』!!」
ビターシャルはいつになく冷戦さを捨ててシュウヘイ(ザギ)を睨みつけた。
「ご名答。そう、何もかも俺が仕組んだことだったのさ」
すべて、この男が仕組んだことだった。
今回の先住民からの挑戦も、6000年間もの長きに渡る種族間の対立も、全部この男が仕組んだことだった。
「だが6000年前、サーシャがブリミルに頼まれて、ブリミルを殺したことで俺の力は低下、さらにサーシャがノアに覚醒したこともあって、俺はまた敗北して体を失った」
「それで…シュウヘイの体を奪ったことかよ!」
グレンファイヤーが喧嘩腰でシュウヘイ(ザギ)に言う。自分の認めた男を人形扱いしているように見えて我慢ならない様子だ。
すると、今度映像には、シュウヘイが生まれ育ったネクサス世界の映像が映された。
そしてシュウヘイの先代に当たるデュナミスト、孤門がネクサスに、そしてウルトラマンノアとなってザギと戦う姿が映る。そして、映像上でザギがノアの光線によって倒された。
「虚無の魔法で誕生した俺は、擬似だがコモンマジックや虚無魔法を扱うこともできる。だから俺はこの戦いでの敗北する18年前、四代目の凪がウルトラマンの光を手にしたのとは別にこの未来を見ることができた。黒崎が6番目となることもな。
だからその時に備え、俺はプロメテウス・プロジェクトの技術を利用し、俺のスペアボディと黒崎を誕生させた。そして黒崎をサモンサーヴァントのゲートを利用して新たなリーヴスラシルとしてそのハーフエルフの娘のもとに送りつけた。そして、リーヴスラシルのルーンに俺の力と意思の一部を植えつけた。
ファウストとメフィストを新しく作り直し、新たにルシフェル、異次元の悪のウルトラマンをもとにしたカミーラ・ダーラム・ヒュドラ・カオス、そしてダークロプスゼロを作ってぶつけたのは、この世界を渡る際にノアが消費した光のパワーを再度強化させるため。そのために高凪ハルナやコルベールたちを利用したのは、黒崎の心に俺への憎しみや怒りをより深く植え付けさせるためだ」
「な…!?」
こいつが、シュウヘイの生みの親だと?しかも、テファの元にシュウヘイが召喚されたのも、時々シュウヘイが悪鬼となって暴走することがあったのも、ハルナたちが一度自分たちの敵となったのも、ザギの計らいだった。
テファは、まるで何かが壊れたかのような、ガラスのように何かが壊れた感じがした。
「そして生命の魔法で黒崎の肉体はウルトラマン化し、やつの体に宿っていた俺のオリジナル、ウルトラマンノア自身も光を俺に奪われ、俺の力の糧となった。つまり、俺は模造品ではない、唯一無二の存在となった…」

そう、すべて…

俺が完全体となるための…

「道具だ…!!!」
自分がオリジナルよりも強く、そしてほかの誰でもない、自分こそが本物かつ最強となるためにシュウヘイごとウルトラマンノア(ネ
クサス)のすべてを奪った。自分たちやルイズにテファ、この星に生きる知的生命体たち、それになによりシュウヘイはそのための、
『道具』…。
ブチブチブチ…。
ザギの不敵な笑みを見て、拳から血管が膨れ上がるような音が生々しく響いた。
「…っざけんじゃねええええええええええええええええ!!!!」
ついにゼロは怒りを爆発させ、シュウヘイに拳を向けた。
が、シュウヘイの眼前で拳は止まった。いくら正体がザギでも、体はシュウヘイのものだ。
もし攻撃でもすれば…。
「貴様らに、俺が攻撃できるのか?この体の元の持ち主が誰なのか、忘れたわけではあるまい?」
「くそ…!!」
「さて、次の段階だ」
シュウヘイ(ザギ)は指をパチンと鳴らすと、レーテから邪悪な赤い光が灯り出した。
「さあ、レーテ。この星の知的生命体、そして大地に生きる精霊たちの記憶の闇を吸い取れ!」
ブン!とレーテのエナジーコアが光り、ゼロたちの体から黒い煙のようなものが放出されていく。
「な、なんだこれ!?」
「ひ!や、やめろおお!!」
「何をするんだ!!やめろ!」
ゼロがシュウヘイ(ザギ)に向かって叫ぶが、彼は聞く耳を持たなかった。
「レーテは『忘却』の魔法を元に作られた、本来人の記憶を封印するもの。それを改造し、対象となる者の負の記憶を複製し吸収するようにした。この記憶をすべて俺の身に吸収すれば、黒崎の体に同化しているノアの光は俺の力の源となる闇に、変換される」
ゼロたちをはじめとしたその場に集められた者たちから記憶の闇を吸い取り尽くされた彼らは、まるで力を吸い取られたようにその場に膝をついた。
レーテのエナジーコアの赤い光が、黒い邪悪なオーラとなる。
シュウヘイ(ザギ)はレーテのエナジーコアの前に浮かび上がり、誰かを迎え入れるように両手を広げた。
「来い」
レーテから黒い波動が溢れ、シュウヘイの体の中に流れ込んでいく。すべて流れ込んだところで、黒いエボルトラスター『ブラックトラスター』で、黒き闇に身を包み、シュウヘイ(ザギ)はダークネクロスに変身した。
まだ終わらなかった。ネクロスの体がさらに黒い波動に包まれ、体中にヒビが入り込んでいく。
「復活…いや、新たなる誕生の時だああああああああああああああああ!!!!!!」
ボン!と爆発に似た音が響き、ネクロスの体が粉々吹き飛ぶと同時に、彼の立っていた場所には、ウルトラマンノアに酷似した黒い巨人が、以前はもっていなかった漆黒の翼を広げて立っていた。
『邪悪なる暗黒破壊神・ネオダークザギ』。
「ヴオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
以前孤門の変身したノアが戦った時の姿と少し異なっていた。全身ノアの姿を黒いペンキで塗りたくったような黒いボディのあちこちや顔の半分が、ノアと同じ銀色になっている。
「あれが、大災厄を起こした冥王…」
ザギの威圧感ただ要素の姿に、ルクシャナは珍しく青筋を立てていた。
「ん…もう少し時間がかかりそうだな。まあいい、もう用済みになった貴様らを殺すにはこれで充分だ。ウォーミングアップとしよう」
瞬間、彼の姿は残像となって消え、次の瞬間ミラーナイトがまるで影のようなものに突き飛ばされた。
「グア!」
「ウェールズ様!」
続いてグレンファイヤーも、突然彼の眼前に現れたザギに唸り絵を上げた拳でアッパーを食らってしまう。
「グボア!!?」
『く!ジャンナイン!』
『おう!』
ジャンボットとジャンナインも戦う姿勢を構えるが、攻撃する間も与えられず見えない攻撃を受けて床の上にダウンした。
「きゃ!!」
中にいたルイズ・ハルナ・テファも床に叩きつけられるように倒れた。ザギはジャンボットの首を掴んで持ち上げる。
「つまらんな。所詮用済みのゴミか」
そう言ってザギは手のひらに黒い光球を創りだす。
『く…おのれ、ザギ…』
「ひどくお前たちを扱ってきたお前たちへのせめてもの慈悲だ。痛くないように止めを刺してやろう。特にハーフエルフの女、愛する男の手で殺されるんだ。最初にこの器が愛した女の時のようにな。
さぞ、本望だろう…?」
「や、やめろザギ!!!」
ゼロがダウンした状態からザギに手を伸ばすが、体が思うように動かない。ミラーナイトたちも同じだった。ビートスターが倒されるまでの連戦でもう体力が残り少なくなっていたのだ。
ジャンボットの操縦席はちょうどザギが見ている、ジャンボットの頭の中にある。光球を持っている右手を引っ込め、ジャンボットの頭ごと中に入るテファ・ルイズ・ハルナを破壊しようとしていた。
「シュウヘイ!やめるんだ!!」
ミラーナイトの叫びも、今のザギには届かなかい。本気で彼女たちを殺すつもりだった。
『兄者…』
ジャンナインも兄たちを助けようと動き出すが、体のあちこちが火花を起こし、所々破損している。特に足ひ大きなひび割れがあった。
「うぅ…」
ルイズはさっきまでの衝撃で不運にも肩を強く打ってしまい、杖が握れなかった。ハルナも、ジャンボットを操縦してビートスターの操るロボットたちと戦った時に体力を膨大に使い切っていた。
「た、助けて…」
ザギの光球を持った手が、眼前に迫っていた。テファは泣きながら、必死に叫んだ。
―――助けて、シュウ!!
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