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□File11
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「あなたが、ザギ…」
レーテの吊るされた天井の真下で、不敵に笑うシュウヘイと、愛する人を奪われた怒りで相手を睨むテファ。彼女の目から、涙がボロボロと流れ落ちていた。
「どうしてシュウの体を、盗んだの…?彼があなたに一体何をしたの!?」
嘆きと怒りを言葉にしてシュウヘイにぶつけるテファ。一方のシュウヘイは、目を閉じてテファの語り始めた。
「…今から二万年前、魔法と科学に特化した星が存在した。火、水、風、土、そして虚無の魔法を扱える者をそれぞれの指導者とした五つの国で分かれていた」
すると、彼らの周りが真っ暗な闇に包まれ、そして映写機によって
再生されている映画のように映像が映し出された。数多の銀河、青雲をかたどる数多くの星たち、そして…。
ビーストの大群によって包まれてしまっていたひとつの星。
「その世界は各国の争いが絶えず、毎日死への恐怖と明日のない絶望に包まれていた。結果、その負の感情が宇宙中からスペースビーストの大群を呼び寄せる要因となった。
その世界の国々は皮肉にも互いに争うことをやめ、団結し立ち向かうが、数の暴力にはとても敵わなかった。そんな時だ」
シュウヘイがそう言った時、突如ビーストが数十体どこからか放たれた光線を受けて爆死した。
「奴が…俺のオリジナル『ウルトラマンノア』が現れたのは」
光線を撃ったのは、銀色に輝く神秘の巨人。
ウルトラマンノアだった。
すると、突然彼らのいるフロアに自身に似た揺れが生じた。
「な、何!?」
思わず頭を覆うテファ。シュウヘイは「ほう…」と息を吐いた。
「どうやらお仲間が来たようだぞ。せっかくだ、連中にも教えてやるとしよう。そのほうがこいつにも…」
不敵な笑みを浮かべながら彼は、天井に吊るされているレーテを見上げた。
ビートスターが待ち構えているであろう月の上にたどり着いたゼロたち。
月の上はとんでもないことになっていた。
キングジョー、インペライザー、…いくつもの種類のロボット怪獣たちが彼らを待ち構えていた。その向こうにそびえ立つ、タワーを守るように。
「ジャンナインの言っていたとおりね。なんて数…」
中のモニターから外の光景を見たルイズが息を飲みながら杖を構える。ジャンボットの中ならほぼ邪魔が入ることなく詠唱ができる。
少しばかりだとしても、サイトに助力できるはず…。
「ここは我々が引き受ける。サイト君、君はあの塔へ!」
「先にいけ!!」
インペライザーと格闘しながら、ミラーナイトとグレンファイヤーが言う。
「平賀君、行って!」
「ここはオイラたちで食い止めるから!」
『彼女たちのことなら心配いらない。責任もって守ると誓おう!』
「ほら、さっさと行く!」
続いてハルナ、ゴルザたちをロボットたちに向かわせるグレイ、ジャンボット、そしてルイズが言う。
「みんな、無事でいてくれよ!」
仲間たちに鼓舞され、ゼロはタワーに向かって飛び上がり、タワーの壁を蹴破って中へと侵入した。
中は光がほとんど差し込んでいなかった。わずかな照明で部屋が照らされ、奥には威厳を漂わせた、顔を持たない鎧のようなロボットが下半身を床にうずめた状態で居座っていた。
天球ガーディアン・ビートスター。
『汚らわしい有機生命体め』
「貴様がビートスターだな。一体何を考えている。お前の狙いはなんだ!?地下世界で生きてきた先住民たちを殺すなんて、何を考えている!」
『…私は星の安全と平和を守るため、一切の障害を解除するようプログラムされている。我々を生み出した先住民なぞ、地上人と同じだ。自分たちが故郷に帰るためならば、ほかの悪質な種族と手を組み虐殺を働くことも厭わぬ醜悪な者だ』
「なに…!?」
『この世界だけではない。私は全宇宙を遠視し観察した。どの星でも有機生命体は自分たちの利益のため互いに争い、血を流し、平和を掲げてもやっていることは結局平和を脅かすばかり。
よって私は決めたのだ。全宇宙の有機生命体の抹殺を!!そして我々機械が支配することで、宇宙の秩序は保たれると!』
ビートスターは床から下半身を出し、ゼロとの戦闘準備に入る。彼が有機生命体という小さな理由で抹殺するつもりなのが見え見えだった。
なんて独善的で身勝手なことを…。きっと先住民たちは地上での暮らしを取り戻したくてこのビートスターを作り上げてきた。結局敵を殺すためのものだから褒められてことではないが、それでもただ地上の光を浴びたい、取り戻したいという願いを持ち、そのために6000年もの間地下世界で生き続けてきたというのに、ビートスターは結果的に平和を脅かすからという理由で、なんの慈悲も躊躇もなく簡単に自分の生みの親たちを切り捨てたのだ。
ゼロは、怒りをにじませた。
「馬鹿言ってんじゃねえええええええ!!!」
拳を振り上げ、彼はビートスターに殴りかかった。最初の一発をヒョイと交わし、続いて打ち込まれたラッシュパンチにもビクともしないビートスター。やはり長い時間をかけて作られたなだけあってかなり頑丈に作られていた。
続いて突き出されたた拳を両方とも掴み、へし折ろうと力を入れるビートスター。
「相棒/旦那!」
ゼロスラッガーたちが自分の意志で飛び出し、ゼロの手を掴むビートスターの両腕を切りつけ、ゼロを開放した。
「く…ぐあ!!」
だがビートスターの猛攻は止まらず、ゼロを床に叩き伏せ、転がすようにゼロを蹴りまくった。根性で立ち上がったところでも、ビートスターに放った攻撃は交わされるか受けながらされるか、その繰り返しだった。
今度こそダウンしたところで、ビートスターは手でゼロの顔を床に押さえつけ、顔の部分にある穴から電撃を放ち、ゼロを痛めつける。
「ぐぅぅぁあああああ!!!」
まずい、指から力が、だんだんと抜けていく。
『有機生命体はもろく不完全、故に破滅しかもたらさぬ!
ウルトラマン、貴様も同じだ。貴様ら一族も所詮、自分たちのいうことを聞かぬ侵略者どもを力で排除することしかできぬ偽善者だ。そんな愚か者共に、宇宙を守れるはずがない!』
「た、確かに…俺たちは…不完全な存在だ…だがな、俺たちは失敗の中から、何度だって立ち上がり、成長するんだ!」
片方のゼロスラッガーを握り、ガンダールヴのルーンが光ると同時にゼロはビートスターに刃を向け、力を振り絞ってビートスターを押しながら立ち上がろうとする。
すると、ビートスターに向けて数発のエネルギー弾が直撃、ビートスターはふっとんだ。
『な…?』
「それはロボットも同じだ!こいつのようにな!!」
立ち上がったゼロがそういった時、彼の横には一体の鋼鉄の武人が立っていた。
邪悪な赤い瞳ではなく、正義の心で溢れた金色の瞳となったジャンナインである。
クマノたちの手で、わずかな時間で復活を遂げたのだ。
『じ、ジャンキラー!』
『俺はジャンキラーではない。ジャンナインだ。ビートスター、お前に言いたいことがある』
『何…?』
『有機生命体は何も争いばかりを招くわけではない。寧ろ平和のために必死に努力する者の方が大勢いる。もう一度考え直さないか?』
『非論理的である!ジャンキラー、貴様のメモリーから探った私は知っているぞ。貴様を作った星の人間は、あの「冥王」を作ったことで自ら滅びの時を迎えたとな!!』
「何…!?」
冥王、その単語に関してはゼロもテファから聞かされていた。6000年前ブリミルが復活させ、当時の世界を死滅の危機に追いやったという忌むべき存在。
じゃあ、ジャンナインとジャンボットはもともと冥王と同じ世界で…。
『有機生命体は確かに間違いを犯してきた。だが、その過ちを正そうとする者もいることは、お前も知っているはずだろ?』
『もう一度言う。非論理的だ!排除する!』
ビートスターは体中からミサイルを発射し、ゼロとジャンナインに攻撃を仕掛ける。
ゼロと同じタイミングで、ミサイルが当たる直前で横に避けたジャンナインはビートスターを睨む。
『是非も無しか…』
〈ジャンキャノン!〉
右方向に進みながら右腕からレーザーを連射するジャンナイン。だが、いかにも重そうな体を素早く動かすことで、ビートスターはいとも簡単に全て回避してしまった。
〈ジャンバスター!〉
続いてへその発射口から強烈なビームを放つが、それもビートスターの顔から放出された電撃によってあっさりと相殺されてしまう。彼らの技が互いに相殺されたことで、爆発と煙が巻き起こる。
『無駄だ。貴様を手駒にして時、貴様のデータは全て我メモリーに記録してある。貴様では私を倒せん!』
次はこの煙に紛れてレーザーでも放つ、ビートスターのコンピュータはそう予測していた。が、それは大きな計算外だった。
煙に紛れて、ジャンナインが拳と言う名の鉄槌を振り上げ、ビートスターの顔の穴にめり込ませた。
『ガホ…!?』
なぜだ…?ビートスターはジャンナインをもう一度目視してデータを解析すると、ジャンナインの中に誰かがいるのを見つけた。
「人間にはな、倫理を超えた無限の可能性ってもんがあるんだ!」
なんと、ジャンナインの中にヒュウガが乗っていたのだ。ハルナの時と同様、彼もジャンナインの操縦者として乗っていたのである。
ジャンナインの意思ではないヒュウガの意思で動いていたため、ビートスターはジャンナインの動きを見きれなかったのだ。
「心を持たない、お前なんかに!」
今のうちにと、ゼロはブレスレッドからウルトラゼロランスを出現、宙に飛び上がって、ジャンナインがビートスターから離れると同時に投げつけた。
槍は見事ビートスターに体を貫き、止めにゼロはビートスターの前に着地してゼロスラッガーで二弾斬りを与えた。
「俺たちを裁く権利はない!」
『な、なぜ…だ』
ジャンナインとゼロから攻撃を受けた箇所から火花を散らしていくビートスター。自分が負けるとは思いもしなかったのか、若干放心状態気味だった。
『私は間違ってなど…いない…私が、機械こそ完璧…完璧である私が…機械が支配してこそ…宇宙は…平和でいわれる…のだ…』
「ビートスター、一つ忘れている」
ゼロが槍をブレスレッドに戻し、ビートスターに話しかけた。
「その不完全ない有機生命体は、失敗を繰り返して今という時代を成り立たせているんだ。今この場に、お前や俺たちが存在しているようにな…有機生命体が居なかったら、お前たちロボットもこの世界に生まれなかったんだ」
さっきまでの戦いの中での血気盛んな態度から落ち着いて話すゼロ。すると、心を持たないはずのビートスターから信じられない言葉が飛び込んできた。
『私…は…怖かった………』
「!?」
ゼロは思わずビートスターに手を伸ばしたが、その時だった。突然ビートスターの真上に黒い暗雲が巻き起こった。
その暗雲から、なんとレーテが舞い降りるように出現、ビートスターから黒く染まったエネルギーを吸い上げていき、さっきよりも禍々しい輝きをコアから放ち始めた。
そして、ビートスターは完全に機能を停止した。
「こ、これは…!?」

「ビートスター、お前の怒り・憎しみ・悲しみ…すべていただくぞ」
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