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□File8
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一方で、一日の休息を終えたサイトたちは大聖堂の地下のカタコンベに隠された武器庫に、ヴィットーリオの命令で案内を任された巫女ミケラに連れられていた。
今までロマリアをはじめとしたハルケギニアの軍はエルフたちから聖地を奪い返すために戦争を何度も仕掛けた。聖下がその6000年間の先代たちが起こしたせめてもの償いにエルフたちの方の手伝いをしている間、王族だがせめて見送りにとタバサ・ジョゼット・アンリエッタ・ウェールズ、タバサにクリスのお目付け役としてイルククゥも同行していた。
ちなみにクリスをはじめとした他の国の重要人物たちは、復興作業やらでいない。
地下で生きている先住民ヴァリヤーグからの誤解を解くため、始祖ブリミルがこの世界に来るとき、そしてヴィットーリオたちが元は大災厄の時代に別の星に逃げたとされたそのヴァリヤーグを滅ぼし、彼らに成り代わってこの星の住人になるための先制攻撃のための兵器として使っていた飛行機械を使って、地下に潜るそうだ。
カタコンベの武器庫、そこには歴代防衛チームの兵器がいくつも並ばされ、誰もがその光景に目が飛び出てしまいそうになっていた。
特にサイトと同じ地球出身のハルナなどがそうだ。
「へえ…蛮人の世界にはこんなものが作られてたのね」
そこにはルクシャナと、彼女を心配してきたアリィーもいた。地球の未知なる兵器を目の当たりにしたこともあって、ルクシャナはメ
モをとって必死にジェットビートルなどの飛行兵器を観察している。
目が妙にキラキラと輝かせながら。アリィーは呆れ返りながら彼女についてきている。まさに付き合いのいい男である。言い換えれば、いいように扱われているとも言うが。
「苦労してるんだね、君」
同情したギーシュがアリィーに話しかけた。
「ふん…そんなお前もそのようだな」
「ああ、聞いてくれ。モンモランシーは僕が彼女以外の女の子と話しただけで『浮気だ!』と言ってくるんだ。自分だってシュウヘイだのジュリオだの、頬を染めながら他の男を見つめることだってあるのに!」
「僕だってそうだ。ルクシャナは自分勝手で、僕がちょっとでも意見すれば『結婚しない』なんて言い出すんだ!そう言ってしまえば僕が何も言えなくなるのを知ってて!」
「「なんてめんどくさいんだ!!女って!!」」
いつの間にか意気投合した二人だった。今まで対立しあっていた種族同士の男がこうやって自身の不満をぶつけ会えることはとても貴重なことなのだが、なんだろう…どこか満足に喜べない間抜けな感じがしてならない。
「もう息が合ったのね…」
「ま、まあギスギスするよりいいんじゃないか?なあハルナ?」
「え、ええ…そうね。喧嘩ばかりより平和的だもんね」
ルイズは呆れ、サイトとハルナは乾いた笑みを浮かべていた。
一方で、ギーシュとアリィーとは別に呆れる光景があった。
「素晴らしい!!こんなものが存在しているとは、サイト君からいろいろ聞かされていたが、いやあ地球とは本当に凄い世界だ!」
「わかりますか?そうですよね!」
クマノとコルベール。ここにも妙なところで意気投合しているタッグがいた。カタコンベに保管されていた対怪獣兵器を見て、凄まじく興奮している。
「あなた、この妙な兵器全部に知識があるの?だったらあなたが知っていること教えてくれないかしら。」
さらにルクシャナまでこの面子に加わり、余計にヒートアップしている。
「また出たな、うちの魔法使いのくせ」
「え?あの人メイジだったの?」
ヒュウガのもらした声に反応し、気になったキュルケが尋ねると、ヒュウガが首を横に振った。
「いや、あいつは技師としてのレベルがプロ級でな。修理不可能な部品や道具を次々と修理していったから、俺はあいつを『魔法使い』と読んでいるのさ」
「なんだ…それにしてもジャンまであんなに夢中になって、まるで子供みたいね」
クスリとキュルケは、クマノやルクシャナと話を盛り上げていくコルベールを見て微笑んだ。正直機械には興味無いが、惚れた男性の可愛らしい一面を見れるならそれに越したことはないようだ。
「おいてくよ…クマさん」
「あ、おい!」
グレイの一言でおいてけぼりにされかけていたことに気づいた三人は、急いでサイトたちを追った。
ミケラがさらに奥へ進み、サイトたちもそれを追い続ける。
すると、最新部にたどり着いたところで彼らは立ち止まった。目の前にある巨大なもの、それに目を釘付けにしながら。
「これです。聖下があなたがたに託すようおっしゃっていたものは」
「これが、始祖ブリミルが乗ってきた…」
核兵器をもってしても破壊できそうにないような頑丈な白いボディの上を走る赤いラインの飛行機。始祖はこれに乗って聖地にゲートを通り、この世界に降り立ったというが、一目するだけで誰もが目を奪われた。始祖が今のこの世界では出来そうにないこの乗り物で
やってきたことが、今でも信じられなかった。
「中にお入りください」
ミケラの先導でサイトたちはその飛行機械の中に入った。船の中はとてつもなく発達した文明の香りで漂っていた。地球でも見られそうにない、高度な技術力で出来ていた。
彼らはソファが真ん中に置かれ、その前にはモニターが設置されていた。
「この箱のようなものはなに?」
「ああ、外の様子を調べるためのものです」
興味深そうに早速メモを取るルクシャナの問いに、ハルナが答えてあげた。
「でも凄い…始祖ブリミルはこんなモノに乗ってきたのね。一体どんな世界だったのかな」
「でも妙じゃない?なんでこれだけのものを作れた人が、わざわざこんな星に?」
ふと、モンモランシーが疑問を投げかける。そういえば…と誰もが同じように疑問を感じた。こんな技術を持っていたブリミルたちがなぜ難民となってこの世界に流れ着いたのだ?
彼らが話している中、グレイはモニターに触れてみる。すると、彼の額にあるミョズニトニルンのルーンが紫色の光を放ち出した。
それにまだ気づいていないらしく、サイトたちの間で会話が続いていた。
「今思えば、確かに妙だよな。それに、これだけの技術をどうしてこの世界にもたらさなかったのか」
「ヴァリヤーグも地下で身を隠し続けたまま地上を取り返そうとしなかったからな。
地上の人たちはその間にこれと似たものをいくらでも作ってヴァリヤーグたちを滅ぼすことだって出来た。にもかかわらず…この技術を使わなかった」
「もしかしたら、恐れていた?」
タバサは一つの仮説を立てた。
彼女はこう考えたのだ。優れた技術を持つほど、それを戦争に使い、やがて自らの文明を滅ぼしてしまったのではと。今までこの世界や地球を狙ってきた宇宙人たちはせっかく培ってきた技術を悪用し、最終的には目的を果たせないまま歴代のウルトラマンや地球防衛軍に敗れ去っていったのがいい例だ。
『そのとおり。私のかつての主は自分の故郷の技術が悪用されるのを恐れていたのだ』
「そうなのか…って」
今の、誰の声だ?サイトは辺りを見渡した。さっき聞こえた声が聞き覚えのないものであることに気づくのに時間がかかってしまった。サイトがルイズにハルナに視線を向けても首を横に振った。今のはいかにも融通が利かなそうな男の声だ。さすがに女性ではない。
ウェールズも、レイナールもギムリもマリコルヌもヒュウガにグレイたちも首を横に振った。
『私だ』
また声がサイトたちの頭上にこだましたように響く。
一体誰の声なにだ?『私だ』なんて一言で言われても、ぶっちゃけ誰だかわからない。
『いつまで辺りを見渡しているんだ。君たちの乗っている船、それが私だ』
「あ〜なるほど船ね…ってえええ!!!?」
「「「船が喋ったあああ!!?」」」
サイトたちの乗っているその船の中でなん十人分にも及ぶ凄まじい絶叫が響いた。
「び、びっくりした…ちょっと触ってルーンが光ったと思ったら…」
グレイはいかにも驚いた様子で、身をこわばらせている。
『君のミョズニトニルンに反応し、私の緊急起動プログラムが作動したのだ。
私の名は「ジャンバード」。我が主人ブリミルをこの世界に運び、守護した鋼鉄の武人だ』
「なんか泣けるで…初めて俺っちが喋った時、だあれも驚かねえんだもん…」
喋る剣デルフは、『しゃべる無機物』という点ではジャンバードと変わらないのに、どうしてこんなに反応に差が広がっていたことに疑問を抱き、ちょっぴり拗ねた。
「鋼鉄の武人…ジャンバード。それがあなたの名前なのね」
『その通りです。ミス』
ルイズに対して急に敬語を現したジャンバードにサイトは一言言う。
「急に敬意を評したな…」
『当然です。私の主人、ブリミル様のご子孫にあらせられるのだから。そこにいる紫の髪の女性と、隣におられる金髪の青年殿も、双子らしきその青い髪の少女たちも、始祖の血を受け継いでいる存在。私がこの時代において主人として崇めるべきお方だ』
紫色の髪の女性と隣にいる金髪の青年に双子とみられる青い髪の少女、それは紛れもなくアンリエッタとウェールズ、そしてタバサとジョゼットの姉妹ことを表していた。
「わかるの!?」
『私は目視しただけで相手の情報を読み取ることが可能なのです。あなたの横にいる青年が何者なのかも、たった今分かりました』
「!!」
目視、つまり相手を見ただけでサイトの正体さえ見切ったのだ。
「わかるのか?彼が何者なのか」
ギーシュが尋ねる。
『ああ、君は…M7星雲人と地球人が一つとなった存在で、彼女の使い魔ガンダールヴ。違うか?』
「ジャンバード。お前は、お前の主人が生きていた頃の事覚えているか?」
ふと、サイトは尋ねてみたかったことを言った。
ずっと気になっていたことがあった。確かにガルト星人の策略でブリミルたちとヴァリヤーグが争いを始めたのだが、それがどうしてエルフとの対立にまで発展したのか。
『………だめだ。メモリーの一部が壊れてしまっている。おそらく、ガルト星人があたかもこの世界の人間が侵略者と見せかけるために私を利用した時、私の感情を封じる際に記憶メモリーから根こそぎ過去の記録を消したのだ。証拠隠滅のためにな。
なんて無礼で不届きな輩だ。それ以上に、ブリミル様のご子孫たちを私の手で危険に晒してしまったようなものだ』
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