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□File7
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「……」
うっすらと目を開け、テファを起き上がった。見たところ、ここはオストラント号の寝室ではないようだ。いつの間にか、自分はここの運ばれたのだろう。ズキっと右肩から痛みが走り、彼女は咄嗟にその箇所を押さえた。
どうしてここに傷を負っているのか?記憶の糸を探って彼女は思い出してみた。
「!」
そうだ。自分はやっと目を覚ました彼に…。恐怖が彼女の心に芽生え、彼女は思わず頭を覆った。
『お疲れさん』。その一言を行った時の彼の顔は、自分が知っている彼のものとは大きくかけ離れていた。邪悪さしか感じさせられない冷たい笑み。
まるで、ダーラムとの戦いで見せたあの恐ろしい姿を思わせた。だが、あの時は少なくとも自分を傷つけようとまではしなかった。
ネフテスでは自分を命懸けで守った。思いを告げてくれた。なのに…。怖い。自分を撃ったあの時の冷笑が恐怖の源となって、彼女の心を支配した。
「テファ、いる?」
その声に彼女はビクッと身を震わせた。入ってきたのは、サイトとハルナ、そしてルイズの三人だった。思わず布団で身を隠した彼女は、恐る恐るベッドから立ち上がる。
「傷、大丈夫ですか?」
「え、ええ…ちょっと痛むけど」
「なあ、テファ…目覚めたばかりで悪いけど…」
聞きづらそうにサイトがテファに尋ねる。尋ねられた彼女は、とても言えそうになかった。
辛いかもしれないが、それを承知で話を進めようとルイズが尋ねてみた。
「…酷かもしれないけど、あなた気を失う前に撃たれたんでしょ?あいつに…シュウヘイに」
「…………」
彼女は何も言わなかった。思い出したくない、認めたくない。そんな彼女の気持ちが顔に現れている。
「本当なのね…」
「そんな…嘘だろ!?」
彼女の口からも、信じられない事実を告げられ、サイトは驚愕した。
「テファ、嘘だろ?なんで君までそんなこと…」
「……………私だって、私だって!」
サイトに詰め寄られた彼女は、沈黙を破った途端泣き叫んだ。
「私だって!彼が私を撃つなんて、信じたくない!!信じたくないよ!!」
「テファ…」
「自分が傷つくことさえ構わずずっと命懸けで守ってくれて、一緒にいてくれて…辛い過去とも向き合って……なのに…」
一年半ずっと一緒にいて、過去も知って、彼のすべてを知った。彼と自分に確かな絆があったと思っていた。なのに…。
裏切られた。
自分の方を貫いたたった一発の銃弾が、それを物語っていた。彼女のように純粋な人からずれば、裏切りなんて、どんなに小さくても一度味わえば二度と人が信じきれなくなる可能性だってある。
「私、これから何を信じればいいのかわからない…わからないよ…」
両目を手覆い、必死に涙を抑えようとするが、溢れる涙が止まることを知らない。
「テファ…」
「ティファニアさん…」
ルイズとハルナもつらそうな表情を浮かべずにはいられない。
「テファ、それは違うと思う」
声を柔らかく、優しげにしてサイトはもう一度テファに言葉を発し、テファは涙を拭きながら顔を上げた。
「本当にシュウヘイが君を撃ったことには、きっとなにか理由があるはずだ。今までずっと一緒にいた君なら、何か心当たりはないか?」
「心、当たり……そういえば!!」
何かに気がついたように、彼女は目を見開いた。
あるとすれば、たった一つだけある。
以前、バラバラになったルイズの心を集めようと、ウェザリーら闇の勢力が待ち構えていた、リシュが作り出した仮想世界で、彼のふるさとを模した世界を訪れた時。
「あの時、仲間から裏切られた幻想のショックで、確か…」
「彼は自分を失って、暴れだした…ってことですね?」
ハルナが確認すると、テファは頷いた。
「ええ…ただ、あの時は私の言葉が届いてたのだけど…」
「そうか、ありがとう」
サイトは頷いて礼を言った。
「俺たちは明日、エルフの人たちがこっちに迎えさせてから、地下の先住民たちの誤解をときに行くよ。その間アニエスさんたちが姫様の命令でシュウヘイを探してくれてる。テファ、君はどうする?
根拠は無いけど、もしかしたらあいつ先住民のところにいたり、なんてこともあるし」
「……」
テファは顔をうつむかせた。
「ごめんなさい。少し、考えさせて」
やはりまだショックから抜けきれていなかった。
と、ここでルイズがサイトに自分の方を向かせて言った。
「辛いことが何度も続いたから仕方ないわ。しばらく一人にさせてあげましょう。そうすれば、少しは気も和らぐはずよ」
「それがいいと私も思いまず。ただ、あまり悩み過ぎないでくださいね」
ハルナもルイズの考えに賛同し、サイトもこの考えを承知することにした。
「…わかった。二人がそういうなら、今は俺もそっとしておく」
「三人とも。ありがとう」
「でも、明日までに返事してくれ。答えが来なかったら、俺たちは先に地下に行くから」
「わかったわ」
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