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□File6
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外に烈風カリンことカリーヌが外で待っていると聞き、ルイズたちは城の庭園に来た。とその途端、ブオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!と凄まじい風が巻き起こった。
「ひええええええ…」
誰もがその美しい容姿とその顔から放たれし眼光から怪獣何体分にも匹敵する威圧感に圧倒されていた。
かつての『烈風の騎士姫』カリンがそこにいた。幻獣マンティコアから降り、娘の方をジロリと見つめる。
「ルイズ…」
「か、母様…」
「あなた、何をどう破ったのか、母に教えなさい」
「その…むむ無断で…」
親の恐怖とは、いかなる家庭でも子供を恐怖に陥れるというが、カリーヌの場合は次元が違う。閻魔でさえ黙りそうな、『地獄』だった。
「聞こえないわ」
「無断で、国境を…」
瞬間、ルイズは地上200メイル(地球単位でメートル)舞い上がった。実にウルトラマン約四人分の高さまで舞い上げられ、枯れた木の葉のようにヒラヒラとゆっくり落ちて行った。
もうルイズの神はボサボサで乱れきっている。
「こ、国宝を破ったのは深くお詫びします!でも、仲間を助けたかったのです!」
「多少手柄を立てたからと言って調子に乗っては参りません。いかなる事情があっても国宝を破ることが良いわけではない。結果、他人さえ不幸に招くのです」
「…!!」
正直痛いところを突かれたとルイズは思った。現に、この場にいない人物がすでに三人いる。シュウヘイ、テファ、そして自分たちの前からほぼ死亡したような姿さえ見せた自分の使い魔、サイト。
「何も言わないということは、その通りだったというわけですか」
とその途端、ルイズの制服の肩の辺りが切れた。すでにカリーヌは大竜巻『カッター・トルネード』を起こし、その竜巻はルイズの方に迫っていた。
「くっ…!」
「ルイズ!」
痛みで膝を着くルイズを見て、見ていられなくなった仲間たちは一斉に駆け寄った。
杖を構え、彼女を庇うようにキュルケとコルベールは炎の玉と炎のヘビ、ギーシュはワルキューレを数体作り出して、カリーヌの起こす竜巻に応戦した。
「フレイムボール!」「炎のヘビよ!」「ワルキューレ!盾となりて我が友を守れ!」
凄まじい竜巻が迫り、ワルキューレが彼らの盾となる。しかし、敵軍の大半をたった一人で遣って退けるほどの相手に長く持つはずがなかった。だが、今度はモンモランシーの水魔法、レイナールとギムリの風魔法がカリーヌの竜巻に向かっていく。
「学生数人ばかりが庇って何になる?自分が傷つくだけだ…」
自分の力を過信しているわけではないが、カリーヌは自分の力が彼ら全員を合わせた力よりも勝っていることは自覚していた。しかし、彼女にはたった一つの誤算があった。
自分の愛娘の、『今の』能力を侮っていた。
ルイズ以外の面々を吹き飛ばし、もうすぐルイズに迫るところで、突然自分の起こした竜巻がかき消されたのだ。仲間たちが時間を稼いでる間に、『ディスペル』の呪文を唱えカリーヌの竜巻をかき消したのだ。
「はあ、はあ…」
ルイズは精神力を切らした影響でその場に息を切らしながら膝を着いた。しかし、カリーヌにはまだ精神力が十分残っていた。
「待ちなさいカリン殿!いくらルイズが規律を破ったとはいえ、血
の繋がりを持つ親子が争うなど悲しすぎます!杖を納めなさい!」
アンリエッタがカリーヌとルイズたちの間に割り込む形で飛び出したことで、ようやくこの場は収まった。

「虚無…ですか」
城の客室にカリーヌ、ルイズを招いたアンリエッタをウェールズは、ソファに二人を隣通りで座らせ、事情を説明した。
ルイズの傷はハルナの治療やモンモランシー、アンリエッタの水魔法『ヒーリング』でも完全に治せず、まだ傷がいくつか残っている、この場にいない面々は現在カリーヌから受けた傷の治療で別室に待機していた。
カリーヌは、いつもの侯爵夫人の振る舞いに戻っていた。
「ええ、そうです。ルイズはレコンキスタとのタルブでの戦にて虚無に目覚めたのです」
「信じられません、まさかわが娘に伝説の系統が宿るなど…」
「ええ、ですが事実です」
「確かに、あの時私の竜巻を消した魔法、今まで見たことのないものでした。本当なのですねルイズ」
「…はい」
ふむ、とカリーヌは息をついてアンリエッタをウェールズの方に向き直った。
「では、お二人はこれからわが娘をどうするおつもりですか?先ほど、女王陛下、あなたの妹君に迎えるとおっしゃられたそうですが」
「ええ、彼女には常に大きな責任が常にのしかかっていることを忘れないための措置です」
アンリエッタは答える。
「以前、ウェールズ様の祖国を取り返すこととなったレコンキスタとの戦のように火矢同然の扱いになさることになれば、私は一族郎党、あなた方に杖を向けねばなりませぬ」
今かリーヌが言った言葉は、侯爵夫人としても烈風としての言葉でもなかった。母としての、娘を思う言葉だった。
「力とは人を惹きつけます。たとえば、ここ最近我々人間を守るためにわが身を犠牲に戦うウルトラマンに、国民たちが信頼を寄せるように。もし陛下が道を踏み外してもルイズがそれを止められるのでしょうか?」
「ええ、おっしゃる通りです。ですから私たちの手元に置きたいのです。その力を狙う輩からルイズを守るために。そしてもしも我が道を誤った時、その道を正せる真の友人に止めてもらうために」
「…私はもう古い貴族ですね。物事も単純、名誉や忠誠を待俺さえすればよかった。しかし、今のあなたたちの姿を見て、もう時代が違うことがわかります。古い正義、古い価値観はもうじき朽ち果てる…」
カリーヌかルイズの方に向き直った。
「『ゼロ』と呼ばれていたあなたが、気づかない間に大きくなりましたね。まだこの母に逆らう勇気までは持っていないようですが。ルイズ、いつでも帰ってきなさい。あなたの家は、いつだってあのヴァリエールの領地なのです。あなたの父と姉たちも、あなたの味
方です」
「母様…」
「それまでに表面状の厳しさしか示せず、あなたを甘やかした父様をみっちりしごかなくては」
サラッと身震いせざるを得ないことを言ってカリーヌは立ち上がった。
「我が娘を、よろしくお願いします」

それから数日、ついにサイト、シュウヘイ、テファの三人の捜索が始まった。
しかし、僅か三人のために何百もの兵士は動かせないので、ギーシュらUFZと、平民で構成されたアニエス率いる銃士隊のうち数人のみで捜索することとなった。
有力な情報がすぐに来るはずもないのが普通だ。しかし、基地でハルナがコンピュータで怪獣のどのエネルギーを探知しているとき、気になる反応を複数発見した。
「これって…」
「どうかしたのかい?」
ギーシュに続き、ルイズやタバサも集まった。あの後、キュルケ、タバサ、そしてコルベールがUFZに参加した。サイトのように自分たちも体を張らなくてはと悟ったのだ。
「微弱ですけど、生命反応がある。それも人間より高いエネルギー
値で、四つです。もしかしたらこれらの中に…」
コンピュータの画面に、ガリア付近に一つ、もう一つはゲルマニアの方、残った二つは、岩山の立ち並ぶ地域に隣接しているように点在している。
「よし、聞こえたかUFZ!」
ギーシュが隊舎中の仲間たちに呼びかけ、それに応えるようにマリコルヌ、レイナール、ギムリが立ち上がる。
「出動!」
「「「了解!」」」
まず彼らは、隣接した二つの反応を追ってウルトラホーク、オストラント号を発進させた。
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