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□File4
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そう、ゼロの光線技『ワイドゼロショット』だった。ゼロは光線を辛うじて避けようとしたが、肩に掠れて当たってしまう。
「ふふふ、それだけじゃないわ…」
シェフィールドが不敵に笑ったと同時に、次に放ったものは、炎を纏った蹴り技だった。
〈ウルトラゼロキック!〉
「ヌウウウ!!」
「グハ…!グウァ…」
胸元あたりを、思いっきり蹴られてしまった。肺がつぶれそうな痛みに息が途切れ途切れになる。
「もう一度、ワイドゼロショットを撃ちなさい!」
シェフィールドの指示通り、ゼロキラーは再び黒く染まりかけた光線を放ってきた。同時にゼロも同じ光線で応戦する。
〈ワイドゼロショット!〉
光線はしばらく互いに押し合ったすえ、爆発して消滅した。だがゼロキラーの攻撃はまだ終わらない。今度は黒く鈍った光で構成された二本のブーメランを二刀流の短剣として手に持ち、ゼロに襲いかかってきた。
「平賀君のゼロスラッガーまで、コピーしている…!」
「相棒/旦那!」
「わかってる!」
ゼロもゼロキラーのようにゼロスラッガーを両手に持ち、迫りくるゼロキラーの凶刃を受け止めていく。
「ダ!ジュ!デュア!」
ギン!ガキイイン!!!凄まじい金属音はその戦いを見届ける者たちからも遠く離れた場所にまで届くほど響いていた。ゼロの攻撃を次々に防ぎ、反撃に一太刀振ってもゼロがそれを防ぐ。両者の力はほぼ五分に見える。しかし、ゼロキラーがゼロの一瞬のすきを突い
て背後にまわり、かぎ爪でゼロの肩を切り裂いた。
「ウワ!?」
怯んでいる間にまた一太刀降ろされた剣を何とか受け止めをしたが、脇腹を蹴られて突き放される。その間もない間、エネルギーを凝縮された炎のエネルギーボールが、ゼロに襲いかかってきた。
〈メビュームバースト!〉
このゼロキラーは、今までの超人ロボットたちが吸収した技でさえ使うことができたのだ。そしてまた、僅かな空きもなくウルトラ兄弟最高クラスの光線がゼロに直撃した。
〈M87光線!〉
「グアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
前呑める形で、ゼロは両手と膝を着いてしまった。ダメージが凄まじすぎて、カラータイマーも点滅を開始している。
ピコン、ピコン、ピコン…
「はあ、はあ、はあ…ゾフィーやメビウスの技まで、使ってきやがった…か」
この姿を保つまで、あとどれくらいだろうか?ゼロ、危うし!
「あなたの負けね、ウルトラマンゼロ」
これであの方も喜ばれる…満足げにシェフィールドは笑った。このまま負けてしまうのか?
だが、それを阻むように突然ゼロキラーの足元の地面が高熱でマグマのように溶けだし、ゼロキラーは足を捕られてしまう。その隙に炎の玉、風の刃、そして岩の礫がゼロキラーに襲い掛かった。炎と風に怯んでる間にゼロキラーを岩の礫が山を作るようにゼロキラーを包み込んでいく。
岩の礫はギーシュ、炎の玉はコルベール、キュルケがゼロキラーの足元をぬかるませ、風の刃はレイナールが放ったものだった。
しかし、ゼロキラーは岩の中からその怪力で、いとも簡単に這い出てきた。
「サイト!」
「…?」
その声に、ゼロは反応して顔を上げた。仲間たちの声だ。
「正直驚いた。君がウルトラマンだったことは」
とレイナール。続いてマリコルヌが言った。
「最初は始祖ブリミルの遣わした勇者かと思っていた。でも違った!僕たちの勝手な思い込みだった!」
「ルイズとハルナの言うとおりね。あなたは全く関係のないはずのこの世界を、そしてその世界ではほんの小さい存在であるだけの私たちを命がけで守ってくれた。それを演技だなんて思ってないわ」
キュルケも懇願するように言う。シエスタも黙ってはいられなくなって叫んだ。
「いつかサイトさんからウルトラマンのことを聞いたときサイトさんは言いましたよね。『人間が好きだから、人間を信じてるからウルトラマンは戦うんだ』って!」
「だったら、死なないで。あなたのように優しいウルトラマン、いえ人が戦いで死ぬなんておかしい!!認めない!」
最後に、タバサがいつもの落ち着いたイメージとは大きく離れた大声でゼロに言った。みんなの思いが、この時一つになったのだ。
(みんな…)
久しぶりに泣きたくなった気がする。自然と握り拳が彼の両手で出来上がっている。
(恵まれてんな相棒、こりゃ意地でも負けられないな)
(ああ、絶対負けらんねえ!!)
仲間の激励、それは再びゼロを立ち上がらせる支えとなり、彼を奮い立たせた。
「ジュ!」
ゼロとゼロキラーの攻撃が互いにぶつかり合う。続いて二人のパンチが放たれたり受け流されたりと続いた。だが、ゼロは相手の隙をよく見極めようと集中、ゼロキラーの僅かに見せた隙をついて脇腹を思いきり蹴った。
「ヌガア!?」
今だ!ゼロはゼロキラーの背後に回り込むと、ゼロキラーの左腕を捕まえ、乱暴に捻った。グキ!
「グァ!?」
ゼロキラーの左肩から、何かが折れたような音が鳴る。今のダメージで怒り狂ったのか、ゼロキラーはゼロの腹に突っ込む形で彼を捕え、押し出した。後ろには仲間たちがいる。押し出されないようにゼロは足に力を入れて踏ん張った。一度こいつを離して距離を置こ
うと思ったが、必殺技がことごとく通じなかったことを思い出して彼もゼロキラーを取り押さえた。これまで使ってきた技とは別の方法、それもこの状態を維持したままで…。
(……やっぱ、この手しかない!みんな…悪い!この手だけは使いたくなかったけど!)
ゼロはカラータイマーを通して、ウルトラゼロブレスレットにエネルギーを少量流し込んだ。
瞬間、ゼロの体が灼熱の炎に包まれた。その熱に耐えられないのか、ゼロキラーはゼロから離れようとしているが、ゼロは力強く離さない。
「なに?サイトの体が燃えてる!」
「あれは!!!」
ハルナは今、ゼロが使おうとしている技の恐ろしさを知っていた。ウルトラ戦士の技の中で禁止技にも禁止されている技。
「だめ!その技を使ったら!」
「どうしたのだね!?」
彼女がここまで取り乱すのは、ただ事ではないことと見切ったコルベールは、ハルナに尋ねた。あの技は何なのか、知っておかなければ。
「ウルトラダイナマイト…あの技はウルトラマンたちの技の中で使用を禁じられている技です」
「それほど威力がおそろしいの!?」
ルイズもハルナに詰め寄った。
「威力はもちろん高いです。でも、恐ろしいのは威力じゃない…」
次にハルナが言った一言で、誰もが顔を真っ青にした。いや、しない方がおかしかったと言えた。
「あの技は、自爆技なんです!!下手をしたら、使用者が死んでしまう!!!」
「なんですって!?」
「あの技を最初に考案したウルトラマンは、ウルトラ心臓という特殊な臓器を体内に持ってたから使うことができました。だけどゼロは、平賀君はそれを持っていない!」
つまり、彼が死亡する可能性が高いというのだ。
「だ、ダメだサイト!君は言っただろ!名誉のために死ぬなんて馬鹿げていると!」
「私からもお願い!知り合い、いえ仲間が目の前で死ぬなんて目覚めが悪いなんて程度じゃ片づけられない!」
「サイト、止すんだ!」
「サイト、止めなさい!ご主人様命令よ!」
「平賀君止めて!!!」
仲間たちの悲痛な叫びが轟く。
「いかん!もう間に合わない!早くオストラント号に乗るんだ!!」
コルベールはもう爆発まで時間がないと悟り、みんなをオストラント号に誘う。全員後味が悪そうにゼロを見つめるが、現実を見つめやむを得ずオストラント号に乗り込んだ。ルイズとハルナはそれでも留まろうとしていたため、仲間たちに無理やり引っ張られる形で
乗った。
〈ウルトラゼロダイナマイト!〉
「ダアアアアアアアアアアア!!!!」
ズオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
凄まじい大爆発が、破滅の光と共に辺りを包み込んだ。
…………
「う…」
甲板の上、眩しい光の影響で目を閉じたルイズたちは目を開けた。
「サイト、サイトは!?」
全員地上の荒野を見渡した。しかし、ゼロの巨体は見当たらず、しかもサイトの姿さえ見当たらなかった。
仲間たちは地上に降りてサイトを探し始めた。実際生存率は決して高くないが、かつてウルトラマンメビウスがウルトラ心臓の代わりに自らの変身アイテム『メビウスブレス』でウルトラダイナマイト(メビウスの場合『メビュームダイナマイト』という)を使用し、反動によるダメージはタロウよりも大きかったが辛うじて生き延びた。ならば彼もブレスレットを代わりにしたことで、生き延びたはずだ。
だが、見つかったのは…
「そんな…」
彼の愛剣デルフリンガーと地下水、そしてウルトラガン。これだけだった。
真っ先に見つけたハルナは泣き崩れた。
滝のよう彼女の涙は流れ落ちた。
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