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□File4
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ようやく安息の場所に帰れる、マリコルヌとイルククゥの声が上ずっていた。その時、サイトは自分たちが辿ってきた道を振りかえった。残してきた友と彼の守る少女を思いながら…
(シュウヘイ、信じてるから必ず帰ってこいよ。俺もまだやるべきことを全部終わらせるまで、絶対に死なないからな)
とその時だった。彼らの乗る馬車の頭上が暗くなった。
「あぶねえ!」
「「わああああ!?」」
「「「きゃあ!?」」」
危機を感じたサイトは急いでギーシュとマリコルヌから手綱をひったくり、自分の方に引っ張って急ブレーキをかける。
危ないところで、馬車のほぼ目の前に巨大な何かが落ちてきた。砂煙が晴れ、彼らが顔を上げると、ワインレッドの肌の上に金の鎧を身にまとう巨人が立っていた。その肩にシェフィールドが乗っている。
「あれは、メビウスキラー!?」
サイトは実際に見たことがある。ウルトラマンメビウスと全く同じ技を使って本物を苦しめたヤプールの超人『異次元超人メビウスキラー』、またそれの元だった対ウルトラマンエース抹殺ロボット『エースキラー』に酷似していた。
あれを作れるのは、たった一人しか思い当たらない。シェフィールドがミョズニトニルンの力で稼働させているのは理解できる。だが、なぜシェフィールドが『エースキラー』を持っているのだ?
まさか、あいつは…
「正解だけど、少し外れね。異次元超人『ゼロキラー』よ!さあ、このままだと間違いなく全滅よ。虚無の担い手、まずはあなたの力を見せてもらいましょうか」
「シルフィード!」
「わかったのね!」
そうはさせないと、タバサが飛び出した。それに応えイルククゥも飛び出し、本来の姿であるシルフィードに変身、タバサを背に乗せて空に飛びたつ。直ちに空気中の水分を固め、氷の槍を作り出し放った。
「ジャベリン!」
だが、その攻撃は届かなかった。ビターシャルの時のように見えない壁に似た何かに阻まれたように、氷の槍は跳ね返された。
「これは、あのエルフの時と…」
「シャルロット姫、このゼロキラーに立ち塞がるとはさすが。残念だけどあなたに用はないの」
シェフィールドは馬車に乗っているルイズとサイトを見た。彼女の狙いはまぎれもなくあの二人だった。
ゼロキラーは、馬車に向かって鋭いかぎ爪を振り上げようとする。
「ワルキューレ!」
「フレイムボール!」
それを防ぐべく、ギーシュはワルキューレを、キュルケは炎の玉をぶつけた。一度は炎の爆発に包まれたゼロキラーだったが、二人の連携魔法もカウンターによってかき消されてしまう。
「くそ…」
すると、空からオストラント号がやって来た。操縦していたコルベールのレビテーションの魔法で彼らは馬車ごと浮き上がり、オストラント号の上に着いた。
「大丈夫かいみんな!?」
「サイトさん!無事でよかったです!」
「コルベール先生!シエスタにレイナールにギムリ!」
一同は一か所に集まった。
「あれ?シュウヘイとテファがいないみたいだけど」
レイナールはシュウヘイとテファの二人がいないことに気が付き、サイトに尋ねるが、今はそれどころではない。シェフィールドの操るゼロキラーがもうすぐそこまで来ていたのだ。
「伝説のガンダールヴ。そろそろ切り札を出したらどうなの?」
「切り札…?」
「そう、あなたの本当の姿よ」
正体、それを聞いてルイズとハルナは悟った。あの女、すでにサイトの正体に気付いていたと。
「やめなさいシェフィールド!!」
しかし、シェフィールドは躊躇うことなく、真実を明かした。
「もうそろそろあなたの主人とあなたの…ウルトラマンゼロの力を見せてちょうだい!」
すでに正体を知っている者以外は驚きを隠せなかった。この面子でガンダールヴの力を持つのはただ一人。それをシェフィールドは「ウルトラマンゼロ」とはっきり言った。
「まさか…」
ギーシュ、モンモランシー、キュルケ、タバサ、マリコルヌ、イルククゥ、シエスタ、レイナール。正体を今まで知ることのなかった者たち全員サイトを大きく開かれた目で見た。
「サイトさんが、ウルトラマン?」
いや、そんなはずない。確かウルトラマンゼロは自分が初めて見たとき、サイトとゼロ、はっきりと二つに分かれていたではないか。
「…」
タバサも彼をじっと見た。確かにサイトが剣を振って戦うとき、彼の動きとゼロの動きが若干似ていたため、違和感を密かに感じていたが、本当に彼が…?
「…最初、俺たちは別人だった」
サイトが仲間たちの方を見て、沈黙を破って説明した。正直化け物として見られてしまうのでは、と不安に感じていたが、もう話さなくてはならない。死に際のバードンの反撃でルイズを庇い、瀕死の重傷を負ってしまったとき、ゼロと完全に一体化したことで復活し
たこと。それ以降、彼は自らの正体を隠したままずっと戦ってきたこと、全部話した。
「見ててくれ、みんな。それで判断してくれ。こんな化け物じみた力を持つ俺を、これからも仲間としていてもいいか、決めてほしい」
サイトはゼロキラーの方を向き、ブレスレッドからウルトラゼロアイを出現、装着した。
「ジュワ!」
たちまち彼の姿は頭から銀色のマスクに覆われ、ゼロスラッガーに変化したデルフと地下水に刻みつけられた肌も赤と青の模様に染まり、完全にサイトとしての姿から、今までこの世界のために戦ってきた青の超人に姿を変えた。
「デュ!」
変身直後、さっそく殴りかかるゼロ。しかし、変身した彼の鉄拳さえもカウンターによって防がれ、逆にゼロは殴り飛ばされてしまう。
「グァアア!」
「残念ながらウルトラマンでもこの装甲は貫けないようね」
「娘っ子!あれもカウンターがかけられてやがる!相棒の手にディスペルをかけるんだ!」
ゼロスラッガーからデルフの声が響き、それを聞き届けたルイズは頷く。
「わかったわ!」
「僕たちも手伝おう!」
「ええ!」
正体が明かされたことはもう気にしてられない。ルイズは瞼を閉じ、呪文を唱え始める。ギーシュ、キュルケ、タバサ、マリコルヌ、コルベールも攻撃魔法でゼロを援護しようと杖を手にとった。が、口を挟むようにシェフィールドはとんでもないことを言い出した。
「侵略者に手をかすなんて、そうとうあの巨人にうつつをぬかしたようね」
「侵略者ですって…」
それを聞いて一同に衝撃が走った。ただでさえサイトがゼロであることでさえ受け止めがたいことなのに、急にとんでもないことを言い出したのだ。
(あいつ…)
何とかゼロキラーの攻撃から巧みに動いて回避するゼロは、シェフィールドのあくどい手口に怒りを感じ始めていた。
「あの巨人は自分がこの世界を乗っ取るために飛来した極悪人よ。今までの怪獣や異星人もこいつが仕組んだこと。自分を英雄に見せかけ、世界を自分の手中に収める。なんて悪質な化け物かしら?」
………
彼らは思わず杖を降ろした。確かにウルトラマンは自分たちから見ればあまりにも得体が知れなかった。どことなく現れ、自分たちを守る。だがそれが本当に自分たちのためなのかまでは明かされていない。
「シャルロット姫、自分の正体を隠し、この世界の人間から大事なものを奪い去っていく彼こそ『裏切り者』の名にふさわしくありませんこと?あはははははは!!!」
シェフィールドは彼らからウルトラマンへの信頼感を消し去ろうというのだ。出任せも度が過ぎている。しかし、誰も言い返せなかった。先ほども言った通り、ゼロが本当に自分たち人間の味方であるという、根拠がない。今まで助けてくれた行動も演技ではないなんて確証もない…。
だが、それを遮るようにルイズが杖を振り上げた。彼女と、ハルナだけはシェフィールドの話を真に受けていなかった。
「ディスペル!」
ゼロの拳に光が灯った。ルイズの『ディスペル』の力が宿った彼の炎の鉄拳が、ゼロキラーに炸裂した。
〈ビッグバンゼロ!〉
「デアアアアアアアア!!」
「ヌウ!」
虚無の力を込めた攻撃は、ゼロキラーのカウンターを貫き、そのゴールドの鎧に直撃する。
これでようやくフェアな戦いができる。
その時、ルイズハルナがみんなの方を向いた。
「あんたたち、援護もしないで何ボヤッとしてるの!!私も最初はウルトラマンを信じてなかったけど…少なくとも信じられる要素があるじゃない!
あいつは、私たちのサイトだって!!」
「みなさんは、今までゼロが、平賀君がどんな思いを秘めて戦ってきたって覆っているんです!あんな女の話を信じて、ウルトラマンを信じないっていうの!?今まであなたたちをずっと助けてきたじゃないですか!!」
身構えるゼロに、ゼロキラーは左手のかぎ爪を振り降ろし、ゼロはそれを受け止める。さすが、ヤプールの作りし超人。凄まじい力に押されそうだ。ゼロキラーは自分のかぎ爪をつかむゼロの手を振り払い、キックで突き放す。続いて放たれたゼロのハイキックを受け
止め、ゼロとのつばぜり合いが始まる。パンチを受け止め、放ってと繰り返される。そんな中、シェフィールドは少し離れた岩の上に立っていた。
「もう小手調べは十分ね。ゼロキラー、お前の力を見せしめておやり!」
人差し指と中指を合わせ、ビッ!と軽く払ったようなサインを送ると、ゼロキラーは次の瞬間驚くべきものをゼロたちに見せつけた。
両腕を逆L字型に組み上げ、必殺光線を放ったのだ。
「グアアアアアアアアア!!!」
「あれは、ゼロの光線技と同じ!」
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