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□File16
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気づかれて不味かったのか、ブルードは彼らを突き飛ばして逃げ出す。
「っ…待てよ!!」
サイトが怒鳴り声を散らす中、基地の一階にブルードが脱出目的で降りてきた。
「あ!こいつ…!」
ルイズがそれにいち早く気づいたが、彼女も突き飛ばされ、壁にぶつかってしまう。標的のブルードはそのまま外に逃げ出した。それをシュウヘイが追っていく。
「ルイズ!」
「った…」
床に手を痛そうに押さえて座り込む彼女に気付いたサイトは彼女の元に急ぐ。壁にぶつかったせいで左手の甲に怪我を負っていた。
「ま、待ちなさい!」
今の一発で起こったのかルイズは手の痛みをこらえながら立ち上がってブルードを追っていった。
「おいルイズ!」
「待って!」
引き留めるように言ったサイトとテファだったが、彼女に彼らの声は聞こえなかった。
「あんにゃろ…!」
サイトとテファも、先に向かった二人の身を案じながら帰途を飛び出した。

一方、シュウヘイとルイズは逃げ出したブルードを追っていた。現在学院のすぐ近くにある森の中にいる。ここでブルードを見逃してしまったのだ。
「なんであんたがいるのよ」
「こっちが聞きたいところだ。なぜ怪我人が出しゃばる?」
「決まってるでしょ!貴族の学び舎に忍び込んだ輩、それも乙女の肌を傷つけた不届き者を討ち取るのよ」
「…んで、殴り返すと?」
まあ、女子の肌は大事だから大事にしろと先輩の女性隊員に言われたことがあったりするのだが、だからって無謀に出しゃばることもないだろうが…。
「当然でしょ!」
そのセリフと共にいきなり彼女は少し離れた方の木に飛びついた。その木の向こうには、ブルードが着ていた学生服の後ろが見えていたのだ。しかし、彼女がそれを手に取った瞬間学生服は木からズルッ!と引きはがされた。
「あれ?」
と、次の瞬間横からブルードが現れ、彼女の沼蔵を捕まえ、口から紫色の息を吐き出した。
「っう!!」
「ち!そいつをおろせ!」
ブラストショットから放つ波動弾をブルードの、ルイズを捕まえてる腕に撃ち込み、ブルードは腕を痛めてルイズを落としてしまう。ブルードに息を吐かれたルイズは意識が飛びかけていた。
「この…甘い…匂いは、さっきの…」
確かテファと会話していた時にもこの匂いを嗅いだ。やはりさっき女子生徒に襲い、シュウヘイに抹殺されたのはこいつの同族だった。
「おい!しっかりしろ!」
ルイズを抱え、自分の後ろに運ぶシュウヘイ。
その時、彼の目の前にいるブルードの頭上に、黒く渦巻いた暗雲が現れた。そして、真下にいるブルードに邪悪な光を浴びせだす。
「アンノウンハンド…石堀か」
ブルードはアンノウンハンドの放射する光を浴び、さっきよりも10メートル級の巨体に変異している。
こうなったら、変身するしかなさそうだ。そう思った彼はエボルトラスターを手にとり、鞘から引き抜いた。同時に、ブルードと彼は金色に輝く光のドームに包まれていった。
サイトたちが駆けつけたのは、ちょうどその後だった。ブルードがアンノウンハンドの光を浴びてる時に発した唸る声を辿って森の中を進むと、意識を失って倒れていたルイズを発見した。
「ルイズ!大丈夫か!」
「ルイズ!」
しかし、ルイズ救出を阻むように、たくさんの服装のバグバズン・ブルードが二人の前に立ち塞がった。
「お前ら、そこをどけよ!」

その頃、メタ・フィールドの中で巨大化したバグバズン・ブルードとシュウヘイが変身したウルトラマンネクサス・ジュネッストリニティの激しい戦いが繰り広げられていた。
〈覇風撃!〉
「シェア!」
空中からネクサスの剣から放たれた風の刃がブルードの体を切り裂く。凄まじい火花が巻き起こり、ブルードを包み込んだ。晴れた時には、ブルードの姿はなかった。
今の攻撃で倒したのか?いや、それにしてはあっさりしすぎている。もしかしたらどこかに隠れたのかもしれない。
「ガアア!」
「!!」
後ろから聞こえた鳴き声でネクサスは背後を振り向くと、ブルードがネクサスの首元を締め上げ、腕を通してネクサスに電撃を浴びせる。
「グウウオ…!ヌウウ、シェア!」
力を振り絞ってネクサスはジュ分の首を絞めるブルードの腕を、より強い握力で握りしめる。ミシミシを生々しい音が響き、ブルードは痛みに耐え切れず振りほどこうとしたが、ネクサスの腕が自分の腕をつかんで離さない。そのまま地面に投げ倒された。
それから立ち上がったところを、ネクサスの連蹴りが撃ち込まれる。
しかし、ブルードも負けずネクサスに反撃としてあの甘い匂いの含まれた息を吐き出した。あの息には、さっきのルイズに起こった症状からすると相手を眠らせる催眠効果があるはず。ここで眠らされるわけには、と思った次の瞬間だった。
またリーヴスラシルのルーンが勝手に暴れだすかのように紅く光り、ネクサスの精神を奪おうとする。
(ぐ…まさか、奴の吐息に…なにかが…)
彼の予想は当たっていた。ブルードの吐息にはほんのわずかに、石堀がミーモスにも仕込んでいた「ウイルス」を混入させていたのだ。それがルーンに染み込み、ウイルスを吸収したルーンの効果で暴走したときのように急激にパワーが上がり、ネクサスの頭の中をじわじわと侵していく。
(こんなものに飲み込まれて…たまるか!!)
ギギ!!と体に力を込めると、だんだんルーンの光が静まり、頭の中の違和感も嘘のように消え去った。しかし、その隙を突いてブルードがかぎ爪でネクサスの身を斬りつける。
「ヌアア!!」
そしてまたネクサスの首を締め上げて、脇腹にジャブを放つ。だが、ネクサスはその手を払い、掴み取ってブルードをもう一度投げ飛ばした。
「デア!」「グギャア!!」
さらなる追撃として、ネクサスはブルードに空中回転しながらタックルして突き飛ばし、再び放たれたブルードの手を受け流して、一本背負いで地面に押し倒す。ブルードはそれでも諦め悪く爪を突き出したが、ネクサスはブルードの頭上を飛び越え、背後に回る。
(平賀、技を借りるぞ)
心の中で呟きながら左拳に炎を纏い、振り向きざまに彼はブルードに炎の鉄拳を撃ち込んだ。
〈豪零掌(ビッグバンゼロ)!〉
「デアアアアア!!!」
「ギエアアアアアアアアア!!!!」
鉄拳をモロに喰らい、宙を飛ぶブルードに、ネクサスは止めに、両腕を十字型に組み立て必殺光線を放った。
〈クロスレイ・シュトローム!〉
「ディア!」
「グギャアアアア!!!」
光線を受けたブルードは、地を二度と踏むことなく爆発、消滅した。
「さすがに、きれいな花火にはならないか…」

一方、現実世界ではサイトがテファを背後にした状態でブルードたちと交戦していた。
「行け!」
ブレスレットから出現させたウルトラゼロスパーク、ウルトラゼロランスをブルードたちに投げつけ、ブルードたちは次々に倒れていく。そして残り少なくなったところでサイトはデルフを構え、左手のガンダールヴのルーンの青い輝きとともにブルードたちの残りを
素早く、即効で斬り倒した。
「テファ、けがは?」
「うん、大丈夫」
「よかった。君が少しでも怪我したらシュウヘイに申し訳が立たないから。
ルイズは……!?」
テファから目を離し、ブルードの囲いの中で倒れてたルイズの方を向いたサイトだったが、彼は振り向いた瞬間目を疑った。
「る、ルイズ!?」
ルイズの姿がどこにもなかったのだ。
そのルイズは、運悪く逃げ延びたブルードの一体に攫われていた。

人気のない場所に彼女を置き、彼女の首筋にその凶暴な口を近づけていく。このまま食われてしまうのか、と思ったその時だった。
バシュン!!
「グゴオオオ!?」
ブルードに波動弾が撃ち込まれ、ブルードは瞬時に消滅した。変身を解いたシュウヘイが、辛うじて駆けつけてきたのだ。
「大丈夫か、ヴァリエール?おい!」

「ルイズ、大丈夫なのか?」
心配そうに尋ねるサイト。
「ええ、ハルナとモンモランシーが看てくれたから」
基地に戻り、ルイズは何事もなく目を覚ました。彼女より先にブルードに襲われた女子生徒も寝覚めたが、ビーストの知識を持つシュウヘイにまだ帰すのは危険と反対された。
「なんでまだ帰さないんだい?」
とギーシュ。
「バグバズン・ブルードには、相手の意識を奪うガスを吐き、獲物を取り逃がした時の保険として甘い匂いを残す。今ヴァリエールの体からも匂うようにな」
え?とシュウヘイに言われ、ルイズは自分の匂いを嗅ぐと、妙に甘い匂いが自分の体から漂った。
「うわ!なにこれ!!最悪…」
決して臭くはないが、これをキュルケに知られたら『匂いの管理もできないなんて』などと冷やかされかねない。今日はとっとと風呂に入りたいものだ。
「そんなことまでできるのか…」
とマリコルヌ。
「人間に擬態できるんだ。正体を知られたら連中もまずいと言うことを自覚してるわけだ」
見た目からして頭脳明晰なレイナールもこの話を理解していた。
「目撃者の抹殺を兼ねた捕食というわけか…だとしたら、またルイズは襲われるってことじゃないか!」
ギーシュがそう呟いた時、コンピューターに画面にアンリエッタの顔が映った。
『みなさん事件です!ここ数日、住民の行方不明の件数が十六件に上ってます!』
彼女の口からきいた一同の空気に戦慄が走った。もうすでにトリスタニアに被害が出ているとは…
『目撃者の証言によると、甘い香りと猛獣のような唸り声を上げる怪しげな男に攫われていると』
「これで確信が付いたな…」
「確信?」
シュウヘイの一言に、ハルナは何のことだろうと尋ねる。
「ああ、この学院と王都の付近に、奴らの巣がある。もしかしたら、奴らの親もいるのかもな」
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