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□File15
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「相棒!こいつら虫が張り付いてんぞ!」
「わかってる!」
ガロ星人に彼らは操られているのだ。自分に次々と襲い掛かる魔法を時に避け、時にデルフに吸収させながらサイトは彼らの後頭部に付着しているガロ星人をウルトラガンで狙う。
「今だ!」
まず一体目、そして二体目がウルトラガンのビームを受けて剥がれ、操られていた竜騎士のうち二人が地面に崩れ落ちる。残った一体も、サイトが地下水の水魔法で操っていた竜騎士の足を凍らされ身動きを封じられ、直接投げナイフとして地下水を突き刺されて倒れた。
「けがはないですか?執事さん」
「うむ、助かったよ」
サイトの活躍で無事助けられたペルスランは彼に礼を言った。サイトは今一度ペルスランを見て、すぐに気付いた。彼は人間ではない
と。
「あなたも、宇宙人なのか?」
「ああ、ウルトラマンゼロ。君のその姿がこの星での仮の姿であるように、私の、この『ペルスラン』としての姿も、私の仮の姿」
「教えてほしい。あの大鉄塊を倒す方法を」
「大鉄塊は完璧な兵器だ。いくら君でも倒すのは無理だよウルトラマンゼロ。すべては、私が書いた一冊の小説が招いたこと。この始末は私自身の手で決着をつける」
「だが…!」
無茶だ!そう言おうとした瞬間、キュルウ星人ペルスランの姿は消えた。
そしてちょうどその時、火山の火口の中から大鉄塊が出現した。
「なぜあんな場所に…」

一方、大鉄塊の内部にてガロ星人たちが現状の把握とこれからの行動について話し合っていた。少しあわてているようで、彼らも彼らで必死の様子だ。
「キュルウ星人が生きていた。しかしウルトラマンゼロに邪魔をされた」
「大鉄塊でキュルウ星人を誘導して、コントロール方法を把握せねば」
「まずはエネルギー補給だ。エネルギー量子変換システムを稼働させる!」
すると、火山の火口の真上に浮かんだ大鉄塊は、火口のマグマより赤く染まったオーラを、電球のランプのようなコアに吸い上げていく。火山のエネルギーを吸収しているのだ。

一方、タバサは自室で大鉄塊・下巻の原稿を読み上げていた。どのみち処分される前に、一度でも読んでみたい。あの続きがどうなってるかも…
――――大鉄塊は未完成だった。しかし、それでも都市を粉々にできる力を、保持しているのだった。今や大鉄塊には力が満ちていた。発光する体は破壊の限りを尽くすことを意味していた。その力は決して止まることを知らない。例え宇宙を守る神が、目の前に現れたとしても…
ついに、ガロ星人に操られた『鉄鋼ロボット・大鉄塊』が稼働した。以前のような筒状の待機状態ではなく、四肢と頭が存在する戦闘形態に変形して。
それを見たサイトはウルトラゼロアイを装着し、青き光に包まれた。
「ジュワ!」
直後、薄い雲間より青き戦士、ウルトラマンゼロが飛来した。まっすぐ大鉄塊の方に向かっている。
大鉄塊内部のガロ星人たちもそれを察知した。
「ウルトラマンゼロだ!情報はまだか?下巻の情報がなければ大鉄塊は未完成のままだ。シェフィールド殿も『完成状態で渡せ』とおっしゃられてる」
「未完成でもパワーはある。ゼロには量子変換システムの実験体になってもらおう!」
〈エメリウムスラッシュ!〉
「ジュ!」
ゼロのビームランプから閃光が放たれ、大鉄塊に向かうが、光線は大鉄塊の目の前で粒のようにつり、大鉄塊の胸のコアに吸収されてしまう。大鉄塊は反撃にゼロに、赤い稲妻状のワイヤーを放出してゼロの自由を奪う。自分に引き寄せ、彼の額のビームランプからエ
ネルギーを吸収し始めた。
「グァ…!?グウ…ダア!」
〈ビッグバンゼロ!〉
力を振り絞り、ゼロは炎の鉄拳を大鉄塊に食らわせ、自分ごと地上に落下した。
……………………
しばしの沈黙の末、ゼロは頭に乗った土を払って立ち上がった。一方の大鉄塊は機能停止したのか動いてない。今のうちに破壊しなくては。そう思って彼は大鉄塊に近づいていくが、それは大きな油断だった。
「デア!?」
突然胸のコアから発射されたビームを喰らい、ゼロは大きく仰け反り、前呑める形で倒れてしまう。辛うじて立ち上がったが、大ダメージの影響でカラータイマーが点滅を開始していた。
ピコン、ピコン…
根性で立ち上がり、ゼロは大鉄塊を取り押さえたが、同じように立ち上がった大鉄塊の凄まじい力で振り払われてしまう。もう一度立ち上がりはしたが、エネルギーをかなり吸い取られたこともあってかなりふらついている。なんども殴ってはいるが、ボディが頑丈す
ぎて全く打撃が通じない、逆に地面にたたき伏せられ、蹴り飛ばされてしまう。
「ぐ…」
絶体絶命のゼロ。エネルギーを吸い取られるうえ、ボディが頑丈すぎるせいで、まともなダメージがいまだに与えられてない。もし、他のウルトラマンがゼロに味方しても同じことだったかもしれない。
『止めだ…』
大鉄塊の胸のコアに光が集まっていく。このままだとやられてしまう。
「ガロ星人!」
そこで大鉄塊の中のガリ星人に呼びかける者がいた。ペルスランだ。
「私は大鉄塊の完全なコントロール方法を知っている!まずは私を大鉄塊に吸収させろ!」
自分から大鉄塊に取り込まれるというのか?ゼロには、ペルスランが何を考えてるのかわからなかった。
『わかった』
大鉄塊のコントロール方法に飢えていたガロ星人はそれに承諾、胸のコアから放出した光をペルスランに浴びせ、大鉄塊の中に取り込んだ。
ペルスランは大鉄塊を止めるために、わざと取り込まれたのだ。しかし…
「ぐおお…!!ああああ…」
『ばかめ、キュルウ星人よ。貴様の魂胆などお見通しだ』
『大鉄塊を止めるつもりのようだが、そうはさせんぞ』
ガロ星人の術でペルスランの意識が、奪われ始めていた。
―――大鉄塊を完成させるには、人の熱い思いが必要なのです。量子変換システムには人の思いをエネルギーに変えることが可能なのです。私があの大鉄塊に乗り込めば、あの荒ぶる神を正義の神に変えることができるでしょう。この星を救うには、私が大鉄塊と一つになることだけなのです
タバサはここまで原稿を読み上げて理解した。大鉄塊の完全なコントロール方法、それはペルスラン自身をエネルギーとして大鉄塊に取りこみ、彼の魂と共鳴させるというものだった。
しかし、大鉄塊と一つになって、無力化するには…
最悪の展開が、瞬時に彼女の頭の中に浮かび上がった。
「シルフィード!」
自分の使い魔の竜を呼び寄せ、彼女は飛び立った。

その頃、止めに放たれた粒子ビームはゼロには当たらず、彼の目の前にあたっただけだった。一体どうしたのだ?ここにきて外すなんて…そう思うゼロの頭の中に、声が聞こえてきた。
『ウルトラマンゼロ…』
『その声、キュルウ星人か?』
『何とか大鉄塊の動きを封じることはできた。もうじき私の意識はガロ星人に奪われるだろう。その前に、私ごと大鉄塊を破壊してくれ!』
大鉄塊を彼もろとも破壊する!?そんなことしたら残されたタバサは…
『な、何をするのだキュルウ星人!』
ガロ星人の悲鳴を無視し、大鉄塊は自らの胸のコアの蓋をこじ開けた。
『さあ、ここをねらうんだ!』
「やめて!」
その時、少女の声が彼の耳に届いてきた。タバサだ。彼女はいつもの冷静な姿勢を完全に崩し、悲痛な声でゼロに懇願した。
「お願いやめてゼロ!!!その人は私にとって数少ない、大切な人なのよ!!!!」
タバサの叫びにためらうゼロ。だが、ペルスランの必死の叫びも彼をさらに悩ませる。
『何をしてるんだ!さあ、早く!!!』
もし今大鉄塊を破壊しなければ大鉄塊は他の町でも大暴れし、たくさんの犠牲が出るのは間違いない。しかし、だからと言って言うとおりにしたら、以前憎しみに任せてシュウヘイとテファを養っていた少女エマを傷つけた時のように…
(なんなんだよ…俺って結局無力じゃないか…!!)
自分の無力さを呪うゼロ。ウルトラマンになっても、ガンダールヴの力を得ても、助けたい命を助けられないなんて…
(いや、まてよ…)
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