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□三美姫の輪舞・UFZの台頭/File14
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トリスタニアの郊外で、何百人もの大砲隊と、それに相当する数の大砲が並べられた。
「陛下、本当にウルトラマンを?」
武装した王宮の兵たちは主であるアンリエッタを見る。彼女も武装して現場の指揮を執る様子だ。
「同じ姿のウルトラマンが三人も同時に出るなんてありえません。それに彼らは怪獣たちとの戦い以外で出てくることはなかった。おそらくあの偽物たちは、本物と戦うために送り込まれた刺客だと予想しています」
「了解…各員、ウルトラマンを攻撃しろ」
兵士たちは衝撃的な顔になったが、「り、了解…」と歯切れが悪そうに承知した。
「なあ、本当にウルトラマンを…」
「相手が何であれ、それが任務なんだ」
やはり偽物だと知らされても、兵士たちの顔に迷いが生じていた。それでも感情を律して命令通りに動こうとする者もいたが。
(シュウヘイさん…どうか早く来てください。兵士たちは混乱している…)
アンリエッタは本物のネクサス、シュウヘイが来るのを願いながらにせの巨人たちを遠くから見つめる。
「う、撃てええ!」
魔法衛士隊の部隊から風、火の魔法が発射され、そして大砲部隊から砲弾が発射された。
魔法や砲弾による火花が偽物たちの体にあたって起きるが、どういうことなのだろうか?にせウルトラマンたちは反撃してこない。
「待っているのか?本物が現れるのを…。それとも…」
そう思ったとき、にせネクストが光の刃で反撃しだした。
〈ラムダ・スラッシャー!〉
「「うわあああああ!!!」」
いくつかの大砲があっけなく爆発していく。
ちょうどその時、サイト、シュウヘイ、レイナールの乗っているウルトラホーク一号が飛来した。中央胴体部のα機にサイトとレイナール、β機にシュウヘイが搭乗している。
だんだん偽物たちが暴れだしていく。我慢できなくなったサイトはレーザー光線の発射スイッチを押そうとした。が、そこで横からレイナールが彼の手を阻んだ。
「レイナール!?」
「偽物だって、頭ではわかるんだ。だけど…」
僕には攻撃できない!!!
ホークの内部に彼の悲痛な声が響いた。
「僕は、黒いウルトラマンが現れる以前ウルトラマンネクサスに命を救われたことがある」

数か月前、彼が領地に帰省した時に彼の領地が襲われたという。たくさんの人たちが怪獣の魔の手にかかり、ついにはレイナールの屋敷にまで伸びてきた。
その時彼を襲ったのは『宇宙戦闘獣コッヴ』。彼は屋敷の瓦礫に逃げ場を阻まれ、ついにコッヴの鎌状の手が振り降ろされようとした時だった。
『うわああああああ!!!』
どこからか飛来した紅い光がコッヴを突き飛ばし、光は彼の前に銀色の巨人として舞い降りた。
〈炎竜昇!〉
『ギエエエエ!!!』
ネクサスの炎を纏った切り上げ攻撃でコッヴは間二つに割られ燃えつくされ、焼失した。これがレイナールが、ネクサスに助けられた時だった。
「ウルトラマンは、僕たちにとって英雄で、一緒に戦ってきた仲間なんだろ!?」
「レイナール…」
偽物なのが分かっても、彼を信じてるからこそ攻撃できない。自分にとって悪に落ちた大切な人が、またはその偽物が悪さをしたら、とても嫌な気分にはなる。でももし、自分が攻撃しなければならない立場に立たされたら…悩まず攻撃なんてできはしない。サイトも
レイナールの気持ちがわかるような気がした。
シュウヘイはレイナールの言葉を聞き、エボルトラスターを見る。心臓が動いてるようにドクン、ドクンとランプが点滅している。
「…行くか」
あいつの思いに応えないとな。エボルトラスターを鞘から引き抜き、紅の光に包まれた。
「あれは…」
ドスン!と音を立てながら四つ目の紅い光が舞い降り、ウルトラマンネクサス・アンファンスとなった。
「シュア!」
〈パーティクルフェザー!〉
「グオ!?」「ヌウ!?」
三日月上の光弾がにせネクサスたちに直撃し、偽物たちは攻撃を中断させられて大きく仰け反った。
レイナールやサイトの顔に笑みがこぼれた。
「来てくれたのか…本物のウルトラマンネクサス」
(シュウヘイ、本物の意地を見せてやれよ)
「ジュワ!」
「「「ディア!」」」
互いに身構える本物のネクサスと三体のにせネクサス。しかし相手は偽物とはいえ数々の強敵と戦ってきた先代たち。戦力的に不利に見て取れる。だからサイトも変身しようと思ったが、レイナールがついて来てるものだからしたくてもできない。それに…
(なんか今回、あいつ助太刀とかを拒否しそうな気がする…)
彼の予想は当たっていた。ウルトラマンとして、先代という名の越えなければならない壁を越えようとシュウヘイは思っていた。
真っ先に攻撃を仕掛けてきたのは、にせジュネッスだった。拳を突き出してネクサスに殴りかかろうとする。それを受け止めたネクサスはカウンターでハイキックを与える。
「デア!」
そこからにせジュネッスにラッシュパンチを放ったが、途中でにせブルーの背後からの蹴りによる妨害に会い、にせネクストの方に飛ばされた。
「フン!」
ネクサスを受け止めたにせネクストも彼の頭をつかみ、腹を殴り、膝で蹴りつけ、そのまま投げ倒した。続いてにせジュネッスが彼を無理やり起こし、連続でハイキックを放つ。ネクサスも同じように連蹴りで相手のキックを受け止めていくが、彼がにせジュネッスと戦ってる隙に横から他の二体が光弾をぶつけてきた。
〈ラムダ・スラッシャー!〉〈パーティクルフェザー!〉
「グアア!!!」
横からの不意打ちを受けてネクサスは左方向に地面を転がされた。起き上がった時には三人のにせネクサスたちが自分を囲んでいる。
しかも悪いことに、にせネクストは両腕を十字に、にせジュネッスはL字型に、にせブルーは右腕に光の弓矢を作り、オリジナルと同じように必殺光線の構えをとっていた。
いかに本物でもまともに全部受けてたらひとたまりもない。絶体絶命、いやこういう時こそ冷静に対策を練らなくてはならない。
(おそらくチャンスは一度きりだ。うまくやれよ)
心の中で自分に言い聞かせるネクサス。普通ならここで逃げる手を使うだろうが、彼はその選択をとろうとは考えなかった。
「逃げて!!!!」
基地のモニターから彼の様子を見ていたテファは必死に叫ぶ。その瞬間、にせネクサスたちから必殺光線が放たれた。
〈エボルレイ・シュトローム!〉〈オーバーレイ・シュトローム!〉〈アローレイ・シュトローム!〉
(今だ!)
〈セービング・ビュート!〉
ネクサスはにせブルーに向かって光の縄を飛ばし、縄は光の矢を突き破ってにせブルーを捕えた。そして力いっぱいにせブルーを自分2042
の方へ引き寄せ、
〈マッハムーヴ!〉
瞬時に両腕を×印に組んで一瞬にして紅い残像となってその場から消える。その結果、偽物たちの光線を受けたのはネクサスではなくにせブルーだった。忍者でいう、変わり身の術というものだ。
「グアアアア!!」
にせブルーが自分たちの攻撃を受けてしまったことに動揺したのか、光線を止めてしまう二人のにせネクサス。しかし、その隙に空の彼方から現れ、かついつの間にかジュネッストリニティにチェンジしたネクサスが、自分たちの間の地面を殴ると同時に放たれた波動攻撃を受けてしまった。
〈滅閃光!〉
「ダアアアア!!!」
「「グワアアアアアアアアア!!!」」
にせネクストとにせジュネッスはにせブルーと同じ方に飛ばされ、落下した。
その時、三体の偽物たちに異変が起こった。何やら顔の辺りがドロッ!と溶け出し、まるでやけどを負ったかのように顔のあちこちが黒くでこぼこしたかのようになった。
偽物の化けの皮が、ついにはがれ始めたのだ。
「これで心置きなく攻撃できますね。全軍攻撃を!」
「正体を現せ!偽物野郎が!」
アンリエッタの指揮で大砲隊の砲撃、魔法衛士隊の魔法攻撃、そしてウルトラホークからのビームが偽物たちに襲い掛かった。
「「「グワアアアアアアアア!!!!」」」
凄まじい砂煙と爆発、その中に飲み込まれるうちに偽物たちは化けていた相手の姿をほとんどとどめていなかった、体中怪獣の体表のように黒くでこぼこし、不自然な個所に奇妙な突起物が現れていた。
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