-3

□三美姫の輪舞・UFZの台頭/File14
2ページ/4ページ

一方、出動したナイトレイダーたちはクロムチェスターα、β、γ、δの四機から外の様子を見ていた。
「あれは、なんだ?」
β機に登場している和倉隊長は目に映っている不思議な何かに目を奪われている。
銀色でドロドロしたものが空を駆け廻っていた。今まで見てきたビーストとはあまりにも異色過ぎる。
そこで、吉良沢より通信が入った。
『みなさん、あれはビーストではありません。今調べたところ、全く別の生命体であることがわかりました』
「ビーストじゃない?じゃあ、あれは何なの?」
γ機を操縦する詩織が声を上げる。
『金属で構成されていること以外僕にもわかりません。ですが、あれが先ほど僕の管理するコンピュータに侵入していました。その目的はいまだ不明ですが、なにかしらよからぬことをたくらんで僕のコンピュータのデータに侵入したのは確かです。何あれには機密事
項が山ほどありますから』
「では、作戦は?」
和倉が吉良沢に尋ねる。
『奴を逃がしたら我々の重要な情報がビーストたちにも漏れる可能性があります。住民への被害を考慮しながら、早急にターゲットを殲滅してください』
「了解。各機、攻撃開始!ターゲットを掃討せよ!」
『『『了解!』』』
和倉の指示に従い、クロムチェスター四機は一斉に攻撃した。
「スパイダーミサイル、ファイア!」
「喰らいなさい!アピロックミサイル!」
「レーザーバルカン発射!」
「クアドラブラスター、シュート!」
四人の握るトリガーのスイッチが押された瞬間、凪のα機と詩織のγ機から蜘蛛の巣を描く等にミサイルが、和倉のβ機と孤門のδ機から強烈なレーザーが放たれ、空を飛行していた物体に直撃し、物体は広大な空き地に落下した。
激突と同時に起きた衝撃からか、物体は銀色に光る液体金属の池と化した。
「…」
倒したのか?それにしてもあれはなんだ?金属で構成されたと聞いたが、自分たちはビースト、それ以外ではウルティノイドとしか戦ったことがないのであのような生命体は異種的すぎる。
と、次の瞬間だった。ドロドロの液体金属の池から眩しい光が巻き起こって辺りを包み込んだ。
「うわ!?」
チェスター四機に乗る四人は思わず目をふさいでしまう。彼らはその光を浴びているとき、本能的に違和感を感じ取っていた。『彼』に似た、赤い光に。
四人は光がやんだところで目を開けると、驚くべき光景を目にした。
「う、嘘お!?これどういうこと!?」
あまりにもびっくりして詩織は間抜けな叫び声をあげた。
「そんな…なんで?」
一番これに動揺していたのは孤門だった。だって、彼は自分から離れて以来全く姿を見せていないのに…
しかも、「三人」であるのはあまりにもおかしい。だが、それだけではなかった。空に真っ黒の怪しげな暗雲が起こったのだ。
「あれは…アンノウンハンド!!!!?」
彼らナイトレイダーにとって一番の強敵でもあった「冥王」の、姿
なき手。数々のビーストを送り込み、ウルトラマンを苦しめた存在。
今やTLTの存在が公のものとなった今では悪名高い凶悪な存在と
して知られていた。
「いっしーは孤門君がやっつけたのになんで出てくんのよ!?」
彼女の言う「いっしー」とは、シュウヘイが倒すべき敵として定めている男、石堀。かつてはナイトレイダーの一員でともにビーストと戦った仲間、というのは彼らの目を欺くための芝居だった。実際は凪がウルトラマンの光を手にするのを予知し、彼女の心に闇を植
え付け、その闇が彼女の変身したネクサスの光エネルギーを、石堀が真の姿を取り戻すためのエネルギーとして利用されてしまった。自分と交際していたこともそのための演技だったことを知ったことで、詩織はたった今見ているアンノウンハンドに激しい怒りの眼差しを向けていた。
アンノウンハンドは放射した紫色の光で「三人」を包み込むと、何事もなかったように姿を消した。
「消えた…?」
茫然と隊員たちはアンノウンハンドの消えた空をただ見上げるだけだった。

「…」
一方、彼らが捜している青年、シュウヘイは学院の外を基地の窓際から眺めていた。そんな彼にサイトが話しかけてきた。
「どうしたんだそんなに空を見上げて」
「いや、大したことじゃない。ただ…」
「ただ、なんだ?」
「故郷から離れてもう一年たったんだな、って思ってたんだ」
「そういやお前、この次元とは違う地球からきたんだよな。俺とは違って、帰る方法がわからないんだから、結構つらいだろ」
「まあ、な。向こうにも仲間はいる。尊敬してる人もいる。帰りたいとは思うんだが…」
帰れない。第一手がかりがないし、やるべきことを中途半端に残して帰ったら後味が悪い。それに…
(テファ…)
彼は、もしかしたら自分と仲間を引き離したことで憎んでいたかもしれない少女と心を通わせ始めていた。元の世界に帰って彼女と離れることになるかもしれない。だが、自分はそうたやすくためらうことなく帰ることができるだろうか…。
密かに、それを基地の入り口のドア越しから聞いていた人物がいた。
シュウヘイと心を通じ合わせてきた少女テファ。中から聞こえる彼の話を聞いて彼女は不安を感じていた。
思えば、ルイズがサイトを地球から召喚したように、自分もまたシュウヘイを故郷の仲間から引き離した女。以前ウェザリーの計らいで彼の世界を模した仮想世界に行ったことがあった。幻想だったのは確かだが、それでも彼の仲間たちは彼を本気で気遣っていた。
自分は、彼がやっと手に入れた大切なものを引きはがした…最低な女だと思いこんだ。彼が故郷にいたままなら、自分のことやこの世界のために苦しむことなんかなかったかもしれないのに…
(私、酷い女だ…)
表情を暗くしていくテファ。自分は彼にふさわしくない。自分せいで心に深い傷を負っている彼をさらに肉体的にも、精神的にも追い詰めていったのだ。
彼女は基地から背を向けた時だった。
「な、何このとんでもないエネルギー反応!?」
中から飛び上がったかのように叫ぶハルナの声が響いてきた。一体どうしたのだと基地内で待機していた仲間たち、そしてテファも気になってコンピューターの画面を見る。赤い点が表示された箇所に。赤い点が撃たれているが、それを現すエネルギー数値があり得ないスピードで上昇している。
と、そこでシュウヘイも見られないようにエボルトラスターを取り出した。ビームランプの緑色の光が、とてつもないほどの速さで点滅している。今回の敵はかなりの大物に違いない。
「ハルナ、画面に出してくれないか?」
サイトに言われ、ハルナは現場の映像をアップして表示した。黒い巨大な暗雲…。
「アンノウンハンド…!」
それを見てシュウヘイは表情を堅くした。まぎれもなく、奴が…
石堀が刺客を送り込んでくる前触れだと思いながら。
だが、その刺客の正体を誰が予想できたと言えたのだろうか。アンノウンハンドの中心部から赤い光が三つ飛び出し、地上に落下した。
「な!?」「うそ!?」「なに!?」
ルイズやギーシュ、他の面々をこれを見て自分たちの目を疑った。一番驚いていたのは、シュウヘイだった。
「馬鹿な…これは!?」
画面に映っていたのは、なんとウルトラマンネクサスだった。それも一体ではなく、三体だ。
一体目は、最初のビースト『ザ・ワン』と戦ったときに初代デュナミストの真木が変身したウルトラマン・ザ・ネクスト・ジュネッス、もう一人はかつて姫矢の変身したウルトラマンネクサス・ジュネッスに、残った一体は憐の変身していたウルトラマンネクサス・ジュネッスブルー。
先ほど、ネクサスの世界でナイトレイダーの面々が見た光景は、彼ら三人が同時にいたものだった。
と、ここでサイトのビデオシーバーが鳴り出し、サイトは蓋を開くと、画面にアンリエッタの顔が映された。
『みなさん!シュウ…いえ、あれはどういうことです!?』
思わずシュウヘイの名を呼ぼうとしていたことに気が付き、危ういところで口を一回地座した彼女は改めてサイトに尋ねる。余談だが、さっきルイズとギーシュもシュウヘイのことかと思ったが、すぐに知らないふりをした。
「それは…」
返答に困るサイトの代わりに、ハルナが代わりに答えた。
「強すぎる金属反応…あれはウルトラマンネクサスじゃありません!黒崎君のいう、アンノウンハンドが他の生命体の姿を借りれる怪獣を送りこんだんです。その怪獣が、おそらくネクサスの姿をコピーした。おそらく能力もすべて…」
『じゃあ、あれは偽物なのですね!?』
偽物とはいえ、三体ものウルトラマンが相手…これは戦慄というものを感じざるを得ない。それにもしあのにせウルトラマンたちが町の人たちに襲い掛かったらひとたまりもない。
一刻も早い対処が必要となる。
「アンリエッタ、攻撃してくれ」
シュウヘイの心の中は複雑なものだった。
今や町に出かけたら英雄扱いされているウルトラマンの話を耳にタコができるほど聞いている。それを利用したアンノウンハンド=石堀に対する怒りを抑えていた。それにあのウルトラマンたちは自分の先代たちの姿をコピーしたもの。攻撃することを自分にも、他に
ウルトラマンを崇拝する者たちにも躊躇いの心を植え付ける意図が見える。だが、どのみち倒さなくてはならないのは確か。
「俺もホークで援護する」
そういって彼は基地を出た。サイトも彼を追って外に出た。だが、彼だけでなく、レイナールも衝動的に二人を追っていった。
(先代と現役の戦いを観戦して楽しむために、先代の偽物を送り込んだのか?石堀め…)
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ