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□File6
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『ウワアアアア!!』
彼は負けた。異星人の化けたにせウルトラマンダイナに。そして偽者は彼に言った。
『所詮貴様は人の情を捨てきれない軟弱者。そこで這いつくばるのがお似合いだ負け犬』
今までダイナとして戦い、勝ってきた彼のプライドはズタズタに引き裂かれた。そのショックで真は戦うことを放棄するようになった。
「…ちくしょう…」
「真」
その声を聞いて真は顔をあげる。マイと、知らない顔であるシュウヘイとテファの二人が彼女の後ろからやって来た。
「何しに来たんだよ、マイ」
「まーだいじけてる。らしくないじゃない」
マイはいつ、なぜかは不明だが真がダイナであることを知っていた。シュウヘイはそう読んだ。
「ほっとけよ。俺なんかどうせ、ウルトラマンでも威張るだけのへっぴりだ…誰も守れやしない…」
「あんたねえ!」
マイは真の胸ぐらわ掴み上げた。いい加減彼の今の態度に苛立ちを覚えていた。
「いつまでそんなんでいるつもりなのよ!なんのために私があんたの正体を隠してあげてると思ってるの!全部、あんたがこの星の救世主だって信じてるからなのよ!なのにあんたは…」
たった一度きりの敗北だけで拗ねる。そんな彼の無様な姿を、彼女は許せなかった。
「簡潔にでも構わないから、俺たちにも教えてもらえないか?」
「…そうね。話すわ」
アスカから手を放したマイは、説明した。謎の異星人の化けたにせダイナに、真はダイナとなって迎え撃った。その場にマイも居合わせ、見守っていたが、彼は敗北。悪辣な言葉言い捨てられ、彼は戦意を喪失し、彼に成り代わってにせのダイナが怪獣と戦うようにな
った。だがその戦いぶりは人類のためではなく、ただ暴れたがってるだけなため、防衛軍も頭を悩ませていた。
「お前に何がわかる…ウルトラマンでもない単なる非力な人間のお前に…」
「人間だからどうした?」
シュウヘイは鋭い視線を真に向けた。
「誰にでも敗北は付きまとうものだ。だが大切なのはその先に見出だすもの。今のお前はそれすら見いだそうともせず、ただ『負けた』という事実に囚われた囚人。お前の仲間であるそいつ(マイ)も幾多の試練や敗北からスーパーGUTSというクラスにまでのし上がれた。かつてのお前もそうだったからスーパーGUTSになれた。違うか?」
「………るせえんだよ」
しばらくの沈黙を経て真は口を開いた。
「説教垂れるなよ!見ず知らずの野郎が!」
それから彼は立ち上がり、言い訳ばかりで事実から目を背ける子供のように走り去った。

夜風の吹く中、結局他に行き場のない真は塔のようにそびえ立つ総合本部基地の外にある草腹の木陰に座り込んでいた。
「あら?」
偶然にもテファが彼の前にやって来た。そのまま彼女は真の隣に座り込む。
「シュウはあん風にキツくいう人だけど、本当は凄く優しいんだよ」
「…」
真は無言のままだった。ただ石像のように固まり俯いている。これじゃあ、話が進まない。テファはあることを話してみた。
「彼もウルトラマン」
「え?」
「でも、それ以前に辛い過去を引きずってる。それが彼にとっての敗北、ってことかな」
それから彼の過去を知る限り話した。勝ち組からみれば、彼の人生は確かに敗北だらけだったかもしれない。
「ウルトラマンになってからも彼はその過去を忘れないように、一人でずっと抱えてきた。でも、そろそろ限界だから私が支えてあげたいの。だからあなたも、信じてる人に支えてもらって、負けた過去と向き合って。シュウも信じる人が故郷にいたから、立ち上がれたんだよ」
テファはそろそろ帰るね、と言い残し、基地にいるシュウヘイの元へ戻っていった。
「…信じる、人」
リーフラッシャーを見つめ、真は一人ポツリと呟いた。リーフラッシャーを上着の内ポケットにしまい込んだところで、ヒビキから通信が入った。
『真、怪獣とダイナが現れた。相変わらず奴は周りの配慮を考えずに戦ってやがるから街中パニック状態だ。すぐ基地に帰還して現場に急行するぞ』
「ラジャー!」
「俺は、諦めの悪い奴だったてことを思い出せた。それを気づかせてくれた奴を消すってんなら…!」
彼はリーフラッシャーを掲げ、ウルトラマンダイナ・フラッシュタイプに変身し、にせダイナの前に姿を現した。
「ダアッ!」
「…来たか」
ガッツイーグルからダイナの姿を見たシュウヘイは静かに呟いた。
「またか…負け犬のくせに懲りないやつだ」
うんざりしたようににせダイナは言う。
「俺はもう、てめえみたいにただ戦いを楽しんで、力を自慢するだけの奴には負けねえ!いや、負けらんねえ!」
「…別の強大な光の力を感じて、そいつをおびき出すつもりだったってのに…」
強大な光の力、それを聞いたアスカはテファの口から聞いたことを思い出した。
『彼はウルトラマンなのよ』
確か、シュウヘイとかいったか…あいつの力を感じ取ってまた出てきたってわけか。
「まあいい。はずれで我慢してやるか」
「なめんじゃねえ!デア!」
〈ソルジェット光線!〉
ダイナはにせダイナに向けて必殺光線を放った。同時ににせダイナも構えも形も全く同じソルジェット光線を放ち、ダイナの光線とのつばぜり合いが始まった。
しばしのつばぜり合いが続いたが、だんだんダイナの光線がにせダイナのものに押されていき、最終的にダイナは光線をかき消され、大きく吹っ飛んでしまった。
「ウアアアア!」
「へへ…」
あざ笑うにせダイナ。全然余裕の様子だ。にせダイナは高く飛び上がり、ダイナの肩を踏み台替わりに彼の背後に飛び移った。
それからダイナとにせダイナのガチンコバトルが続いた。回し蹴りを避け、にせダイナの連続パンチを受け止めていくが、にせダイナは、すべての世界のにせウルトラマンの中で、本物すらも圧倒した数少ない強敵。戦う動機が何であれ、実力は本物だった。
「シェア!」
「グァ!」
背中を合わせ、ダイナがにせダイナの顔面に拳を打ち込もうとしたが、にせダイナは隙だらけとなったダイナの脇腹を狙ってパンチを放ち、再びラッシュパンチを繰り出す。お返しに拳をぶつけてくるダイナの腕をつかみ、空中に投げつけると、自分も飛び上がってダ
イナにキックを連発、ダイナは地上に落ちてしまった。
「真!」
マイが心配になって叫ぶと同時にダイナはよろよろと立ち上がったが、彼のカラータイマーは既に点滅、限界が近づいていることを知らせていた。
ピコン、ピコン…
「シュウ、助けてあげないと!」
テファは慌てた口調で言うが、シュウヘイはそれを否定するように首を横に振った。
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