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□File5
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だがその時、ボロボロになっていたはずのコスモスが飛び出し、身を挺してグローカーたちの攻撃からロケットを守った。
「ウワアアアア!!」
「コスモス!」
ピコン、ピコン、ピコン…
コスモスのエネルギーが尽きかけている。彼はヨロヨロと立ち上がり、ゼロに声をかけた。
「頼む…ジャスティスに、伝えてくれ……私が武蔵から教わった…こと…を………」
コスモスはまるでブロンズ像のような色に染まると、倒れていきながらパリン!と砕け散った。
「………!」
コスモスが消えた。それを察知したかのように、ジャスティスはグローカーたちと共に姿を消した。
「なんで…」
震えながらゼロは握り拳を作った。なぜこんな酷いことを、ジャスティスは平気でやったのか。あのロボットたちと一緒に何を目的としているのか…
「なんで、こんな戦いばっかなんだよ…」
「旦那、もう変身を解きやしょう。連中の気配はもう感じねえ」
「…」
ゼロスラッガーに乗り移った地下水の言葉を聞き入れたゼロは無言のまま変身を解いた。

武蔵はあの後病院に運ばれ、治療を受けていた。現在彼の受けている治療室の前にはサイト、クリスの二人だけでなく、ジャスティスの変身したルイズがいる。この世界ではルイズは『ジュリ』と名乗ズは『ジュリ』と名乗っていた。
「なんで、あんなことをした!?君は俺やコスモスと同じウルトラマンだろ!?」
「予測したからだ」
「予測?」
「今から約二千年後、地球人は宇宙に害をなす存在となると『デラシオン』は予測したからだ。よって今から約35時間後、この地球の生命体のリセットを開始する」
デラシオンとは宇宙正義を確立させた、ウルトラマン以上の絶対的存在である。だが、そのやり方は場合によっては独善的で無慈悲。しかし、そのやり方で宇宙の平和を守ってきた。
「そんな勝手な!」
「人間が家を食らい尽さんとするシロアリを駆除するのと同じことだ」
「シロアリと人間は違う!」
「…先ほどこの星の代表たちも勝手だのシロアリと一緒にするなと言ってたな」
ジュリはサイトたちが武蔵を病院に運んでる間、デラシオンからのメッセージをこの世界の地球防衛軍たちに伝えていた。無論、いきなり悪さもしてないのに死刑宣告を下されて黙っていられるはずがない。
「君はなんとも思わないのか?そんな心ない正義を行使して、たくさんの人が痛みを癒す間もなく死んでいくのを見て…」
心ない正義。サイトもそれを行使してしまったことがある。ノスフェルとの二度目の戦いで、その中に閉じ込められた少女の存在を無視し、ノスフェルを倒してしまった。結果、その少女は一命をとり止めたものの、意識不明の重体だった。サイトの心に深いトラウマ
を残すのと引き換えに、サイトはウルトラマンとして大事なことを思い出したのである。
「…私は同じ過ちを繰り返すわけにはいかないのだ」
「同じ過ち?なんだそれは?お前は何をしたと?」
クリスの質問に、ジュリは目を光らせると、サイトとクリスにある立体映像を見せた。
サンドロス。そう呼ばれているエイリアンが地球の都市を次々に破壊している。そこにコスモスとジャスティスが現れ、サンドロスを撃退したものだった。
「サンドロスはかつて、地球人のように愛などと曖昧な感情を持つ種族だった。しかし、いずれサンドロスが宇宙の害物となることも懸念した。だがすぐ抹殺するには早いと判断したデラシオンと私は2000年の猶予を与えた。サンドロスがあの時のままでいられる
ことを願いながら。だが、サンドロスは裏切った。自らの快楽のために星の文明を蹂躙、破壊し尽くしていった」
「「…」」
サンドロスは地球人のように美しい心を持っていた。にも関わらず、自らの利益しか考えない侵略者となってしまったのだ。だからジュリは今回の地球人の件では、猶予を与えることも許してはならないと判断した。
「でも、地球人がサンドロスと同じになるなんて限らない。ジュリ、考え直してくれ。少なくとも攻撃するのは、地球人が本当の侵略者になってからの方が…」
「これ以上お前と話しても無駄だな」
サイトの言葉を最後まで聞く前に、ジュリはその場から歩き去っていった。
「…俺はたとえ守ってる人が侵略者になったとしても、諦めたくない…」
そのサイトの呟きは誰にも聞こえなかった。

『武蔵…』
治療を終え、病室のベッドに寝かされていた武蔵の耳に、聞きなれた彼の声が聞こえてきた。
『武蔵、私はまた君を傷つけてしまった』
『いいんだコスモス。これは僕が決めたことなんだ』
『私は武蔵、君から夢の大切さを、それを守ることの大切さを教わった。それをジャスティスに伝えたかった…』
『僕はまだ、諦めてない。どんな問題にもきっと解決できる方法があるはずなんだ…』
二人の会話は、武蔵の夢の中で展開され、誰もその二人だけの会話を聞くことはなかった。
ただ一人、サイトたちの後から武蔵のいる病室に来た人がいた。アヤノ、武蔵と同じEYESの隊員で彼に好意を寄せた女性。彼女は友好的な怪獣たちをとある島で合法的に保護している。その忙しさもあって彼と会う機会がなかなかなかった。
「武蔵、また話できるよね」

「…やはり、この星の人間は守る価値などない」
自分の回りに転がるチンピラたちを見て、ジュリは心なき言葉を言った。
先ほどまでこの辺りを歩いていたところを、どこからかやって来たチンピラたちに絡まれたが、あっさりと返り討ちにしたのだ。
「助けてくれ!」
チンピラの多くはその場から逃げ出した。
すると、彼女の足元に何かがもぞもぞと動いていることに気がついた。白い子犬だ。
「コスモス!」
そこに、10歳ほどの幼い少女が走ってきた。
「よかった…いきなり走っていっちゃうから…」
「この子犬が…コスモス?」
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