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□File3
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一方、あの三人の泥棒集団は車で山を下った後、近くのコンビニで休憩をとっていた。
その中の一人は車の中で留守番をしている。退屈そうに男があくびすると、ちょうど同じタイミングで金箔塗りの像が風呂敷から顔を出した。そして、男に異変が起こった。
『バカな奴よ…拙者が苦労して退治した魔物を復活させおって』
「だっ…誰だ!?」
『今の拙者は「本体」から切り分けた魂の一部でしかないため肉体がない。お主の体を借りるぞ』
「かか…体を借りる?って待て!あっ…がっいたっ…ああああああ!!!!」
しばらくその男の悲鳴が響いたが、悲鳴が収まると同時にその男は刀を担いで車から降りた。
ちょうどそこに買い物を終えた二人が戻ってくる。だが、仲間が戻ってきたにも関わらず刀を担いでる男は完全に無視しその場から歩き去ろうとしていた。
「おい、どこ行くんだよ」
それを見逃すまいと一人がナイフを彼に向ける。
「そいつ(刀)は置いてけ。刺すぞ」
と次の瞬間、ズバシュ!
なんと刀を持った男がナイフを突きつけてきた仲間に刀を振り下ろし、ナイフの男はその場に倒れ付した。いきなり殺人現場を見ることとなった残りの一人は腰を抜かしてしまう。
「ひひ…人殺し!」
「案ずるな。峰打ちじゃ」
「刀に血がついてるように見えますけど…」
「幻覚じゃ。それよりお主、この箱を動かせるか?」
刀を持つ男が車を刀の先でカツカツと叩きながら尋ねた。まるで「自動車」という言葉すらも知らないような言い方だった。
「確かに動かせますけど…」
「なら拙者を、お主たちが盗みを働いたあのお堂まで連れていけ」
「それはできます…って帰りは確かあんたが運転するって!」
かちゃ!
「はい、わかりました…」
文句をいう男だったが、刀を持つ男が刀に手をつけようとした瞬間大人しくなった。

宿那山のふもとに着いたところで、ダイゴはサイトの元に走ってきた。
「平賀リーダー」
「どうしたんだ?」
「あなたは、一体何者何ですか?」
「っ!」
ダイゴはやはりあの握手の時、自分の中にある力を感じ取っていたようだ。
ウルトラマンの力を。
「お前も、ウルトラマンなのか?ダイゴ」
それを言われ、ダイゴは息を詰まらせたように言葉を失った。
「その様子だと、やっぱりそうなんだな」
「…はい」
ようやく口を開いたところでダイゴは頷いた。
そして彼は続けた。自分の肉体には超古代の戦士の遺伝子が組み込まれていること。以前二体の怪獣が『ティガの地』で現れ、そこで破壊されかけたウルトラマンの石像の一体と一つになり、『ウルトラマンティガ』に覚醒したと。
「この力のお陰で数々の強敵を倒してきました。でも時々不安になるんです。僕がこの力に心を奪われ、悪になるんじゃないかって…」
不安げに彼は胸を締め上げるように握った。いきなり思いもよらない力を手にすれば、二つに思いが分散する。自らの力を過信するか、自分を恐れるか。ダイゴはその悩みで苦しんでいるようだ。
「誰だって不安さ。ウルトラマンじゃくてもな」
サイトの言った言葉にダイゴは俯かせていた顔をあげる。
「俺も戦うことに不安を感じたことがある。ウルトラマンになったことが時々誤った選択じゃないかって考えたりもした。でも考えてたって仕方ないさ。とにかく何のために戦ってるのかを心に留めとけば、少なくともそいつは悪にはなったりはしない」
「…すみません。変なこと聞いちゃいましたね」
「気にするなって。仲間に相談するのは悪いことじゃないさ」

「宿那鬼?」
現場である宿那山、その山の、刀や像が盗まれたお堂にたどり着いたサイト、クリス、ダイゴ、そしてレナ。山から出てきた巨大な腕について、実際に見たと言う巡査、山田に尋ねると彼は「宿那鬼が復活したんだ!」と言った。
「宿那鬼って、一体何ですか?」
ダイゴが尋ねると、山田巡査が続ける。
「宿那鬼はその昔、この世を荒らしていたと言われてる、この地域に伝わる伝説の鬼神のことですよ。その鬼神を錦田小十郎景竜が刀で四肢をバラバラにして退治し、その体を山のあちこちに、自らの魂の一部と宿那鬼の魂を刀に封じ込めたそうなんです」
「!」
錦田景竜…
その言葉にいち早く反応したのはクリスだった。
師匠が、この世界にいただと…?
「錦田景竜は生涯放浪の旅をしていたらしく、その旅先で会ったもののけ、つまり怪物たちを打ち倒していったそうなんです」
「なんかうさんくさい話ね」
とレナ。やはり『レナ』という役割を与えられても、彼女らしい感ルイズ
想だった。何かと現実主義的である。
「私が昨日見たのは間違いなく宿那鬼の腕ですよ。『恨みを晴らしてやる』とか『復讐だ』とか…きっと封じられて何百年も経ってる今でも景竜のことを恨んでるんです。あぁ、恐ろしい…」
「…」
「クリス、大丈夫か?」
景竜の名を聞いて驚きのあまり固まっていたクリスに、サイトは声をかける。
「え?あっ…済まない…」
(いきなり死んだ師匠の名前聞いたんだもんな。そらビックリするよな)
とその時、また彼らのいる宿那山が地響きを起こした。
『おのれ…今度こそ…今度こそこの世を…』
地響きと共に、彼らの頭の中に聞こえてきた声は、両腕・両足、そして頭の順で宿那山の周囲の地面から這い出てきた。
「宿那鬼の体のパーツか!」
サイトはそれらを見上げ叫ぶ。て
「リーダー、指示を!」
「よし、ガッツウィングに急げ!」
リーダーであるサイトの指示で、四人はGUTSの対怪獣用戦闘機『ガッツウィング1号』と『ガッツウィング2号』を着陸させたポイントに向かう。

「ねえ〜、もうこの辺りで勘弁してくださいよ…なんか出てきたし…殿、この通りでございます」
男はまるでサムライのようになった仲間に愚痴を言う。現在車で山道を進み、もう車では行けないほど狭い獣道の前にいた。
「この辺りでよいだろう。大義であった」
刀を担ぎ、彼は車から降りると、その先の獣道をたった一人で歩き出した。
ガッツウィング1号と2号の着陸ポイントへと急ぐサイトたち。しかし、ダイゴは途中で人影を森の獣道の中で発見した。
「リーダー、人がいます!」
「何だって!?」
「どうしたんだ二人とも?」
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