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□File1
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サイトはルイズとクリスを連れ、ウルトラホーク1号の搭乗席に座らせ、発進させた。
「サイト、これがウルトラホークというのか。何て速さだ…これほどのものを見たら驚きすぎて逆に言葉が出ないぞ」
「師匠からは聞かされてないのか?」
「ああ、師匠も見ていたら、きっと驚きすぎて寿命が縮まったなんて言っていたかもしれない」
「その人、まだクリスの国にいるのか?」
同じ日本人としては興味深い。是非とも彼に会いたかったサイトだ
ったが、クリスの表情は暗くなっていた。
「実は、去年亡くなったんだ」
「え?」

―――私がまだ幼い頃、森に教われた私を魔物から救ってくれた剣士がいた。それが私の師匠だった。彼は名もなき剣士としか語らなかったが、私は是非彼に褒美を与えようとしたが彼は断ったよ。
「俺の剣の届く範囲が俺の国で、俺が王様なんだ。その国の中のお嬢ちゃんを俺は助けただけ。お礼なんかいらないさ」
私はそれでも彼にできることはないか、無理やりにでも城に招き入れた。
存在事態興味深い人なものだったから、私は彼に、私の師匠としてこの国に留まってほしいと頼んだ。
彼は故郷へ帰ることを目的に旅をしていたのだが、もう諦めかけていたこともあって彼は私の師匠として私の国に留まってくれた。
ようやく名乗った名は、『錦田小十郎景竜』。
それから格好や心構えを武士らしくあるように師匠からみっちり叩き込まれた。
まるで、父上が二人いるようだったよ。
でもそんな平穏を切り裂くように、私の故郷に今までに見たこともない魔物が現れたんだ。
「見たこともない魔物?まさか!」
声を上げるサイトと目を丸くするルイズにクリスはそのとおりと頷く。
「そのまさかだ。この国でも暴れたのだからお前たちも知ってるのだろう。『怪獣』をな」
怪獣は暴れまわった。まるで本能のおもむくままにただただ暴れまわった。
魔法も通じない相手に、師匠はただ一人刀一本で立ち向かった。そして彼は凄まじいほどの傷を負ったところで刀に怪獣を封じたのだ。しかしそれは、ケガの影響で師匠が死することでもあった。
「あんなに小さかったクリスがこんなべっぴんさんになるなんてな…俺は何をやってたんだか…刀なんか持たせやがってよ…でも、家族に会えなくなった俺にとっちゃいい冥土の土産になるよ…」
「そんなことをおっしゃらないでください!」
「なあクリス…最期に、俺の願いを聞いてくれ…いい嫁さんになって、悔いの残らないように死ぬこと…いいな…」
そう言い残すと、師匠は息を引き取った。

「亡骸は手厚く葬った。父上もこの国を救った英雄だから当然のことをせねばと言ってくれた時は嬉しかったよ」
「そっか…あと一年早かったら、会えたかもな」
「師匠は時々私のいないところで『帰りたかったな…』とよく呟いてた。サイトは…どうなんだ?」
そうクリスが尋ねた時は、ルイズも思わず身を乗り出しそうになった。
「すぐ帰ろうとは思ってない。この世界でもやることはあるんだ。ルイズの使い魔だし…」
そしてウルトラマンとして…
そこまでは言わなかったが、この星に留まる理由があるならば、立ち去るわけにはいかない。
「そろそろ着く頃のはずなんだけど…」
とサイトは外を見つめた。もうトリスタニアの街が見えてきている。
「凄いな!まさか、こんな短時間で着くとは!」
感嘆のあまり大声を出すクリス。とその時だった。
カダン!
別に地震の起こる地上でもないにも関わらず、ウルトラホークが一瞬大きく揺れだした。
「きゃ!」
「なっ、何が起こったサイト!?」
「くそ…エンジンなら正常だったはずなのに…」
今朝と言うか、劣化を防ぐために毎朝欠かさず点検を行っていたのに、一体何が起こっているのだ?
すると、サイトはあることに気が付く。
「そんな…地上がだんだん遠くなってる!」
なんと、ウルトラホークがみるみるうちにハルケギニアの大地から離れ、宇宙へと浮遊大陸のように登っていたのだ。
「この!言うことを聞け!」
操縦ハンドルを握りしめるサイトだが、ハンドルは全く言うことを聞かず、ホーク1号はゆっくりと宇宙へ浮かんでいく。その先にあったのは、ハルケギニアの世界を象徴する双月のうち、赤い月だった。

その赤い月で奇妙な機械音を鳴らす機械を持つ異星人がいた。
「まんまとかかりやがって。貴様を邪魔者として狙う連中は私だけではないと言うのに…」
そして光輝く星より、一筋の光が飛んできた。
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