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□File1
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アンリエッタは私の古い馴染みでな。彼女からお前のことを聞いてぜひ会いたいと思っていた」
クリスは邪気のない笑みを浮かべた。こうして見ると、彼女もまた魅力的な顔立ちをしている。
(っていかんいかん!下心のあまり顔がゆるむところだった!下手したらルイズにお仕置き喰らいそうだし…)
別にルイズが見てるわけでもないのに…相当ルイズに恐怖しているサイトだった。
「しかし、あんたメイジなんだろ?魔法は使わないのか?」
そこでウルトラガンのホルダーから突然声が聞こえてきた。獣人事件のさい、サイトがジェイドから託されたナイフ「地下水」である。
「インテリジェンスナイフまで持ってるのか」
「まあね。でも君は、魔法使うよな?」
サイトの質問にクリスは頷く。
「一応な。系統は風で二つ名は『迅雷』だ。でも私はサムライだか
ら基本は剣を使う。お前もそうだろう、サイトよ」
「え…あ、うん」
同じ知識を持つ者同士、何かと話が弾んでいる。この時、誰もが忘れていた。美女に目がない男代表といえるけだものの存在を。
「退きたまえサイト!君なんかより僕の方が手馴れてるのだから!」
そう言ってサイトを突き離し、気安くクリスの手を握るギーシュ。ぶっちゃけ図々しいにも程がある。それにこれは「違う意味」で手馴れてることだ。その証拠にクリスも…
「サイト、なんだこれは?何とかしてくれ…」
めちゃくちゃ困り顔だった。
「ああ、君という美しい花に惹かれてしまった愚かなミツバチに、君の名前を教えてくれないか?」
「クリスだ。忘れてもらっても構わん」
「クリスか…どうだい?これから一緒に食事でも…」
ギーシュのギザなアプローチにいい加減イラッとしていくクリス。その眼はかなりすわっていた。しかも刀に手をかけようとしている。さすがに血を見ることになりそうだったので、サイトはある手を使う。
「あ!あそこでモンモンが!」
びくっ!
それを聞いた瞬間ギーシュはジェットエンジンのように去って行った。ふう…とため息をついたクリスはサイトの方を向いた。
「さて、悪い虫が去ったことだし、この学院を案内してくれないか?」
とその時だった。
「さあああああいいいいとおおおお!!!!!!!」
ルイズが鬼の形相で近づいてきた。一体何をそんなに怒ってるのだろうか?理由は至ってお約束のものだった。
「あんたって奴はまた知らない女に…!」
どうもサイトが他の女の子と話すこと事態が気に入らない。本能的にそれが染み付いてしまったようだ。
「おいおい誤解だって!」
その後、クリスへの学院案内を兼ね、ついでにルイズを静めるのに約一時間はかかった。
ようやく静まったところでサイトは、どうしても尋ねたかったことがある。
「なあ、クリスの師匠ってどんな人だった?」
厨房を案内した時、その中に是非入りたいとせがんできたクリスを招き入れ、椅子に座ったところで彼は尋ねてみた。
「そうだな…とても偉大な方だった。私に武士道を教え、武術を教えたのも彼だった」
「ぶしどう?サイト、ぶしどうって何よ?」
さっぱり意味がわからないと尋ねるルイズにクリスは意外そうな表情を浮かべる。
「なんだ?ルイズはサムライのサイトを使い魔にしてるのに、そんなことも知らなかったのか?」
その「知らなかったのか?」という、まるで当たり前のことを知らなかったと疑う言い方は、ルイズのプライドを刺激してしまった。
「サイト、ぶしどうって何よ!?今すぐ御主人様に教えなさい!」
「い、いやそう言われても…ルイズには難しすぎるって…」
実際サイト自身サムライをやっていたわけではないので、どう説明するべきか困っているのだ。
「あっ、済まない。忘れていたことがあった」
「忘れていたこと?」
「今日、アンリエッタに挨拶に向かおうとオールド・オスマンに言われてきたんだ。護衛はサイト、お前にお願いしたいが頼めるか?オールド・オスマンもお前やルイズならば頼れると仰っていた」
よほどクリスはサムライ−本人の認識で−であるサイトが気に入ったようで、逆にルイズはそれがサイトへのアプローチにも見えているせいか、彼女から唸り声が聞こえる。
「けけけ…もてる男は辛いねえ、旦那」
「相棒はそういう奴さ。新入り」
傍観者としてそれを楽しむ視線で見守る地下水にデルフもからかいじみた笑みを浮かべるように言った。
それはさておき、女の子一人にアンリエッタの元へ行かせるわけにもいかないし、ここはやはりルイズ本人に許可をもらうしかない。
「ルイズ、どうする?学院長から言われてるそうだし…」
「…仕方ないわね。サイトが私の見ていないところで変なことしないように見張る必要もあるし」
「変なこととはなんだ?」
何を言ってるのだ?不思議がるクリスにルイズは恥ずかしげに顔を赤くして怒鳴った。
「何でもないわ!それよりサイト、あのなんとかホークとやらを用意しなさい!」
「なんとか…ほうく?サイト、それはなんだ?
馬車は使わないのか?トリスタニアにはここから徒歩二日、馬では二時間以上はかかるらしいが…」
「まっ、まあ来てみればわかるから。後、乗ってる間に話の続きを聞かせてくれないか?」
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