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□夢魔が紡ぐ夜風の幻想曲・迷子の終止符と幾千の交響曲/File0
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サイトとの連絡後、シュウヘイはある人物と出会った。
「ハイネ・クラウザー?」
「独自調査を行ってるとの噂を聞いて、あなたになら私の話を信じてもらえると」
そのハイネと名乗る人物は、シュウヘイと同様に事件を独自に調査していると言った。
シュウヘイは直ちにサイトに連絡、サイトとルイズをあのストライフ家の屋敷前に集合させ、ハイネから話を聞くことにした。
集合し、ハイネはサイトを、正確にはサイトの持つ双眼鏡を見て驚愕の表情を露にした。
「き、君!それを一体どこで!?」
「どうしたんだ?」
シュウヘイが首を傾げると、ハイネはサイトの持つ双眼鏡を手にして答えた。
「これは自分の見たものすべてを記録するマジックアイテム…『グラスメモリア』!」
サイトの拾った双眼鏡、グラスメモリア。
それはこの事件に深く関係するものとハイネは語った。
「ちょうど今から百年前の皆既月食の時期、ストライフ家の屋敷にある男が滞在していました。
男の名は『ジェガン』。彼については素性が全くわからず、判明してるのは、彼が異国を転々と旅する放浪者だったことです。ジェガンには変わった特徴がありました。獣のような耳を持ち、しかもわずか一滴の水すらも恐れた。
ジェガンはストライフ家の令嬢ミディアと恋に落ちた。得体の知れない彼との交際をミディアの両親は反対しましたが、それでも二人の決意は固く、後に我が子を授かったそうです。
す。しかし、皆既月食の夜、突如現れた亜人にミディアは殺害され、しかもストライフ家の一族や家臣も命を落としたそうです」
「亜人…まさか!」
サイトの驚愕に呼応するようにハイネは頷いた。
「ええ、ちょうど今の皆既月食の時期に事件を起こした犯人がミディアを殺した。その亜人は通称『獣人』と呼ばれています。
その夜にジェガンは姿を消した…。
そのグラスメモリアはジェガンの所有物でした。ある来客がジェガンの旅に興味を示し、『一体どんな場所を旅したのですか?』と訪ねると、彼は『覗いてごらんなさい。私の旅が見えてきます』と言い、来客がグラスメモリアを覗き込むと、異国の城や砂漠の景色…
そして、黒い星が赤い輪郭で輝く姿が見えたそうです」
「日食を見たってこと?」
ルイズの質問にハイネは「おそらく」と言った。
「つまりこのグラスメモリアは、ジェガンの持っていた一種の記録媒体…」
グラスメモリアを手に持ち、サイトは呟いた。しかし、そこである疑問が浮かんだ。
この話だと、ジェガンの正体は、最近起こった殺人事件の犯人である『獣人』と言うことになる。
サイトが初めてグラスメモリアを覗き込んだ時、そのジェガンが獣化した姿があった。あの異形の腕がおそらくそうだ。
その獣化したジェガンが、なぜわざわざグラスメモリアで自分の手を見ていたのだ?

その後、ハイネは屋敷内で独自で過去の文献を利用した調査を開始し、サイトたちは今後の獣人への対策を話し合った。
「俺の予想では百年前の皆既月食の夜、ジェガンは獣化し恋人のミディアとその家族を殺してしまった。おそらくそれを自分でも気づいてない」
「ええ、ジェガンは確か水を極端に恐れた。水に触れると自我を失い、獣化してしまう特性を持ってしまっていたのよ。だけど、水に触れてしまった…」
シュウヘイの言葉に続くようにルイズが言った。
「でも百年もの間一体どこに?」
そのサイトの新たな疑問に、ルイズが答えた。
「このトリスタニアには、地下道が張り巡らされてるらしいわ。きっとそこでずっと眠っていたのよ。そして皆既月食のこの時期に目を覚ましたんだわ」
「そして町中にいた白いワンピースを来た女性をミディアと思って、次々と襲ってしまったわけか。でも、なぜ…」
ジェガンが獣化した自分の手を見た?いや、それとも…
サイトは再びグラスメモリアを覗き込んでみた。獣化したジェガンが自分の手を見たと言う一つの矛盾を明かすために。
すると、そこには驚くべき光景が見えた。
ナイフを持った男がジェガンとその背後で守られているミディアに近づいている。意を決したようなミディアはジェガンに何かを耳打ちすると、ジェガンは池の中に足を踏み入れるというあり得ない行動に出た。
瞬間、ジェガンは獣化し…
そこで貧血を起こしたようにサイトはグラスメモリアから目を離し、膝をついた。
「サイト、どうしたのよ?」
「…見えたんだ」
「え?」
「もう一人この屋敷に滞在していた人物がいたんだ」
その夜、獣人となったジェガンを待つべく、ルイズは池が真正面に見える玄関に、サイトは庭野茂みに、シュウヘイは木陰に隠れていた。
ルイズはにわかに信じられなかった。ジェガン以外の滞在者の存在に。
その滞在者はなんと…
ハイネだったのだ。だが彼らの会ったハイネはあの皆既月食の夜の事件から百年経ったハズなのに、初対面のときの様な若い姿、しか
ももうひとつ気づいたのは、そのハイネがジェガンとほとんど似た顔立ちだったのだ。
一体何がどうなっているのだ?とシュウヘイも首を傾げていた。
しばらくすると、獣のような人影がのしのしと池のほとりに近づいていく。
間違いない。獣人となったジェガンだ。
「ミ…ディア…」
自分の愛した女性の名を言い、その手に持っていた白い花をポトリと落とした。ミディアに渡すつもりだったのだろう。まず先に飛び出したのはシュウヘイ。獣人にディバイドセイバーを振って攻撃した。だが獣人もパワーでは劣らない。逆にしばらくのつばぜり合いの後、シュウヘイの剣を弾き飛ばした。
「っぐ!」
「エクスプロージョン!」
シュウヘイが戦ってる隙に呪文を唱えて虚無の魔法で止めを刺す。それが今回の作戦だった。凄まじい爆発が獣人に当たりはしたが、ダメージはあったものの倒すには至らなかった。
「そんな!」
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