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□File5
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グレイの指示を聞き、三体の怪獣はそれぞれの必殺技をタイラントにぶつけた。
〈超音波光線!〉
〈メルバニックレイ!〉
〈エレクトリックスパーク!〉
ゴルザの光線、メルバの連続光弾、バモスの雷の波動がタイラントに迫りくる。普通なら危機を感じるはずなのに、対するタイラントも、そのマスターであるグランデもまったく動揺するそぶりを見せなかった。
「タイラント、たっぷり吸い取ってやれ」
タイラントは大胆にも自らの腹を突き出した。だがこれが奴の狙いだった。ゴルザたちの攻撃が、タイラントの腹に吸い込まれているではないか。
「ばかな……全部吸収した!?」
「はい、ごちそうさまでした。タイラント。もうこのへっぴりを叩き落とせ」
タイラントの口に、灼熱の炎がみなぎり、まず地上のゴルザとバモスに向かって強烈な火炎を放った。
〈爆裂放射!〉
「「グアアアアアアア!!!」」
「っく…!戻れ!」
ダメージが半端ではない。このまま戦えばあの二体が…。危険を悟ったグレイは二体をバトルナイザーに戻した。だがタイラントは、今度は宙を飛ぶ、彼を乗せたメルバに向けて爆裂放射を撃ち込んだ。
「うあああああああああああああああ!!!!!」

「負けた…のか」
あんなちゃらちゃらした変な男に…。確かに変だが、とてつもない実力を持っているのは事実だ。あのタイラントを巧みに操ったのだ。只者ではない、と表現するだけでは物足りない。
「負けたって、何の話?」
「あ、あははは。な、なんでもないよ」
素振りもなんでもないと言うようにグレイは言うと、尻についた砂を払って立ち上がった。
「そうだ。せっかく助けてくれたんだから、お礼しなきゃ」
「お礼なんていいのに」
遠慮するジョゼットだが、それではグレイの気がおさまらない。しばしの思考の末、彼は不純なお礼を言った。
「じゃあ、デート一回ってのは?」
「え?」
もちろん本気で言った訳じゃない。ただの遊び半分だ。初対面であったばかりの相手が承知すると思うほどバカではないのだ。むしろ、IQは200、いや300だ!と言えるほど。
だがその返事は意外なものだった。
「『でえと』って、何?」
「………へ?」
さすがのグレイも間抜けな声を漏らすしかなかった。
「ごめんね。私、物心つく前からずっとここで生きてたから、外の世界のことよく知らないの。その『でえと』も多分常識…なのかな?」
「あ〜、わかんないなら気にしなくていいよ」
すると、グゥーッ…
グレイの腹から、誰もが聞き及ぶ音がした。そう、腹の虫である。
「お腹すいたの?」
「…多分」
ぶっちゃけ恥ずかしいが強がると笑われるだけである。以前ペンドラゴンで食事をとった時、自分の腹の虫を初めて聞いたものだから、虚勢を張るどころか激しく動揺し、それでクルー全員に笑われたものだ。
「ご飯、ここの人に頼んだらもらえると思うから」
「いいの?」
「うん。初めて外の世界の人との記念ってことで」
「サンキュー、ジョゼット!」
「39?」
いきなりなんの数字を言ってきたのだろうとジョゼットは思った。ハルケギニアには英語などないものだから、こんな反応をされても不思議ではない。
「あ〜、今のは『ありがとう』って意味なんだ」
グレイがそう説明することで、ジョゼットは納得した。箱入り娘の、初の異世界語は『サンキュー』。どこか面白みがあるかもしれない。
「なんかお互い、変わってるように見えるよね」
「全くだよ」
初対面にしては、なかなか話が弾んでいた。が、そこで彼はあることを思い出す。
ZAPのクルーたちだ。
「マズイ。そろそろ戻らないと」
「え?」
「オイラを待ってる仲間がいるんだ。だからいつまでもここにはいられない」
「それって…お父様とか?」
そのジョゼットの言葉に、グレイは一瞬眉を潜めたが、すぐ真顔で答えた。
「父さんは関係ない。母さんもオイラを産んで死んだし」
「ご、ごめん…」
ペコッと申し訳なさそうに頭を下げるジョゼット。グレイにとっては掘り起こしたくないことだと思ったのだろう。
だが、すぐ彼の親への認識とは全く角度の違うことを言った。
「でも羨ましい」
「なんで?」
「私、誰がお父様なのかお母様なのかわからない。ここの修道院のみんなも両親のいない孤児がほとんどいないし、だから君が羨ましく思えるよ」
「…」
逆に親がいなかったら、自分もジョゼットのように羨ましさを感じていたかもしれない。
そんなことを思っていたその時だった。
ズオオオオオオオ!!
とてつもない爆発音が二人のいる修道院近くに響いた。
「なっ、なに今の!?」
「まさか…」
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