GANTZ/ULTRASEVEN.AX(完結)

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岸本はスーツのパワーを込め、正面から面打ちのように、近くに落ちていたパイプで田中星人の一体を叩いた。
だが残りの一体が岸本を捕らえ、口に光を灯し始めた。
「や…!」
パイプでもう一度殴ろうにも肩を掴まれたせいで手が動かせない。
玄野は岸本を救おうと横からXガンを田中星人に向けて発射した。
だが一つ致命的な問題があった。Xガンの効果が現れるのに一定の間があるのだ。このままだと岸本まで殺られてしまう。しかしXガンの効果はすぐに現れた。田中星人は鉄のボディごと中身も破壊された。
「大丈夫か岸本!?」
「あ、うん…ありがとう…」
だが、さっき岸本にパイプで殴られた田中星人と、ジンに殴り飛ばされた方の田中星人が再び動き出した。
「この!」
ジンは再び身構える。いくらジンでも二体一変だと不味くもあった。
しかし、そこに一人の男が現れた。先ほどの衝撃波で一時は姿を消した加藤が一体の体を締め上げた。
「おおおおおおおお!」
加藤は締め上げたまま、バックドロップで田中星人の頭を中身ごと叩きつけた。頭に強い衝撃を受けた田中星人は、ボディから緑色の液体を垂れ流し、動かなくなった。
ジンも残った一体の田中星人の体を捕らえ、岸本に、落ちていたYガンを足で転がして渡した。
「岸本さん!今のうちに!」
岸本は頷くと、Yガンから発射されたワイヤーで田中星人を捕らえると、下のトリガーを引いて上へ送った。
「ふう…」
新手の田中星人たちに一時はどうなるかと思った。
(田中星人…地球では呼吸ができないからこんなヘンテコなロボットの中にいるのか?)
ジンは動かなくなった田中星人のロボットのボディに触れる。
「これで終わったのか?計ちゃん」
「さあ…残りがもういなかったら多分…」
「いや…まだ…います」
ジンが少し言い辛そうに言った。
「まだ…いるの?」
岸本が声を震わせながら尋ねる。西でも敵わなかったあの化け物を
また相手にすると思うとゾッとする。
「転送される直前、田中星人があるアパートに入るところを見たんです。おそらくそこが…」
「田中星人の…アジトってことか?」
加藤の言葉にジンはコクッと頷いた。
「計ちゃんは安全な場所にいるんだ。スーツ無しだと危険すぎる」
加藤は玄野を安全な場所に行くよう促したが、玄野は首を横に振った。
「俺は大丈夫だ。一緒に行かせてくれ」
三人はコントローラーに表示された田中星人の反応を頼りに、田中星人のアジトを突き止めた。
「やはり、ここだったんだ」
ジンが転送される直前に見たアパートが目の前にそびえている。この中に残った田中星人たちがいるのだ。
「僕が入ってみます」
ジンはXガンを手にアパートに入ろうとしたが、玄野がそれを止め
た。
「…俺が行く」
「!計ちゃん無茶だ!」
「そうよ!玄野君、やっぱり安全な場所に…」
加藤と岸本は反論した。スーツ無しでも勝てるかどうかわからないのに彼は無謀な挑戦をすると言うのか?
だが玄野は加藤の制止を聞かないままアパートの中に入ってしまった。
「計ちゃん!」
玄野はアパート内の階段を登っていった。
(スーツ無しだからってマジでビビってたな。情けねえ…今度こそ俺はヒーローだって証明してやる)
Xガンを手に彼は二階の廊下にたどり着いた。
すると、二階の六つの扉が開き、そこから田中星人たちが出てきた。
(ろ…六人…!)
「「「「「「裕三君?」」」」」」
一斉に玄野に尋ねてきた。さっき怒らせたこともある。敢えて乗ってみた。
「あ…はい。裕三です…」
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙の中、玄野は正面の扉の部屋の中に何かがいるのを見た。
背筋が凍ってしまった。まさに化け物と言える巨大な鳥が玄野に背を向けた状態で、暗い部屋の中テレビを見ていた。そいつの周りでは卵から小さな田中星人の雛が飛び出していた。
(…な…なんだよあいつ…)
足が震えるのを感じる。汗がぬるりと流れるのを感じる。
(だ…ダメだ…!こいつらが油断してる間に…)
田中星人たちは「カンタロー」とか「鹿児島の名産は?」と意味不明なことばかりを呟いている。
玄野はXガンを構え、ゆっくり田中星人のボスに気づかれないよう
歩き出す。
(やれる…今なら…!)
「ギゥ!」
「う!」
玄野は目の前の敵に目が行きすぎてたせいで、足元を歩き回ってい
た雛を踏んでしまう。その雛は死ななかったものの、慌てて鳴きな
がら走り回りだした。
今ので田中星人たちが怒りの表情を表した。
そして、テレビを見ていた田中星人のボスがこちらに気づいてしま
った。
(やべえ…!)
ドクン!ドクン!ドクン!
心臓が凄まじく高鳴りだす。
天井を突き破ってしまいそうなほど巨大だった。口からチューブを
通して息をしているようだ。
フシュウウ…
田中星人のボスは生暖かい息を玄野に吹き出す。
「くそ…死んでたまるか!」
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玄野は田中星人のボスにXガンを突き付けた。
「動くんじゃねえ!こいつ殺るぞ!」
人質のつもりで他の田中星人たちに言うが、田中星人たちはお構い無しに口に光を灯し始めた。
「イイイイイーーー!」
(こいつら…)「死んでたまるかあああ!」
Xガンをがむしゃらに撃ち始めた。田中星人たちにはなかなか当たらず、壁がXガンの光で明るくなるだけだった。
「イイイイイーーー!」
金属音で鼓膜が破れそうだ。西のように目を潰されるわけにはいかない。玄野はなんとか目を閉じながら必死にXガンを撃ちまくる。
すると、玄野を支えていた床が突然崩れだした。
「うわああああ!」
一階に落ちたが、辛うじて背中をうっただけで済んだ。しかし、アパートがミシミシと音をたて始めた。
「やべえ!崩れる!」
玄野は目の前の出口に向かって必死に走り出した。このままだと下敷きになる。早く出なければ。
「うわああああ!」
アパートはガシャアアン!と音をたてて崩れ落ちた。
「計ちゃん!大丈夫か!?」
玄野はギリギリで脱出に成功した。
「や…やったぜ!スーツなしでしかも俺一人でな!」
ハアッハアッ!と息を弾ませていた。本人も生きた心地はしなかったのは間違いない。だが田中星人を倒したという興奮が彼を高揚させていた。
「な…なんの音だ!?」
今のアパートの倒壊を気づかない人はいない。近所の人たちが集まってきた。
「やばい!ズラかるぞ」
加藤の先導で一同は一旦その場から離れた。見つかったらマスコミの餌になってしまう。
近くの公園に着いたところで一同は止まった。
「そろそろ転送されるはずだけど…」
岸本は早く帰りたがっていた。こんな場所ではいつまでもいられない。
「!」
ジンはコントローラーにまだ赤い点が一つ残っているのを見つけた。
「いえ…まだ一つ…」
「まさか!あいつらなら…ってうわああああ!」
玄野は突然空に浮いた。いや、浮いたのではない。
あの田中星人のボスに肩を掴まれでしまったのだ。
「玄野君!」
「計ちゃん!」
「玄野さん!」
三人は玄野を捕まえた田中星人を撃ち落とそうと思ったが、玄野に当たる可能性が大きすぎて撃てなかった。
「ってえ!離せよ!」
玄野の肩に田中星人の足の爪が食い込む。
「死んでたまるかよ!」
玄野は無我夢中で田中星人のボスの口から出ていたチューブを無理やり引っ張った。
「ギゥアアアア!!!!」
田中星人のボスは呼吸ができなくなり、もがき苦しみながら玄野を離してしまった。
「うわああああ!」
解放されたものの、田中星人のボスが空高く飛んでいたせいで玄野は空に投げ出された。
「!」
加藤たちの隙をついてジンはスーツの内側から「アックスアイ」を取りだし、装着して変身した。

「うわああああ!!」
「計ちゃあああん!」
このままだと玄野は地面に激突してしまう。
だが、その玄野を赤い戦士がなんとか抱えて地面にゆっくり下ろした。
「ジン…」
赤い戦士、ウルトラセブンアックスはコクッ…と頷くと、息ができなくなったにも関わらずこちらに再び襲いかかってきた田中星人のボスを思い切り蹴り飛ばした。
「ダアッ!」
「ギェ!?」
田中星人は呼吸ができなくなってる。
(今のうちに!)
セブンアックスは両腕をL字に組んで必殺光線で止めを刺した。
〈フレアショット!〉
「デュア!」
「ギャアアアアア!!!!」
田中星人は爆発四散し、完全に消え去った。
「終わった…のか」
玄野たちはガンツの部屋に転送された。
セブンアックスも変身を解くと、頭から消えていった。

「ずいぶん減ったな…」
部屋に転送された加藤は言った。今思えばあの西まで死ぬとは予想外だった。
『それぢわちいてんをはじぬる』
ガンツからチン!と音が鳴ると、まずは岸本の点数が表示された。

巨乳
5てん
かとうちゃ(笑)を見すぎ
トータル5てん
あと95てんでおわり

「!//」
気恥ずかしそうに岸本は加藤の目を気にし始めた。
「?」
加藤は鈍感だからなのか岸本がなぜモジモジしてるのか理解できなかった。

かとうちゃ(笑)
5てん
トータル5てん
あと95てんでおわり

「え?あれほど戦ってたのに?」
岸本は少なくとも自分より活躍した加藤が自分と同じ点数であることに納得いかなかった。
「いや、実際死なせたのは一体だけだ」
次にジンの点数が表示された。

ジン
8てん
トータル18てん
あと82てんでおわり

(田中星人のボスの点数か…)
最後に玄野。

くろの
35てん
トータル35てん
あと65てんでおわり

「すげえ計ちゃん!」
「35てんも…!」
岸本と加藤は玄野の高得点に目を丸くした。
(やればできるじゃん俺!)
玄野は達成感に満たされていた。
そうだ、自分には大きなことを成し遂げるだけの力がある。もしかしたら変身したジンも越えられるかもしれない。
だがジンはどこか、玄野の顔には歪みが混じったようにも見えていた。
(確かに、玄野さんはすごい。ただの地球人とは思えない。だけど…)
彼は玄野に対してどこか不安だった。
「そう言えば、100点とったらどうなるのかな?」
岸本の一言で、一同は首を傾げた。西が生きてるうちに尋ねたらよかった。
いや、まだ一人知ってるやつがいた。
「ガンツ、100点とったらどうなるんだ?」
玄野が尋ねると、玄野の顔の絵が消えて、別の表示が出る。

100てんめにゅ〜
1 記憶をけされて解放される
2 新武器をつくってもらえる
3 死んだ人間を一人生き返らせる
「死んだ人間が…生き返る?」

戦え…
戦って強くなれ…
どこからか、何者かが天井から見つめるように四人を見下ろしていた。
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