ウルトラマンアグル 英雄の子と魔導師たち(完結)

□#6
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一方で地上。
学校帰りに街を歩いていたなのは。昨日ソラは探そうと奮闘していたのだが、結局見つからなかった。
アリサとは未だ仲直りできないままのため、今日も彼女は一人で下校していた。
そんな時、街のビルに設置された巨大モニターが目に入った。映像に映されていたのは、あのウルトラマンアグルの写真だった。
『以前この海鳴市を襲った怪奇現象と怪獣に立ち向かった青い巨人ですが、政府がこの巨人の見方は賛否両論となっています。ある人は救世主、またあるものはいずれ自分たちに牙をむく悪魔ではないか…』
ニュースキャスターが視聴者に向けて説明する中、なのはの横から数人の女学生の話し声が耳に入った。
「あの預言者って、すごく当たるって評判なんだって」
「ええ〜、マジ?」
「あたしさ、占いの通りにしたら、寄りを戻したかった彼とまた…」
「そうそう、私なんか宝くじで…」
預言者…?
すると、噂すれば影、モニターの方でも…。
『現在海鳴市にて、百発百中の結果を出す占い師がいることが話題となっております。その占い師は「預言者」と讃えられ…』
女性というものは男性以上に占いなどを信じる傾向がある。なのはもまた、その預言者という存在が気になった。
「あの!」
女学生と引き止め、その預言者の場所を彼女たちから聞いたなのはは、その預言者のもとに向かった。

預言者は商店街の路地に、長蛇の列を構えていた。なのはも占いたくなってその列に並んでみる。とはいえ、かなりの列だ。一時間近く並び待ちをすることになってしまった。
「あなたにはこれからいいことが降りかかります。あの角を曲がって…」
「ありがとうございます!」
(う…もう家に着く時間過ぎちゃったよ…。お母さんとお父さん、怒ってるかな…)
夕日がもう完全に沈みかけている。興味本位でこんな場所に行くとは、自分もずいぶんと不良娘になってしまったものだと思ってしまう。
それから10分、ようやくなのはの番が来た。
「や、やっと…」
待ち時間だけでずいぶんと疲れてしまった。
「お嬢さん、こんな時間まで一人で出歩いて大丈夫なんですか?」
占い師はフードをかぶって顔の半分を隠していた。机の上には水晶玉。昔ながらの胡散臭い水晶占いのようだ。でもよく当たると評判だから腕は確かなのだろう。この初対面の人にまで心配かけられるとは、相当なものだ。
とにかく気を取り直して尋ねたいことをぶつけてみることにした。
まず、自分のことだ。すずかがメールで『アリサちゃんのことは任せて』と言ってくれたのだが、アリサとの仲は未だ改善されないまま。いずれ仲直りしなければ彼女との仲も自然消滅してしまう。それはどうしても避けたかった。
どうすれば仲直りできるか、尋ねてみると、預言者はこう答えた。
「ご安心ください。あなたとお友達はいずれ仲直りできますよ」
そう言われ、なのははホッとした。でもまだ尋ねたいことがある。フェイトのことや、あの青い巨人のこと。
「あの、友達になりたい女の子がいるんですけど…どうすればその子と仲良くなれますか?とても寂しそうな目をしていて…」
次はフェイトのことだ。占いで分かることなんてないだろうが、やはり気になってしかたない。せっかくなので彼女のことも、評判であるこの占い師に聞いてみた。
「それと、あの青い巨人さんは…」
ぴくりと、占い師は眉をひそめた。そして、次に占い師から投げかけられた言葉は、なのはの耳を疑わせた。
「残念ですが、あなたは彼女と仲良くできることなどないでしょう」
「え…」
「それにあの青い巨人ですが、彼は今救世主として崇められていますが、近いうちに人類の敵となりうるでしょう」
「そんな…!!」
そんなはずがない!信じない!そう反論しようとしたその時だった。
ウーーーーーッ!!!
街中に警報が鳴り響いた。そして、近くのビルで、爆発が起こったのである。
街の人たちはたちまちパニック状態となり、悲鳴を上げながら逃げ出していく。
『なのは!』
念話でユーノの声が聞こえてきた。このパニック状態が幸いして誰も気がつかなかったのか、頭上からユーノがなのはの肩に降りてきた。
『ユーノ君、この騒ぎはなんなの!?』
『それが…とにかく人目のつかない場所でバリアジャケットを!』
頷いたなのはは、ちょうど目に入った、近くの建物の間に行き、周りに誰もいないことを確認すると、首から下げていたレイジングハートを掲げてバリアジャケットを身にまとった。
すぐ飛行を開始し、ビルの上からなにが起こったのか確認する。
それは、彼女にとって信じがたい光景だった。
「どう…して」
力が抜けるような感覚だ。まるで、信じていた者に裏切られたような…。
――近いうちに人類の敵となるでしょう。
あの占い師の言っていた通りだった。
「ディア!」
自分を一度救ってくれたはずの青い巨人、ウルトラマンアグルがビルにいくつもの光弾を放って街を地獄絵図に変えてしまっていたのだ。

一方…。
ソラが言っていた、フェイトたちの向かった先『時の庭園』は次元の狭間、どこの世界にも属さない場所に存在する。
「ここが、時の庭園…」
ソラは入口前にてその全貌を見て呟いた。浮遊している岩の上にまるで悪の親玉が居座っているような屋敷。正直いい場所、とは言えそうになかった。
「もし、ここに俺が追っている奴がいるとすれば…」
『マスター、本当によろしいのですか?』
ふと、アグレイターがソラに声をかけた。後に続くように、彼が持っているバルディッシュも口を開く。
『もしあなたが目的を果たせば、マイ・サーともう…』
そう言われ、ソラは一時口を閉ざしたが、すぐ首を横に振った。
「…今更なにを言う。今のアイツは過去あいつで、俺の知るフェイト自身じゃない。それに、俺が知ってるフェイトはもう俺の手の届かない場所の人だ」
『『……』』
「行くぞ」

ビシッ!
光がわずかに差し込まない、暗い部屋にて、鞭でなにかを叩く音が生々しく響いていた。
部屋の中央、フェイトはどういうことか傷だらけになっていた。吊るされる形で両腕を拘束され、バリアジャケットを身にまとっているのに破れた箇所からは血が滲んでいる。
目の前には、ねずみ色の髪をした女性が目を釣り上げて鞭をまた一度振り上げていた。
「あれだけの期間を与えておいてたったの四つ…」
「…ごめんなさい、母さん」
怯えているフェイトに、彼女の母『プレシア・テスタロッサ』は容赦なく鞭を振るってフェイトの体を痛めつけた。
「そんなに、母さんを悲しませたいの…?」
「っあ…!!」
乾いた音は、そらから幾度か響いた。その度にフェイトの痛々しい悲鳴が轟き、部屋の外で待機させられていたアルフは心苦しそうに握り拳をつくっていた。
本当ならこんな愚行、自分がとめてフェイトを助けたかったのだが、そのフェイト本人がそれを拒んだのだ。自分が悪いから、そう自分に言い聞かせてプレシアに過剰すぎる罰…虐待を受けていた。
(酷い…酷すぎる)
フェイトはあの女に言われたとおり、ジュエルシードを集めている。期間を与えておいてわずか四つとプレシアが言っているが、本来ならわずか9歳の少女ができる仕業ではない。
なのに、プレシアはまるでフェイトを奴隷のように…いや、実質的あの二人はとても親子と言える関係とは言えない。フェイト自身はれっきとした血の繋がった親子だと思っているが、もはや奴隷と利用者だ。
とその時、彼女の目にいるはずのない人物が、ソラが目に映った。
「あんた…なんでここに!?」
「!」
驚愕するアルフの声に気がついて、ソラも彼女の方を向いた。一度逃げだろうとしたソラだが、追いついた彼女に手をつかまれた。
「いや、そんなことはいい!ついて来てくれよ!フェイトを助けてやってくれ!」
「お、おい!」
アルフに連れられるまま、ソラはプレシアたちのいる部屋の扉に突っ込んだ。
部屋に入ったとたん、傷だらけの状態で横たわるフェイトと、そんな娘を見てなんとも思っていない様子で見下ろしていたプレシアが目に入った。
「プレシア…」
「あなた、入るなと言わなかったかしら?それに余計なネズミを一匹連れてきてまで…」
憮然とした態度でプレシアはアルフに言う。
「あんたこそ…なんでこんなマネができるのさ!フェイトは、あんたの娘なんだよ!」
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