ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File9
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「…逃がしたか」
「俺たちも脱出したかほうがいいぜ。多分そろそろ敵が来るぜ」
「ああ、そうだな…」
ゼロはウェールズの遺体に駆け寄って祈りを捧げ、そして教会を出
て空へ飛んだ。
「デュア!!」
アルビオンの空を飛び立つ時、レコンキスタの軍勢が、わずか三百の王党軍を容赦なく殲滅する光景を目の当たりにした。
「…くそ」
どこの世界でも戦いばかり、しかも今自分が見てるのは、同じ人間
同士の争いだった。
(どうして殺し合うんだよ…。殺した先に、何を手に入れたんだ…)
より一層戦争に対する憎しみを募らせるゼロだった。

ゼロとサイト。
この二つの人格が一つになる前から、一見好戦的なゼロも本来戦いを好んでたわけではない。
ゼロとしての記憶の中で以前、ゼロは光の国に侵入した侵略者の機械兵器に仲間を人質にとられたことがあった。他にもウルトラ戦士たちは大勢いたが、迂闊に手を出せない状況にあった。その時のゼロは、その機械兵器の中にいる侵略者の目を欺き、遠くから機械兵
器の露出された動力部を光線で狙い撃とうとしたが、捕まった仲間の存在がそれを阻んでいた。しかもその機械兵器には自爆機能が着いていて、いずれ光の国の一部が大爆発、たくさんの死傷者を出す緊急事態。撃たなければ光の国の人々が傷つき、撃てば仲間が死ぬ。
『ワハハハ!残念だったな!いずれ我が同胞たちが貴様らを消しに来るぞ!』
勝ち誇る侵略者だったが、
『!』
〈デスシウム光線!〉
『ハッ!』
その隙にベリアルが仲間を救出、機械兵器の動力部を破壊して、かろうじて自爆する前に侵略者を倒した。
その後のゼロは、別の仲間たちから非難された。
『ベリアルさんがいたからよかったものの、あそこで倒しておかなかったらどこまで被害が拡がったか!』
捕まった仲間は、『俺のミスだから気にするな』と言ってはくれたが、自分の甘さが他の仲間を傷つけることになりかけたことにゼロは苦悩した。
その後、ベリアルと二人で話をした。
『ゼロ、お前の射撃なら奴を早い段階で撃つことができたはずだ』
『…』
『盾にされた仲間を撃ってしまう恐れによるためらいがあった。違うか?』
ゼロよりも長い間戦い続けてきたベリアル。ことによっては見るだけで気づくこともあるのだ。
『ベリアルさん、俺は…』
ゼロが何か言おうとしたが、ベリアルが自分の言葉で遮った。
『いいかゼロ、我々ウルトラマンには引き金を弾くのを躊躇ってはならない時がある。それが弱き者の剣となり盾となる我々の運命だ。忘れるな』
「引き金を弾くのを躊躇うな…か」
ゼロが修行をサボることがあったのは、キツいとかそれ以前に、自分が戦うことで、仲間や相手を傷つけてしまうことの恐れによるものでもあった。
だが、いずれ彼がまた戦う道を行くことになるのは、必然的なことだった。

ロサイスの港町でルイズたちと合流したサイトは、船に乗ってトリスタニアで待っているアンリエッタの元へ向かった。
途中、キュルケに抱きつかれたりルイズに涙目で怒鳴られたりしたが、とにかく無事を喜びあった。
そしてトリスタニアに戻り、ギーシュ、キュルケ、タバサは用意された部屋で待ち、サイトとルイズはアンリエッタの部屋へ入った。
「ルイズ!よかった!無事だったのね」
アンリエッタはルイズたちの無事を知ってホッとした。
「件の手紙は無事に…」
ルイズはポケットからウェールズが持っていた手紙を渡した。
「よかった。やはりあなたは私のお友達だわ。ところでワルド子爵は?」
「ワルドは…裏切り者でした」
「え!?」
アンリエッタは驚きを隠せなかった。ワルドは王室でも名が知れ、信頼もされていた人物。そんな大物の貴族が裏切りなどアンリエッタには信じられないことだった。
「まさか…あの子爵が裏切り者!?魔法衛士隊の隊長が…」
ルイズは学院を出てから城にたどり着くまでの経緯を簡潔に説明した。
「ワルドは私が結婚を断ると手紙を奪おうとしました。そしてウェールズ皇太子を…」
言葉を詰まらせるルイズ。その先の言葉を理解したアンリエッタは、ボロボロと涙を流し、目を伏せた。
「裏切り者を使者に選ぶなんて…私がウェールズ様のお命を奪ったようなものだわ…」
「いずれにせよ皇太子は迷惑かけないため残るつもりでした。姫様のせいじゃないですよ」
サイトは宥めるように言った。
「迷惑なんていい、亡命して欲しかった…」
「勇敢に戦い勇敢に死んでいった、そう伝えてくれと言ってました」
ルイズはウェールズの遺言をアンリエッタに伝えた時、彼女は涙を拭った。どこかその目は暗く、沈んでいた。
「殿方の特権ですわね。残された女はどうすればよいのですか?」
「もっと強く説得すれば…」
「いいのよルイズ。あなたの役目は手紙を取り戻すこと。これでゲルマニアとの同盟が成ります。もう大丈夫。危機は去ったのですよ」
「…あの姫様、水のルビーをお返しします」
ルイズはポケットから水のルビーも取り出し、彼女に渡そうとしたが、アンリエッタは首を横に振り、そのルイズの手を引っ込めさせる。
「いえ、これはあなたにあげるわ」
「でっ、でもこんな高価な品、私には…」
「私がいいと言ってるのです。私からのせめてものお礼です。受け取ってください」
それから受け取れない、受け取れのやり取りが少し続いたが、ルイズは結局折れて水のルイズを受け取った。
「…はい、ありがとうございます」
アンリエッタは窓の外を眺め、強い眼差しを込めて言った。
「あの人が国を、私を想い、勇敢に死んでいったのならば、私は勇敢に生きてみようと思います」
その時のサイトは、心の中で自分を責めていた。もし、早くルイズと共にアルビオンでウェールズに会い、無理やりにでも連れて帰れたら、アンリエッタは悲しみを抱くことはなかった、と。
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