ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File8
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ニューカッスル城の大広間にて、アルビオン王党派最期の宴が始まった。
アルビオンの貴族たちは明日の辛さを紛らすために楽しむフリがルイズには耐えられなかった。
やはりもう一度話をしよう。ルイズはウェールズの部屋を尋ねた。彼の部屋に入り、ウェールズは彼女を目の前のソファゆ座らせ、茶を差し出した。
「どうしたんだい?」
「皇太子様は、死ぬのは怖くないのですか?」
「僕らを案じてくれるのか。もちろん怖いさ。だが、我々には義務がある。あの賊軍にアルビオン王国は弱者でないのを示さなくてはならないのだ。貴族である君にも、わかるはずだ」
「勝ち目がないなら逃げてもいいじゃないですか!それに愛する人のために生きるのもまた義務じゃないですか?」
身分を越えた幼なじみのためにも、必死に説得しようとするも、ウェールズは頑なに拒んだ。
「僕が亡命すれば貴族派が攻め入る口実を与えるだけだ。僕も彼女を悲しませたくないが仕方のないことだ。アンリエッタに伝えてくれ。ウェールズは勇敢に戦い、勇敢に死んでいったと。それで十分だ」
ウェールズはそう言って部屋を後にした。

〈ワイドゼロショット!〉
「ジュア!」
「ヌグオァアア!!!!」
ゼロは渾身の力を振り絞ってニセエースを必殺光線で木っ端微塵に破壊した。
しかし、エネルギーは残り少ないせいでカラータイマーが点滅を開始した。
ピコン、ピコン、ピコン…
光線を放ち終えたところで、ゼロは岩壁に叩きふせられた。
「ッアア!」
ゼロはわずかなもがきも許されず、岩の壁にニセウルトラマンの蹴りで押さえつけられ、ニセセブンのアイスラッガーを首元に突きつけられたせいで身動きがとれなくなった。
君では、ルイズを守れない。
ははは…結局ワルドの言った通りかもな。
よくよく考えたら、同化してから自力で勝ったことなんかほとんどなかったよな…
自分一人じゃ、どこまでも非力だったんだろうな…
誰もが手と手を繋ぎ合わせられる世界なんか、結局できるわけなかったんだ…
親父、母さん…
ハルナ…
ゼロは自らの死を悟った。
「ダアアッ!」
ニセセブンのアイスラッガーが、ゼロに止めを刺そうとしたその時
だった。
「「!?」」
突然ニセセブンたちに銀色に輝く槍が投げつけられ、ニセセブンた
ちが避けると同時に地面に突き刺さった。
「これは…相棒の槍!?」
「え?」
ゼロは宙を見上げると、真っ赤なボディの戦士が、上等なマントを羽織ってこちらを見下ろしていた。
「最後まで諦めるな。俺との修行の日々を思い出せ、ゼロ!」
ゼロの師で、ウルトラ兄弟七番目の紅き獅子、ウルトラマンレオ。
「あいつは…!?」
「れ、レオ!?」
バッ!とマントを脱ぎ捨て、レオは身構えた。
「イヤア!」

ルイズは結局説得に失敗、部屋へ戻っていた。もし、自分がウルトラマンになって彼らを助けれたら…などと思っていた。だがウルトラマンは人間同士の戦いに関与してはならない。サイトも彼らを助けたいと思っていたのだろうが、きっと思い留まざるを得なかったかもしれない。
(サイト、あんただったらどうしてたのよ…)
こんな肝心な時に、サイトはどこに行ってしまったのだろうか。すると、彼女を見つけたワルドがこちらに歩いてきた。
「ルイズ、部屋に戻るのかい?」
「ええ…」
「君に言わないといけないことがある。明日ここで君と結婚する」
ルイズは驚きを隠せなかった。なぜ…
「どうしてこんなときに!?」
「皇太子も承諾してくれたよ。婚姻の媒酌を引き受けてくれた」
「どうしてよ…どうしてこんなときにそんな話…」
ルイズは涙ぐみながらワルドを睨んだ。
「皇太子は、せめて僕たちを祝いたいと仰った。君たちには、きっと風の加護のある未来が待ってるから、とね」
「ワルド…」
ルイズはワルドの服を掴み、彼の胸の中に顔を埋めた。
どうしてだろうか。なぜ自分はワルドに抱きついてるのか、誰でもよかったのか、その時のルイズにはわからなかった。
「どうして皇太子様も他のみんなも死を選ぶの?ワケわかんない。この国嫌い…早く帰りたい…みんな自分のことしか考えてない…」
「ルイズ…」
ワルドは優しくルイズを抱き締めた。
「彼らの死を無駄にしないこと。それが僕たちのやるべきことなん
だ」
そう、無駄にはしないさ…ルイズを抱き締めていたワルドは、どこか悪意に満ち溢れた笑みを浮かべていた。
ルイズがそれに気づくことはなかった。

「ハッ!デュア!」
「ムン!イヤア!」
巧みなコンビネーションでゼロとレオはニセセブンとニセウルトラ
マンを圧倒していた。
「ゼロ、こいつらに構ってる暇はない」
「だが、この次元の狭間から出る方法は…」
「手ならある。俺とアストラがよくやるように、ダブルフラッシャーでこいつらごと次元の壁に穴を開ければいい」
「簡単で助かった!よし、行くぜ!」
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ゼロはレオの前に屈み、レオはその後ろに立った。
そして、ゼロの合わせた手をレオは挟み、その二人の手から、破壊力抜群の合体光線が放たれた。
〈レオゼロダブルフラッシャー!〉
「「ジュア!」」
〈スペシウム光線!〉
〈ワイドショット!〉
「シャ!」
「デュア!」
ニセウルトラマンたちも同時に光線を放って押し退けようとしたが、ゼロとレオの合体光線に勝てず、そのまま光線を受けて爆散した。
そして、二人の合体光線は次元の狭間の壁に、巨大な穴を開けた。
「ったく、真面目に修行すれば、途中で諦めたりしなかったものを」
「はは…ごもっとも。でもレオ、助かったぜ!帰ったら、真面目に修行すっから頼むよ!」
「ふん、言ったからには覚悟しておけよ。さあ行け、ゼロ!」
二人は次元の狭間から脱出した。
アルビオンの港街ロサイス。そこでようやく次元の狭間を脱出したサイトはキュルケたちを待っていた。
おそらく、彼らはこの港町にやって来るはずだ。王党派と貴族派の争いのせいで、ここしかアルビオンと地上を繋ぐ航路はないらしい。
「ふう、ロボットとは言え、ウルトラ兄弟を相手にするのがあそこまでキツイとは思わなかった…」
きつそうにゼイゼイと呼吸をあらげるサイト。
「にしても、あれが相棒の師匠か?すっげえ豪快な感じのウルトラマンだったな」
「だろ?光の国でもかなりの鬼コー…ち?」
左目の視界が、なぜかぼやけ、見えなくなっていた。
「なんだろ?左目が…」
「どうした相棒?」
左目に映っている景色が、港町ではなく、なにやらどこかの建物の内部のものに変わっている。
「教会?それにワイドともう一人誰かが見える…」
「相棒、ルーンが光ってるぞ。もしかしたら使い魔としての能力じ
ゃねえか?」
サイトは言われて左手のルーンを見ると、確かに青く光り輝いている。
使い魔は主人の目となり耳となる。そんなことを最初、使い魔の説明で聞かされた記憶がある。
「ルイズ…」
なにやら嫌な胸騒ぎが彼の胸にモヤモヤと沸いてきた。
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