ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File7
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サイトらは桟橋へとたどり着いた。よかった。まだ船は出港していない。
「よし、急いで乗り込むんだ」
まず最初にサイト、ワルド、最後にルイズが乗り込む。しかし、ルイズは慣れない長距離を走ったせいで息が切れていた。
「ルイズ、早く上がれ!」
「はあ…はあ…」
その時、突如ルイズの背後から白い仮面を身につけたマントの男が現れ、ルイズを捕まえた。
「きゃあ!?」
ワルドはすぐ杖を引き抜き、風の魔法で仮面の男に攻撃した。
「エアハンマー!」
「っ…!」
仮面の男はルイズを離し、ルイズはワルドの腕の中に落ちた。
「怪我はないかい、ルイズ?」
「だ…大丈夫…」
ルイズの安否を確認したサイトはデルフを引き抜き、港近くの地に
降り立った仮面の男の前に立った。
君ではルイズを守れない。そのワルドの言葉は、サイトに無力感を感じさせなかった。むしろ、彼をいきり立たせていた。すると、突然マントの男は自らのマントを脱ぎ捨てた。
「なっ!?」
その姿を見たサイトは、驚きを隠せずにいた。
「テクターギア!?」
その仮面の男は、すでに人の姿をしていなかった。どこか、変身したときの自分の体と似た体つきの上に、鎧を身に付けている。その鎧は光の国の訓練用アーマー、テクターギア。ゼロもこれを使用したことがある。自らの自由を奪われた厳しい環境の元での訓練には重宝されている。
なぜそんなものを奴は持っているのだろうか。奴は黒い体つきをしているため、さしずめ『テクターギア・ブラック』といったところだろうか。
「ワルドさん、ルイズと一緒に行ってください!俺も適当に撒いたらすぐ向かう!」
「ちょっとサイト!」
ルイズは反対しようとしたが、ワルドはそれを止めた。
「ダメだ、もう出発の時間になる!」
もう船はアルビオンに向かって出向し始めて、地上を離れ始めていた。
「これはこれで好都合だな…」
サイトはブレスレットからウルトラゼロアイを取り出そうとしたが、テクターギア・ブラックはこちらに手をかざし、そこから放った光でサイトを包み込んだ。
「うわ!?」
目を開けると、そこはどこなのかもわからない場所だった。だが、何かと空に浮いた感じがする。
それにしても、さっきのテクターギアを身につけた戦士は何者なのだろうか。
いや、今は現状を把握するのを優先しなくては。
「ここがアルビオンなのか?確かギーシュの話によると霧と雲に覆われているって」
「多分な」
「でも、街が見当たらないな」
回りは森と草木でだけしかなかった。街明かりはおろか、人がどこかで騒いでる感じもしない。
「相棒…なんか匂うぜ…」
「…ああ」
サイトはデルフを抜いた。すると、茂みの中からなにかがサイトに襲いかかってきた。
「うわ!?危ねえ!」
なんとかよけた。一体何が襲ってきたんだ?サイトは目を凝視させると、妙な形をした蜘蛛が目の前にいた。
「こいつ…グモンガ!」
宇宙蜘蛛『グモンガ』。猛毒を持つ巨大なクモだ。
「グモンガ?」
「だとしたら…ここはアルビオンじゃない!」
「アルビオンじゃねえだと!?だとしたらここはどこだ!?」
「ベル星人の…疑似空間だ」

その頃キュルケたちは、ゴーレムと戦っていた。
タバサは風の魔法で牽制し、ギーシュの魔法『錬金』でゴーレムを油まみれにし、そこにキュルケが炎の魔法を叩き込んだ。
「フレイムボール!」
ゴーレムは炎に包まれ、崩れ落ちた。
「やった!やったぞ!」
ギーシュははしゃぐように跳び跳ねた。
「喜ぶのは早い!ダーリンたちを追わないと…」
先を急ごうとするキュルケだったが、タバサはそれとは逆の方を向いていた。
「タバサ、どうしたのよ?」
気のせいか、彼女はどこかに何者かの気配を感じていた。
「何でもない…」
三人はサイトたちを追うことにした。
「…」
フーケは物陰から三人の後ろ姿をじっと見ていた。実はフーケ、あることを脅迫されたせいでアルビオンの反乱軍に無理やり参入されたのだ。
(テファを、頼んだよ。シュウヘイ)

その頃、ベル星人の疑似空間。サイトはグモンガと戦っていた。グモンガは毒ガスをサイトに向けて吐きだした。
「やば!」
サイトは急いでパーカーの帽子をマスクのかわりにして口をふさいだ。
「キエエエ!」
サイトは毒ガスが消えたところを、すぐさま剣を振ってグモンガを切り裂いた。
「おらあ!」
「キエエエ…」
グモンガは真っ二つに切り裂かれ絶命した。
「なんとかすぐに倒せた…毒ガス吸って死ぬところだった」
「いやぁ使われてる俺っちもぞっとしたぜ」
だが喜ぶのもつかの間、
キィーーーーーーーーーン
「ぐっ、あ…!?」
突然鼓膜を破るような怪音波がサイトを襲った。耳が痛すぎてサイトは思わず耳を塞ぐ。
「相棒、大丈夫か?」
「あぁ…とうとう奴が来たようだな」
サイトが遠くを見ると、そこには彼の父親、ウルトラセブンを苦しめた、音波怪人『ベル星人』がいた。
「ベル星人…やっぱりいやがったか…」
サイトは耳を押さえていた。だが耳をふさいでもベル星の怪音波がサイトを苦しめた。視界が歪む。
「相棒!しっかりしろ!」
「ぐっ…デュア!」
サイトは苦しみながらウルトラゼロアイを装着し、ウルトラマンゼロに変身した。
「デュア!」
だが変身したからといって超音波が効かなくなるわけではない。
キィーーーーーーーーン
「グッ…」
怪音波に耐え切れず、ゼロは耳を押さえた。ベル星人は容赦なく隙だらけのゼロを蹴り倒し、そしてそのままゼロを蹴りまくった。
「グア…!」
だがゼロは立ち上がり、ベル星人を蹴り飛ばした。
「ダアッ!」
そしてベル星人を押さえ、殴りかかった。
「デュア!ダアッ!」
だがベル星人はゼロの背中を蹴り、ゼロから逃れた。そして突然空へ飛びだした。
(逃げる気か!?だが逃がさないぞ!)
「デュア!」
ゼロも空へ飛び、ベル星人を追いかけた。鬼ごっこが始まってしばらく、ゼロはベル星人の足を捕らえた。
「ダアッ!」
だがベル星人は足をばたつかせ、ゼロの腕を払った。そして再び逃げだす。
ゼロも負けずベル星人を追いかけた。このまま追いかけっこを続けるよりは…両手の人差し指と中指をクロスし、額に当てて額のビームランプから必殺光線を放った
〈エメリウムスラッシュ!〉
「デュア!」
エメリウムスラッシュがベル星人に見事ヒットした。そしてベル星人は沼に落ち、爆散した。
しかし、ベル星人を倒したのに疑似空間はいまだに消滅しない。いや、消滅しないのではない。また別の空間に姿を変えていった。それも、光を感じさせない闇の空間へと。
「なんだ…これは?」
「重苦しいな…こいつぁ…」
紫色のドームが形成され、最後に赤紫色の空が広がった。以前、ゼロの出会ったネクサスの展開した『メタ・フィールド』とは違う。荒れた荒野なのは同じだが、それとは全くの逆に位置するものだった。
「ベル星人などでは勝てなかったか」
「!」
背後から声が聞こえてきた。ゼロはそちらの方を振り向くと、そこにテクターギア・ブラックが立っている。
「ここは…『ダークフィールド』。光の戦士である貴様が、ここで勝てる可能性などない」
「ダークフィールドだがなんだが知らないけどな、ここから早く出してもらおうか。無駄な戦いは避けたいんだ」
「ふふふ…ははははは…」
ブラックは嘲笑うように笑いだした。
「まさか、貴様がそんなアマちゃんとは思わなかったぞ」
ジリッ…とブラックはゼロを睨みながら身構えた。
「どうしても戦うのか?」
ゼロの、サイトとしての性格が、ここにきて戦いを躊躇わせた。相手は話の通じる相手だったから、なんとか話し合いで持ち越せないだろうかと思ったが、ブラックは聞き入れる素振りすら見せない。
「バカめが、貴様も本心では戦いたくてしょうがないんじゃないのか?」
「ち…違う!」
「違う…か。だったら死ね!」
ブラックはゼロの真上に飛び、蹴りつけようとした。ゼロもすぐ足を真上に向け、ブラックの蹴りを蹴り返す。
「ララララララララアアアアア!!!!!!」
その体制のまま、二体の巨人は空中へ舞い上がり、そして空中を旋回しながら何度も離れ、何度もぶつかり合った。
「ぐっ!」
ブラックは再びぶつかった瞬間、背後からゼロを捕らえ、地上に叩き落とした。
「ウワアアア!」
ガシャアアン!と砂のしぶきをたてながらゼロは地上に落とされた。そこに追い討ちをかけるようにブラックが拳でゼロの顔を殴り付ける。
「ちっ!」
ゼロはブラックの黒き拳を掴むと、逆にブラックを地面に押さえつけ、殴りまくった。
「ハッ!ジュア!デュ!」
ブラックは殴られながらもゼロの腹を蹴り飛ばし、ゼロと距離を置いた。
「大丈夫か相棒?」
ゼロスラッガーとなったデルフが尋ねる。
「ああ…」
(こいつ…できやがる!)
ゼロはまだ平気だったが、ブラックの強さに内心驚愕していた。それに、このダークフィールドに入ってから力がだんだん抜けている。この空間は少なくとも、ゼロのような光の戦士には毒そのものだった。
(くそ…どっちかと言えば奴の方が有利なわけか…)
それ以前に、テクターギアを装着してるにも関わらず、互角の勝負を展開するとは、一体奴は何者なのだろうか。
すると、ブラックは炎を纏った拳で自らのテクターギアを殴り付けた。無理やりテクターギアを破壊するつもりなのだ。
テクターギアはひび割れ、最終的にガシャン!と音をたてて破裂した。
「!?」
言葉を失うゼロ。
「相棒が…」
思わず声を震わせてデルフが口を開いた。その体の色は黒と暗い橙色だったが、模様も姿も似ていた。しかし、その胸のクリスタルと額のビームランプは白く、目は紅く、一つ目
だった。
一言で言えば、彼はウルトラマンゼロとほとんど同じ姿だった。
「もう一人!?」
「誰だ…お前は!?」
「俺の名は…『ダークロプスゼロ』」
サイト(ゼロ)と同じ声でその黒い闇の巨人、ダークロプスゼロは答える。
「ダークロプス…」
ゼロは両腕をL字型に組み必殺光線を放った。
「ゼロだと!?デュア!」
〈ワイドゼロショット!〉
対するロプスゼロも逆L字型に両腕を組んで暗黒光線を放った。
〈ダークゼロショット!〉
「デュ!」
光線のぶつかり合いで砂ボコりが巻き起こる。
すぐさまゼロはゼロスラッガーを投げつけるが、ロプスゼロも、ゼロスラッガーと同じ宇宙ブーメランを投げて弾き飛ばした。
「ちっ…」
ゼロはゼロスラッガーを頭に着け直し、ブレスレットから槍を取り出した。
〈ウルトラゼロランス!〉
同時に、ゼロの左手に刻まれたガンダールヴのルーンが光った。
「ほう、ガンダールヴのルーンか。だが」
ロプスゼロは両手にダークゼロスラッガーを持ち、身構えた。
「少々強くなった程度、しかもまだその力を使いこなせない貴様が、俺を倒せると思っていたのか?」
「ごちゃごちゃと!ハアアアアッ!」
ここで負けるわけにはいかない。ルイズや仲間たちが待っている。ゼロはランスの先をロプスゼロに向け、突撃した。対するロプスゼロもダークゼロスラッガーを構え、さらに自らを回転させて突出した。
凄まじい金属音が鳴り響くと、ゼロのランスが空高く舞い上がっていた。
そして、ゼロは地上に叩き落とされてしまう。
「グワアアアッ!」
「ふん…」
ロプスゼロはゼロのはるか真上に浮くと、ロプスゼロのプロテクターが蓋のように開き、引っ込んだカラータイマーの変わりに、胸部に内蔵していた時空転送装置『ディメンジョンコア』を出した。
「半機械と闇の巨人としての肉体…それが俺の特性…」
ディメンジョンコアに光がだんだん灯っていく。
「おい相棒、やべえぞ!早く逃げろ!」
「だ…ダメだ…体が…」
デルフが危機感を感じて忠告するが、ゼロはさっきのダメージで体がうまく動かない。
ロプスゼロのディメンジョンコアから、凄まじい時空の嵐が放たれ、ゼロを襲った。
〈ディメンジョンストーム!〉
「フン!」
「ぐ、うう…」
嵐に巻き込まれながらも抵抗しようとしたゼロだったが、その凄まじい衝撃に耐えきれず、宙に舞い上げられ、割れたガラスのように空いた時空の穴に飲み込まれていった。
「うわああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
ゼロを飲み込んだ時空の穴は、元通りに閉じ、ダークフィールドも消滅した。
「ふん…拍子抜けだな。あれが、『この世界の俺の力』だと言うのか」
おもしろく無さそうにロプスゼロはどこかへ飛び去っていった。
ダークフィールド消滅後、ゼロのウルトラゼロランスは宇宙にまで飛んでいっていた。
その槍を、紅き姿の巨人がそれを受け止めるように掴みとった。
「ゼロ…」
その獅子のごとき巨人はすぐ槍の飛んで来た方へ急いだ。
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