ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

□File5
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「え?邪魔?」
「何で?」
「だってその彼、あなたの恋人でしょう?」
それを聞いたルイズの顔は咄嗟に真っ赤になった。サイトは(へ?)と言ってるような間抜け顔になる。
「いい嫌ですわ!!恋人なんかじゃありません!!あいつはただの使い魔です!!あんな黒い生き物なんかが私の恋人なんかで…」
「使い魔?」
アンリエッタはサイトの顔や体つきなどをあちこち見回したが、自分の知る使い魔は動物しか見たことがない。人が使い魔なんて初めて見た。
「どう見ても人、それも平民にしか…」
「人です」
人で悪いか。少しムスッとし、心の中で小さくサイトは呟いた。
「昔からどこか変わっていたのは知ってたけど、まさか人を、それも平民を召喚するなんて…」
「好きで平民を召喚した訳ではないんですけど…」
「ルイズ」
ちょっと不機嫌に言おうとしたルイズの手を、アンリエッタは暖かい手で包み込んだ。
「確かに、サモンサーヴァントは使い魔も主人も相手を選べない。
でも私は信じてる。彼はきっとあなたの良きパートナーになってくれるって」
「姫様…もったいないお言葉です」
アンリエッタはルイズから手を離し、サイトの方に向き直る。
「実はね、あなたにも会いたかったのよ」
「俺に?」
「えぇ。あの事件の目撃者から話は聞いてました。平民でありながら、あのモット伯爵に立ち向かうほどの人なんだそうだもの。でも驚きました。あのモット伯爵が…」
あの事件とは、やはりモット伯爵とアパテーが入れ替わり、暴れだ
した事件のことだった。もちろん、国ではトップに近い地位を持つ
が故に、多数の貴族と関わっていたアンリエッタにとっては衝撃的な事件だった。
「私も聞きました」
ルイズはそう言った。
「ごめんなさい。さっきまで明るい雰囲気だったのに…」
「いえ、お気になさらないでください」
「ありがとう、ルイズ」
すると、アンリエッタは窓から見える双月を、どこか寂しさと悲しさを混じらせたような表情で見つめた。
「結婚するのよ。私。ゲルマニアの皇帝に」
「なんですって!?あんな野蛮な成り上がりの国に!」
ゲルマニアはキュルケの祖国で、金や優れた能力があれば誰でも貴族になれる国だ。他の国よりも人材登用がよい国だがそれがトリステインなどの貴族中心の国からは野蛮な国だと言われている。
「仕方ありませんわ。ここ最近、正体不明の怪物どもによる影響、そして現在、アルビオンで国家を倒そうとする反乱軍の存在が原因です。先日、トリステイン貴族全員での城の会議で他国との同盟を考えた結果、私がゲルマニアに嫁ぐことで同盟を結ぶことを決定いたしました。ゲルマニア皇帝アブレビト三世もこれに同意はしてくだされましたが…
少なくとも今の私たちトリステイン軍だけでは怪獣には勝てません。
しかもまたいつ怪獣が現れるかわからない。今私はトリステインのためゲルマニアに身を委ねなければなりません…。
ですが今、同盟を望まぬアルビオンの反乱軍が今婚姻を妨げる材料を探しているのです…」
アルビオンの反乱軍とは、最近活動を開始した『レコンキスタ』のことだ。共和制を掲げハルケギニアを統一し、エルフに奪われたとされる『聖地』を取り戻すことを目的としている。だが共和制は形だけで実際は卑劣な貴族が平民を騙して利用し、自らの野望を果たそうとしているのだ。
「同盟を妨げるもの…そのようなものがあるのですか?」
アンリエッタは頷き、そして顔を覆って泣き崩れた。
「おお!始祖ブリミルよ!この不幸な姫をどうかお救いください!ルイズ…私…どうしたら……私は今危険なアルビオンに行けなどとそんなことを口にしようと…」
「姫様!このルイズは姫様のお友達でありまったき理解者です!何なりとお申し付けください!」
「ありがとうルイズ。では…今から私が話すことは誰にも言ってはなりませんよ…」
アンリエッタの表情がだいぶ不安で深刻な色に染まりだす。
「俺は出ようか?」
自分が聞くと不味い気がしたサイトは、部屋の外へ出ようとしたが、アンリエッタは首を横に振った。
「いえ、メイジにとって使い魔は一心同体です。それに学院長からあなたがルイズを救ったと聞いています。頼れる人が一人だけでも必要なのです」
アンリエッタは二人に向き直った。
「では心して聞いてください。アルビオンが倒れると共にトリステインまでも破滅に誘う…そのような大変なことが起こってしまうもの。それは……」
ゴクリと二人は息を飲む。
「手紙です。私がアルビオンのウェールズ皇太子へしたためた一通の手紙。早急に手を打てばよかったのですが…これが反乱軍の手に渡れば…」
「失礼ですが手紙の内容は…?」
「それは…言えません。誰にも言えないことだからこそルイズ、あなたにお願いしたいのです」
「わかりました。一命にかけても成功させて見せます」
「ありがとうルイズ。あなたならできると信じています。そしてサイトさん」
アンリエッタは再びサイトを見つめた。先ほどの友達に話しかけるような口調ではなく、真剣さを混じらせた声で。
「私のお友達ルイズをよろしくお願いしますね」
「当然ですよ。一応使い魔なので」
サイトは意外にも真面目な表情で答えた。
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