ウルトラマンゼロ サーヴァント(完結)

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あれから三日だろうか。初めて見るウルトラマン『ネクサス』と『スペースビースト』の出現から。
サイトはいまだにあのウルトラマン、そして自分と同様に何者かの使い魔として呼ばれた青年『シュウヘイ』のことを考えていた。
あの非協力的な態度から見れば、彼は現時点で自分と同調はしないだろう。
(でも、あいつ…『ネクサス』って言ってたけど…)
『ウルトラマンネクサス』だなんて名前のウルトラマンは見たことも聞いたこともない。ゼロとサイト、どちらの記憶の中にもいなかった。
(もしかしたら…パラレルワールドってやつか?)
パラレルワールド、多次元宇宙。
例えるならもし、自分のいた地球をウルトラマンのいる世界と呼称したら、ウルトラマンがいないのを除けばそれ以外は自分のいた地球と変わらないといった、似て非なる世界のこと。
だとすれば、シュウヘイは別のウルトラマン世界から現れたということだろうか?
(まあ考えても本当かどうかなんてわかりっこないか)
洗濯をシエスタに任せ、朝の間は剣の稽古をやってみることにした。
「ふん!せい!」
しかし、いざデルフを振っても実戦の時とは違っていまいち実感がない。
「ギーシュん時とかはうまく振れたのに…」
「なんでい?槍使ってた時より腰がなってないんじゃねえか?」
デルフがサイトにダメ出しする。
「まあ確かに…って何で知ってんだよ!?」
確か、デルフの言う槍ウルトラゼロランスを使ったのは、変身した時だけだ。しかし、デルフはその時身につけていなかったはず。どこから見ていたのだろうか?
「あん?気づいてなかったのかい?お前さんがあの巨人になった時、俺っちは頭にくっついてた刀から見ていたぜ。
しっかし、まるげ一本一本が俺っちの目みたいになってたな」
「目?」
「簡単に言やあな、右側のやつなら右目、左側なら左目としてお前さんの戦いを見せてもらったぜ」
つまり、デルフはサイトがゼロに変身した時、彼もゼロスラッガーに変身し、二本の内右側のゼロスラッガーがデルフの右目、左側が左目のようになっていたのだ。付け加えると、デルフは二本に別れていることにもなる。「おでれーたぜ!俺っちが二人、いや二本になっちまうとはよ」
二重でデルフの口の悪さを耳から近い頭の上から聞くことになると
言うわけだ。
「あぁ〜、耳元でギャーギャーうるさくなるわけだ」
「そんなつれねえこと言うなよ〜」
わざと嘘泣きしてるようにデルフは言った。ちょっぴりデルフを買ったのを後悔していたが、せっかく買ったものを捨てるわけにはいかないし、何かの役に立つと信じてサイトは大事に持っておくことにした。
夜、サイトは適当に稽古をやり終え、ルイズの部屋に戻っていた。
そこに、キュルケの使い魔であるフレイムが、サイトに近づいてきた。
「フレイム…だったか?何だ?」
フレイムはサイトの顔を見ながら、背を向けて歩き出した。
「着いて来いってことか?」
サイトの言葉に頷くように、フレイムはキュルル…と鳴いた。一体何なのだろう?
着いて行った先は、ルイズの部屋の隣、キュルケの部屋だった。フレイムがその中に入ったので中に入ろうとしたが、薄暗い部屋の中で、彼は見てはならないものを見てしまった!と思い、すぐ扉を閉めてルイズの部屋に大慌てで戻ってきた。
「ふう…」
「何息上がってんのよ?」
サイトの、まるで完走後のマラソン選手みたいな息の上がりっぷりにルイズは首を傾げる。
「わりい…聞かないでくれ…」
正直びっくりした。まさか、キュルケが下着姿で出迎える体制だったことに。
(あらん…刺激が強すぎたのかしら?)
その頃、一人薄暗い部屋の中でキュルケはちょっとサイトにはキツすぎたか?と思っていた。
場所を戻してルイズの部屋。
しばらくすると、扉から誰かがノックしてきた。
「客?誰かしら?」
今はもう夜だ。こんな時間に誰が来たと言うのだろう。ルイズが扉
を開けると、
「ルイズ」
それはなんと、トリステイン王女のアンリエッタだった。
「姫様!?」
(お姫様…って!?)
自分と歳の変わらないほどの少女の、それも姫君の突然の訪問にサイトはびっくりしていた。
「いけません姫様!このような下せんな場所へ護衛も付けずお一人
でお越しになるなんて…」
ルイズは相手が自分より格上の人物だったため、すぐに跪いた。
「堅苦しい行儀はやめて頂戴。私達は幼なじみじゃない。」
「そんな…もったいないお言葉です。私なんかを覚えてくださるなんて…感激です!」
「忘れるわけないじゃない。ルイズ!」
二人は感動のあまり少し涙ぐみながら抱き合った。それを見ていたサイトは一人、ポカーンとしていた。
「思い出すわ。あなたとは子供のころいつも一緒だったわよね。『アミアンの包囲戦』と呼ばれている一戦を覚えてる?」
「はい!『宮廷ごっこ』で姫様とドレスの奪いあったときですね」
「そうよ。その時私の一発があなたのお腹にうまく決まって…」
「そうです。私ったら姫様の御前で気絶しましたわ!」
「ああ…嫌だわ。懐かしくて涙が出るわ」
目尻に溜まった涙を拭き取るアンリエッタ。
「あの〜…盛り上がってるとこ申し訳ないんすけど…」
サイトは蚊帳の外状態に耐えられなくなって話しかけた。
「あぁ忘れてたわ。サイト。こちらはトリステイン王国の王女アンリエッタ姫殿下よ。私は子供の頃、この方のお遊び相手を務めさせていただいたのよ」
はあ…とサイトは間の抜けた返事をする。まさかルイズが、それほどのお偉いさんと知り合いだったことには驚かされ過ぎた。それに姫君なんてファンタジーの中でしか存在してなかったはずの存在なものだから、余計に実感が沸いてこない。
「はじめまして。サイトさん…でよろしいですね?」
「あ、はい。そうです」
サイトはとりあえず礼儀正しくしたつもりで頭を下げた。
「ふふ…ごめんなさい。私ったらお邪魔だったわね」
アンリエッタは二人を見てクスクス笑いだした。
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